第14回読書会報告書(一部修正)
2024年1月21日(日)
第14回読書会を開催しました。課題本はこちら
「キッチン」 吉本ばなな
当日はあいにくの雨模様でしたが、そこまで寒さを感じることはなく暖かい室内でのゆったりとした談話になりました。少数での開催でしたが、その分一人の感想時間は長く、思ったことや好きなところをじっくりお話することができました。
吉本ばななさんの作品で一番有名なのは、やはりこの「キッチン」になるでしょう。夏の新潮文庫100冊にも常連本で多くの人に読みつがれています。
抽象的な表現が用いられているのにストレートに伝わる文章の美しさが印象的。この作品は再読でしたが、何度読んでも心があたたまります。この冬の時期に読めてよかったです。
大切な人の死に直面したときに、喪失感を何で埋めるのか、みかげや雄一の心の揺れ動きが繊細に綴られていて、静かに、ゆっくりと向き合いながらも感受性が刺激されて内からエネルギーが湧いてくるようでした。
大切な人に美味しいと思ったものを与えたい、好きな人と一緒にそれを共有したい(今回はカツ丼)、それが叶うのはなんてありがたいことなのか、これほど幸福に満たされることはないのかもしれない。いずれは来る大切な人との別れ、そんなとき自分はどう乗り越えられるだろうか。百の哀しみがあれは百の受け止め方があって、まっすぐ立てる自信はないけれど、そんなとき一緒に哀しみを分かち合う人が一人でもそばにいてくれたら嬉しいな。
平凡を愛せ、日常を愛せ、あなたのそばにいる人を愛せと、語りかけられているようだった。
「人は状況や外からの力に屈するんじゃない、内から負けがこんでくるんだわ。」
満月─キッチン2より
124頁
今の自分に言われてるみたいだった。
荒立つ波が凪ぐように、言葉がスッっと頭に入ってきて心の重荷を軽くする。
やっぱり吉本ばななさんの文章が好きだ。
他のメンバーの感想は、
この「キッチン」が発売された頃は、林真理子さんや村上春樹さん、村上龍さんなどが筆頭で活躍していた時代(80〜90年代)。そんな中で吉本ばななさんのこの作品は、センセーショナルで新しい時代の女性像、新しいタイプの主人公、新しい家族の形を表した作品で、行動的で自立していて少数ながらも強固な繋がりをもった絆の物語でした。また、今では当たり前になりつつあるLGBTQの人々を登場させるなど、幅広い視野を取り入れました。
作中、ある人の死によって、見た目は男性だけど仕草や心は女性のチカちゃんが号泣するシーンがある。大衆の面前でありながら周りを気にすく余裕もなく、傍目からするとギョッとするような感情の爆発を見せるが、みかげは彼女がとても美しいという。好ましい、羨ましいと素直に思ったみかげに、私は感動しました。
新人作家の吉本ばななさんは、そんな新しい物語を開花させた一人として一躍注目されたそうです。後追いの私にとって貴重なお話しが拝聴できてとても嬉しかったです。読書会の醍醐味は、そんな自分が知らない、調べてもでてこないようなリアルタイムで読んでいた人の感想に加えて、時代背景や当時の世論まで聞けることかと思います。
文学は普遍だなと、改めて感じました。外の雨模様を忘れて物語だけを見つめる、とても楽しい時間でした。ありがとうございました。
以上、第14回読書会のご報告と感想でした。
ここからは、次回の読書会のお知らせです。
【 第15回読書会は中止になりました 】
第15回読書会の課題本は、「 雪国 」川端康成
※中止のため課題本は未定
開催日は、3月17日㈰の14:00〜15:00。
場所は岩沼西コミュニティセンター。
電話でのお申し込みはチラシ記載の番号まで。
また、お申し込みやご質問は、私のXアカウント(双子moon)のダイレクトメッセージでも受け付けております。
https://twitter.com/moon61226676
メールならこちらからでもOK↓
読書会参加の明記とお名前(フリガナも)と年齢(例:40代)をお伝えください。
次回のご参加お待ちしております。
いわぬま読書会