あんたには分かんない、から、ん?、まで

あんたには分かんない、女は言った。
今なんて言った?、男が笑う。
うまいな、これ、シロノワール、と喜ぶ僕。
えらく混雑したカフェこめだ。
女と男と、隣の席には人間ウォッチングの著者の耳。

勝手に仕事辞めちゃって、何考えてんのよ!
きっつい顔すんなよ、可愛い顔が台無しだよ。
くりとお芋のロールケーキ!
今朝からこもって書き物してる。
今夜が〆切、あとがない。

さっきだってそう、と女が言って、
知らねえよ、そんなの、あいつのせいだろと男が答える。
スイーツばっかり食ってるなと、プチ反省の僕。
せっかく時間をひねり出したのに。
そうそう容易くアイディアが湧くわけがない。
垂乳根の。
ちはやぶる。
次何食べよか考える。
て言うか、
隣の二人連れ、喧嘩中?

何考えてんのよ、女が泣いて、
日本も住みにくくなったよな、男が慰める。
ぬるくなったな、もう一杯飲むか。
ねえお姉さん、アメリカンお代わり!
のんびりしている昼下がり、もう終わる。

春からずっと生理もないの、なんだかたまに吐き気もするし、怖くて病院になんていけないし、薬で調べるのも一人じゃいやっ!
ひでぶ!
フフッ、こいつ最悪だな。
「変態!」
「ホントお前、なに他人の話に聞き耳立ててんだよ!」

マジムカつく、と女が泣いて、
ミリも許せねえと男が立ち上がる。
むしゃむしゃ。
面倒事はいつでも向こうからやってくる。
もはや字数に余裕なし。

やだ、こいつ笑ってる。
夢でも見てんのか、ああン?
ようこそ僕の作品世界へ。

私たちが?
をんなが慟哭。

ん?

        暗転。

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