ステキな日曜日

 柔らかな陽の光に心のひだを洗われて、そうして僕は眠りの淵から浮かび上がるのだ。 超絶肌触りの良いシルクのシーツを口元まで被り、完璧に首の角度をキープしてくれる自分専用のふかふかピローに疲労を溶かして、つい数時間前までのハードだがやりがいのある、まさに人類の未来を左右するかのような任務についての記憶もしまい込む。今日は日曜日、ホリデイだ、しっかり休めと神様も労働基準監督署も言っている。
 クイーンサイズのベッドには僕だけしかいなくて、もう妻は朝食の支度を始めているのだろう。おっといけない、小洒落た街の人気のパン屋でロッゲン・ザフト・ブロートを購入するのが、日曜の朝のルーティン。
 ベッドから飛び出した僕は、まるっきりの全裸で、それはつい数時間前までの熱く激しく甘やかな肉弾戦の記憶を思い起こさせて、そう言えば元気に天を向く我がテポドン、早々にトイレに向かわねば尿意尿意と、

な感じで購入した英国製の折り畳み自転車にまたがり、玄関を出る。奥のエレベーターまでの数十メートル、BMXレースのスタートの時のように数瞬スタンディングして、それからロケットスタート、他の居住者に出会わずにエレベーターまで走り込めたらラッキーホリデイはほぼガン決まり。
「あら
  おは
    よ
     うご
        いま
           す」
 残念、二軒隣のフォックス夫人に見つかってしまった。
「お
  はよ
     う、い
       い 朝 
       で   す 
       
         ね!」
と、エレベーターホールに滑り込む。

と、まあこんな感じでハイソな暮らしを丹念に描写していって、とやると時間がないので、なんだかんだあって、夕食。

 不思議と不快な感じはなかった。小一時間ほども死んでいたというのに、嘘のようだ。 まあ、いくらサプライズのためだと言って、最高のディナーとやらを僕に秘密にするために当のゲストの僕を殺すだなんて、やっぱり妻はエキセントリック。そんなところが最高に可愛い。
「まだ、目は開けないで」
 笑いを抑えた、何かを期待するような感じで妻の声が聞こえる。
「この匂い、分かる?」
 確かにサプライズかもしれないな、ぐつぐつと煮込む音。甘い日本酒の香りもある。
「わかるよハニー、Aがたくさん並んだお肉を使ったすき焼きだね?」
「うふふ、ノンノン! さあ、オープン・ユア・アイズ!」
 目の前で土鍋の蓋がオープンされ、そこに見えたのは完ぺきなもつ鍋。

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