「おらって」にいがた市民エネルギー協議会から学んだこと by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)
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新潟市の「おらって」にいがた市民エネルギー協議会を訪問しました。“3.11”、東日本大震災とそれに伴い発生した原子力災害をきっかけに市民が中心になり「おらって市民エネルギー株式会社」を設立し、たくさんの太陽光パネルを市有地などに設置しています。どうやってそんなことができたのか、ご紹介したいと思います。
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呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
今回は新潟市にある「おらって」という市民による自然エネルギーの発電の取組を紹介したいと思います。
「おらって」は新潟弁で「私たち」を意味するそうです。この名前が付いた一般社団法人 「おらって」にいがた市民エネルギー協議会(https://www.oratte.org/about/)を2024年の9月に訪問しました。
「おらって」は、“3.11”、東日本大震災とそれに伴い発生した原子力災害をきっかけに設立されたそうです。この災害は、中央が潤うために地方が負担やリスクを背負うという、中央と地方の不平等な関係も浮き彫りにしました。
そこで、これまで築いてきた社会のあり方や「豊かさ」そのものを根源から問い直し、未来の世代に引き継ぐための「新しい社会」のあり方が模索され、辿り着いたのがエネルギーのあり方をその生産から流通、消費に至るまで、市民自らが考え、実践する「市民エネルギー」だったそうです。
2014年1月に開かれた新潟市主催の「市民電力勉強会」を機に準備会が誕生し、12月には協議会が設立されました。翌年の2015年6月には協議会の太陽光部門を運営する「おらって市民エネルギー株式会社」が設立され、9月には第一号の発電所が「新潟市黒崎市民会館」の屋上に設置され売電が始まったそうです。
でも、どうやって市民主導でこれを成し遂げたのか、お金はどうしたのか、という疑問が頭に浮かぶと思います。賛同する市民ももちろん出資をしたそうなのですが、新潟市に本社を持つ第四銀行が2億4600万円を融資してくれたそうです(https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/news/16/012600297/)。
詳しくお話を聞くと、第四銀行さんはとても融資に厳しいことで有名ですが、「市民電力勉強会」から参加してくれていたそうです。
そして、行政の所有する、公民館の屋上、ゴミ処理場やし尿処理施設の空き地など、新潟市の所有している建物の敷地内から設置を始められたそうです。
太陽光パネルの下の草地に除草剤が撒かれることを心配する声が各地で上がっていますが、「おらって」のメンバーが草刈りをされていて、米どころ新潟のおいしいお米には影響がないような仕組みになっていました。
私は主に太陽光発電をしている設備の見学をさせて頂きましたが、「おらって」はそれ以外にも小水力、地域熱の事業、環境エネルギー教育などの活動をされており、まさに「新しい社会」の形を模索し、少しずつ形作られていると感じました。
日本においてなかなか温暖化対策が進まないのは、行政の担当者が数年おきに異動してしまうことや、それを専門に行う人がいないことが理由だという指摘を聞きます。
国によっては、温暖化対策を進めるための講習を受けて、資格を取ったら、資格職に就くことができ、地域での温暖化対策を中心になって進めているという話を聞いたことがあります。
日本にも温暖化対策推進法(1998年施行、https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000117)があり、都道府県知事はこれに基づき「地球温暖化防止活動推進員」を委嘱し、「温暖化対策地域協議会」を設置することができます。私も広島県知事から推進員の委嘱を受けていますし、呉市の「くれ環境市民の会」という協議会の代表をしています。
しかし、推進員のための研修を受け委嘱を受けても、それは仕事に繋がる資格ではなく、地域で普及啓発や市民レベルでできる取り組みをしていることが多いと感じていたので、エネルギーを供給することを目的に設立された「おらって」のパワーに圧倒されました。
GENも黄土高原を緑化することを目的に設立され、アンズの森で学校の支援をしたり、日本でも勉強会をしたりと活動が広がっていっていますが、みんなが得意なことをやっている、そして、挑戦しているという充実感は似ているような気がしました。
若い人も加わってくれているというお話も聞き、楽しそうなところに人が集まるのだと改めて思いました。
エネルギーのことを学びに行ったのですが、組織の在り方についても学ばせてもらいました。