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弟犬ジョンと僕の大冒険


「さあー、山を降りようぜ。」

と、父が弁当箱をかたづけ、僕に言ったから、もって帰る、松の木の枝の方に行くと、ジョンが父や僕のところを行ったり、来たりしながら、もう帰るのぉ?って名残り惜しそうな顔で僕をみてくる。もう帰らないと。みんなが待ってるよって、僕が目で話すと、ジョンは真っ先に走り出した。

「オイ、そこは、オラが担ぐけん。お前は、根っこの方を担ぐんぞ。」

と、父が、僕のいる所へ来るから

「とうちゃん。根っこは重たいけん。オラは後にするけん。」

「後はむずかしいぞォ。枝がおれんように、よく、見んといけんけんのう。」

と、父は、ぜったいに、根っこの方は担がないのだ。

 仕方がないので、僕が右肩を入れると、泥のついた根っこは、重たかった。ジョンが心配そうに、僕の顔を覗き込んでくる。大丈夫。大丈夫って強がりを見せている僕は、本当は辛くて、歯を食いしばるのがやっとだった。

 僕は、肩痛んでくると、反対の肩にと、頭を木の下にやって顔を出し、何回も何回も、肩をかえながら、必死に歩いて、山を降りるのであった。
そんな僕をジョンは気にしてか、道先案内をしてくれていた。ほら、そっちはあぶないよ。こっち、こっち。って歩きやすい道を教えてくれていた。

 途中、頂上から流れてくる、水飲み場所があったので、

「喉が乾いたけん。ここで休んでやろう。」

と、僕が声を掛けると

「少し、休むといいけん。そうするか。」

と、父も言って、休んでいく事になった。

ヘトヘトになっていて、喉も乾いていたので、はやる気持ちを押さえながら、トロトロ流れ落ちる水も手ですくい、口に入れると、とても冷たくて生きかえった。横では、ジョンがはははって息遣いをしていて、オイラにもお水頂戴って言っていた。僕は両手で流れてくる水を受け止め、ジョンの目の前に差し出した。

ジョンは嬉しそうに、水を飲み始めた。器用に舌を使いながら、ゴクゴクと水を飲んでいた。何度か飲んだ後、大きな石に腰を下ろした僕は、ジョンの頭を撫でながら、一休みしていた。
下を見下ろしたら、我が家の村が、僕の目に入って来た。

「ここまで降りてきたけん。あとはらくよ。」

と、父が言って、担ぐ体制をしているので、僕は

「もう出発かな。休んどらんで。」

「なーに。帰ったら、なんぼでも、休めるけんのう。」

と、根っこの部分を担がない父は、僕とジョンをせかすのでした。

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