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風呂敷と資源 by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)
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2050年には世界人口は97億人に達すると予測されています。争いを防ぐためには、地球上の資源をうまく分けていく必要があります。風呂敷が使われるようになった江戸時代の日本の暮らしにはそのヒントが隠されているかもしれません。
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呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
今回はきっと皆さんの家にもある風呂敷と資源について考えてみたいと思います。
私は普段、環境と平和について教育・研究をする仕事をしていますが、年に6回ほど風呂敷の授業を留学生向けに実施しています。私がなぜこの授業を10年以上続けているかというと、風呂敷は資源問題を考えるのに最適な教材なうえ、実用的でしかも使い方や意味を知るとても楽しいからです。
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風呂敷は江戸時代に銭湯が広まり、お風呂に入るときに使われ始めたのでこの名で呼ばれるようになったと言われています。
江戸時代に日本は鎖国をしていましたので、日本の中にあるものだけで基本的にはすべての食糧や燃料などを賄っていたことになります。
現在の日本は少子高齢化が進み、人口減少社会を迎えていますが、世界の人口は増加を続けていて、2022年の80億人から2050年には97億人に増加すると予想されています(UN, World Population Prospects : The 2022 Revision )。これは、今後世界中で争いの元になるような状況がさらに増えるということを意味しているかもしれません。
なぜなら歴史を振り返ると、資源(石油、水、食料、土地など)を奪い合う争いがたくさん繰り広げられてきているからです。
でも、話し合いをして、資源をうまく分けることができたら、それを回避することできるかもしれません。
江戸時代の日本は、日本の中にある資源のみで社会が成り立っていました。
風呂敷は物を包み持ち運んだり収納したりする為の正方形に近い形の布のことですが、多様な使い方をすることで、鞄にも、ポケットにも帽子にもなり、ラッピングをすることもできます。
これから人口の増加する地球を争いのない社会にしていくためには、風呂敷のように一つのものを多様に使うことで、消費する資源の量を減らしていく方法を皆が考えていく必要があるのではないでしょうか。
近年サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉が注目されています。
これまで企業は原材料を仕入れて物を作って販売し、消費者は使わなくなったら捨てるというリニアエコノミー(線型経済)を続けてきましたが、その結果、原材料もなくなって、ごみを埋め立てる場所も足りなくなり、海はプラスチックごみだらけになってしまいました。そこで、サーキュラーエコノミーに移行していこうということになったのです。
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日本においても、これを促進するための取り組みがどんどん進んでいます。
身近なところでは、2022年4月1日より「プラスチック資源循環促進法」(https://plastic-circulation.env.go.jp/about)が施行されました。この法律は、プラスチック製品の設計の段階から、プラスチック製品の設計・製造の際に使用量を削減したり、解体しやすい設計に変え、販売・提供の際には使い捨てプラを削減し、排出・回収の際にはあらゆるプラスチック資源を分別・回収するルートを構築し、3R(Reduce, Reuse, Recycle)+Renewableによりサーキュラーエコノミーに移行していくことを目的としています。
法律ができても、私たちがプラスチックを分別しリサイクルされやすい回収ルートにのせるという行動に移さなければ循環は進みません(一般的に店舗などに設置されている回収BOXに入れた方が素材が分かっているため同じものにリサイクルし易く、資源として有効に使われる確率が高まります)。
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これはプラスチック資源についての法律ですが、「自然界にはなかった、自然の循環に入りにくい性質のものが多く捨てられるようになったこと」がごみ問題の本質ですから、物の使い方から見直していく必要があるのではないかと思います。その際、風呂敷はたくさんのヒントを与えてくれるのではないかと思っています。
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ハッシュタグ
#風呂敷 #サーキュラーエコノミー #循環型社会 #プラスチック #緑の地球