明けましてお迷路

A 新しい年が始まります。同じように、君は始まる。さて、おめでたいかな?
 そのままBへ。

B そこは懐かしき胎内。
 生まれ出るならHへ進む。
 生まれたくないならEへ進む。

C 盲目的な飢餓、手当たり次第に捕食しましょう。
 食べても食べても満たされない、Kへ。
 満足し眠りにつくのなら、Rへ。

D その小さな種火を守るため、君は心底疲弊してしまう。もはや何が希望なのかも分からず、腹のあたりに抱えた温もりを後生大事に揺すっている。Wへ。

E 星の海。永遠と瞬間の差。Wへ。

F 希望などなくとも人は獣のようにして生きていける。現在に充足して日々を送り、過不足のない命を終える。Wへ。

G 無念。復讐を星辰に誓う。Wへ。

H 見上げる風景、そこに光が溢れているならОへ。
 一切が闇に閉ざされているならМへ。

I 長い午後に目覚める。ゆったりとした退廃が、惑星を止め時を打ち消し、空高く伸びてゆく。Cへ。

J 松明を掲げ闇を押しとどめる。勝鬨を上げるならQへ。
 背後から裏切りの一撃を浴びるならGへ。

K 信頼を捨て、言葉を忘れる。孤独を舐め沈黙を刺青し、何時しか君は氷のような狂気を得る。
 そこに一片の正気があるならば、Fへ。
 たとえ狂っていても、孤高の唯一無二な君たりえるのならば、同じくFへ。

L 今年一年は、君にとってどんな一年でしたか?
 良い年だったと思えるならば、Zへ。
 思えなかったら、Yへ。

М 闇を味わう。そこに馥郁たる滋養を感じるなら、Sへ。
 空虚とか不足とか、ただ光の欠損であるなら、Vへ。

N ここは存在しない場所。全ての希望の叶う場所。
 そしてたどり着くことの出来ないところ。

О 君を包むのが優しさや暖かさならば、Uへ。
 トゲトゲとした空気と刺すような痛みならば、Tへ。

P 希望の炎は弱々しく小さく、ほっておくとすぐに立ち消えてしまう。
 大切に守り続けるのならば、Dへ。
 いっそ一思いに吹き消してしまうのならば、Fへ。

Q やがて太陽の支配する時代となり、闇の眷属の姿は消えた。
 君は同族と争うようになる、何時までも。
 血みどろの日々を終えて、Wへ。

R 暗闇の中、目覚める。
 目を見開いても見えるものはなく、逆に想起するのは、見られてある闇の中の自分の姿だったりもする。Мへ。

S 始原、恐怖ですら甘美な精神作用だった頃、君は狩るものであった。Cへ。
 狩られるものとして、ただ嘆きの海に沈む存在ならば、Jへ。

T 君は世界の有り様を知る。絶望と欺瞞にすり減る命なら、Kへ。
 希望と虚飾とで積み上げていく命ならFへ。

U 君は世界の在り方を知る。そこに希望を見るならば、Pへ。
 絶望の影に覆われ、立ち上がる術も想像できないのならば、Yへ。

V 突然の雷鳴、周りの風景が一瞬だけ浮かび上がる。刹那に縫い取られたシーンには全ての可能性が豊富に実り、ただ動き出すことも忘れて固着している。粘着くような全き闇の中、次に動き出すエピソードが
 善なるものの溜息ならば、Lへ。
 悪しきものの吐息ならば、Xへ。

W 坩堝。命は止まらない。
 再び君は始まる、Bへ。

X こんな感じでは、正月中、餅を詰まらせて昇天しそうな雲行き。 
 食べ物の好き嫌いの多い人は、Fへ。
 少ない人は、Мへ。

Y とりあえず眠ろう。あなたがこれを読んでいる今が午前であればIへ。
 午後であればRへ。

Z 来年はさらにいい年になればいいと心から願います。
 可能だと思うのなら、Jへ。
 不可能だと思うのなら、Yへ。

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