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植物を育てる(3)by立花吉茂
硬実性種子(続き)
乾果・液果・殻斗果の種子のうち、硬実性を持つのは乾果だけであるが、その発芽促進処理法のひとつ、熱湯(温湯)処理については先報(68号)で述べた。今回はその続きの硫酸処理と傷付け処理について記す。
硫酸処理
硫酸は物を溶かす作用がある。硬い種皮の表面を溶かして吸水を促すことになる。同じように物質を溶かす作用のある各種薬品を使ったが、硫酸が抜群に良かった(図)。硫酸は処理時間が長すぎると種皮が溶けてしまって死んでしまう。だから、種類によって適当な処理時間がある。また、硫酸の濃度と処理するときの温度も影響する。硫酸の濃度は45%以下は効果がなかったから、もっぱら98%の濃硫酸を使っている。硫酸は薄めるのが簡単ではないからである。処理方法は、ガラス容器に種子を入れ、硫酸を注ぎ、一定時間後(多くは2分~30分)、硫酸を大量の水に流して捨て、急激に水で洗う。ゆっくりしていると発熱するからである。2~3度洗ってから飽和した重曹水で中和する。さらに2~3度水洗してから発芽床に蒔く。初めての植物で、処理が必要かどうかがわからないときは、種子の一部を水に一昼夜浸して膨大するかどうかを確かめる。判定が困難なときは種子2~3粒をヤスリか刃物で傷を付けて浸水しておくと膨大するから、比較すれば良い。膨大すれば吸水しているのであるから蒔けば発芽させることができる。
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傷付け処理
少量ならヤスリで傷を付けることもできるが、種子が小さいか、大量に処理するには砂と一緒にして、石臼などでつくと種皮に傷が付いて吸水をさせることができる。つく時間などは種類によって異なるが、一部を水に浸して膨大するかどうか見ればよい。この方法は昔から、水田に蒔くレンゲソウの種子に応用されていた。ご承知のようにレンゲソウはまだ栽培植物に変身しておらず、種子発芽の特性は野生のままだからである。
長命で知られるハスの種子は、そのままでは吸水しないから、一粒ずつヤスリで、中身が見えるまで深い傷をつけると吸水してすぐに発芽する。ハスの種子は大きいからやりやすいのである。
(緑の地球69号 1999年9月)