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眠りの精

絶望は眠りを誘う
哀れな私に
優しく魔法の粉をふりかけてくれる


私はあまりにショックな出来事があると
スコンと眠気が来るタイプです。
その眠気は、もうのび太。
3秒ももちません。


あの日は珍しく
真っ昼間に好きな人から
写真付きのメッセージが来ました。


その写真には手が写り込んでいて
私は昼ごはんを食べながら
美しいなと
惚れ惚れしていました。
携帯で撮ったであろうその写真からも
キメの細やかな色の白い
肌の質感を感じられました。


なぜでしょう。
ふとした冗談で、
軽い気持ちで私は彼女に


「欲情するね」

と返信しました。


ところが返ってきた返事は

「他の人に言われるのは全然平気だけど
あなたに言われるのは、気持ちが悪い」

携帯を持つ手が震えました。


そうか。そうなんだね。
私は非礼を謝り
二度とそのような事は言わないと伝えました。


すると突然
立ってられないほどの眠気が私を襲いました。
どうにもこうにも、
目を開けていられないのです。

私はあまりにもショックなことがあると
いつもスコンと寝てしまいます。
そして、ひたすら寝続けます。
目を覚ましたら、
現実を見なくてはいけない。
私が壊れないために
眠りの精が
魔法の粉をかけてくれるのです。


その日も寝られたのならば
どれほど幸せだったでしょうか。
しかし、その日に限って
大切な商談が入っていました。

やっとの思いで、午後をやり過ごした頃には
眠気は無くなっていました。
頑張りました。
というより、大人になったのかな。


好きな人に対しての性欲は
私自身のなかで
いつも曖昧なままで置いてるものでした。
過去にはいい感じになった時もあったんですよ。
でも、それ以上にはならなかった。
私が怖かったんですね。
ハッキリさせることも、先に進むことも
ノーを突きつけられることも。
結局は臆病なんです。

そして時が過ぎて
やっと冗談で言えたと思ったら
受け入れられないのですから
撤退です。ハイ。

それでも私は
彼女を愛し続けるんですよ。
キモいんですけどね。
あ、大丈夫。ストーカーとかではないです。
ちゃーんとそこは、一定の距離を保ってますよ。
大丈夫。
誰に言ってるんでしょ、私は。

なんか、相変わらず
タイトルからズレましたが
こんこんと眠る話は
村上春樹さんの短編小説
「レキシントンの幽霊」にもありました。

好きな人からノーを叩きつけられたあの日
もし私が眠れていたのならば
恐らく1年間は目を覚まさなかったでしょう。









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