「大安禅寺の名宝」を終えて
雨降りしきる5月6日の午後。
その雨がやけに心地よくて、様々な思いを洗い流してくれるように思えたのは私だけだろうか。
そしてこの日は、福井市立郷土歴史博物館に於いて約1ヶ月半に及んで開催された『大安禅寺の名宝』展の最終日。
私も諸々の仕事を早めに終わらせ、3時頃に博物館へお礼に訪ねた。駐車場は満杯、嬉しいことである。入館すると、ご法縁の皆様が大勢拝観に来て下さっていた。何と県外の旧友までもが駆け付けてくれた。
そんな中、普段からお世話になっている女性の方が声を掛けて下さり
「素晴らしい宝物の数々ですね。見応えがありました。何よりも、その宝物の裏に隠され込められたお殿様の思いに感銘を受けました。大安禅寺へ寄せていた心が如何に大きなもので、お殿様が心の拠り所にされていたことがよく分かりました。今も昔も変わらず多くの人に慕われてきた素晴らしい場所なんですね。福井の誇りです。また必ず伺いますね」
と満面の笑みで私に語ってくれた。
その言葉だけで、全ての苦労が報われたような気分だった。思い返せば、昨年の夏頃から本格的に準備に入り、担当の学芸員様と綿密に打ち合わせを重ねて漕ぎ着けた今回の展覧会。保存修理事業も重なって疲れもピークに達していた。それをずっと支えてくださった学芸員様には本当に頭が下がる思いである。
※展示準備の様子
また私のわがままも全て受け入れて下さり、各週でイベントを企画開催した。後で知ったことだが、担当の学芸員様が通常よりギャラリートークの回数を増やして下さっていたようだ。有難いことにイベントのいずれも大盛況で、参加された皆様の満足されている様子は我がことのように嬉しかった。そのイベントを通して、大安禅寺の魅力をあらゆる角度から知って頂けたことは、今回の展覧会の一番の収穫だったと思う。
※角鹿館長様の記念講演「橘曙覧と大安禅寺」
※「夜のギャラリートークと養浩館特別坐禅体験・法話・お茶席」
※吉岡泰英先生記念講演「大安禅寺の重要文化財の建築」
※庭師と巡る福井の名園ツアー
※担当学芸員藤原様によるギャラリートーク
※福井の歴史を知ろう(クイズ形式)親子で作る和菓子体験ツアー
※大安禅寺特別企画「大涅槃図絵解き講座」講師:岡澤恭子先生
それから、大安禅寺へ訪れる方も増え連休中は絶えず多くの方がご来山下さり、ご縁の輪が日々広がっていくのを実感した。
だが、それは裏を返せば多くの人が大安禅寺に関わり護持護法に携わって下さっているということである。その重要性を忘れてはいけないと改めて気付かされた。そこからお寺という本来の在り方、またこれからの時代に求められるお寺の存在価値。大安禅寺ならではのオリジナリティ。その土台には必ず仏道の教えが生きていなければならない。その事を重々受け止めて模索しながら、一僧侶として更に精進していきたい。
これから大安禅寺の保存修理事業も加速していく。
平成から令和へ。されど今日という1日に変わりは無い。
「看脚下」
丁寧に丁寧に。
明日は、今回初めてご出杖された開山大愚禅師の御帰山である。心してお迎えしたい。
最期に、この度『大安禅寺の名宝』が無事円成できたのは、展覧会開催にご尽力下さった福井市立郷土歴史博物館館長角鹿様はじめ、担当学芸員の藤原様、白嶋様、関係者の皆様のおかげです。また、幾度も足を運び取材、広報活動にご協力下さった福井新聞社様、展覧会を彩り魅力あるものにしてくださったデザイン会社ANTENNA小林様、そして美しくも力強い題字を奉書してくださった書家・西山佳邨先生。今回の展覧会に携わって下さった大勢の縁者の皆様に、大安禅寺を代表して心より感謝申し上げます。本当に有難うございました。
大安禅寺 高橋玄峰 合掌