私の環境研究ことはじめ #出張編 自然と親しむ会に参加してみて
こんにちは。認定NPO法人緑の地球ネットワーク(GEN) インターン生の小林と平田です。
毎月、GENに携わる方々にインタビューを行い、環境活動について掲載している本連載。今回は出張編と題し、10月26日〜27日に開催された自然と親しむ会に初めて参加した感想を、インターン生二人で振り返ります。
◾️自然と親しむ会とは
2024年10月26日〜27日にかけて、和泉葛城山と浜寺公園に行きました。
和泉葛城山のブナ林は日本では南に位置し、比較的低い標高にある珍しいブナ林として101年前、国の天然記念物に指定されましたが、近年の開発や温暖化による影響が懸念されています。
また、浜寺公園も歴史が古く、151年前に開園しました。古くは百人一首の和歌にも詠まれてきた、園内に4000本あるというマツ林は、数々の危機をかいくぐり生き延びてきた名所です。歴史あふれるふたつの森を、調査・保全に協力している前中代表に案内していただきました。
◾️1日目、和泉葛城山へ
―和泉葛城山に登ってみてどうでしたか?
ブナ林をはじめ、多くの緑に囲まれている山というのが第一印象でした。幹がガッシリとした立派な木が多く、前中代表をはじめとした保全に携わっている方々が、この活動において大切な成果を出していることを実感しました。
また、大阪府と和歌山県の府県境も見ました。一歩進むと大阪府に入るという目印に、赤いテープが巻かれており、私たちがいた反対側が大阪府の鳥獣保護区であることを示す看板も立っていました。
余談ですが、マツだけでなくキノコもたくさん生えていました。小さいながらも、鮮やかな色やユニークな形のものが多く、つい足元にも目を奪われました。
―天然記念物のブナ林を見た感想を教えてください。
とても幹が太くて、たくましかったです。案内してくださった前中代表の話によると、幹が太いものでは200年以上生きているものもあるそうで、その生命力の凄まじさに驚きました。
展望台付近にも立派なブナが生えていて、足元を見るとたくさんの小さな種子が落ちていました。
―宿泊先での勉強会の様子を教えてください。
宿泊先で行われた勉強会では、ブナ林や浜寺公園の歴史について学び、観察したものを知識として蓄える作業としてとても有意義な時間を過ごすことができました。
―和泉葛城山についてのセミナーでは、どんな学びがありましたか?
和泉葛城山は和歌山と大阪の府県境、すなわち太平洋側に位置しますが、雪が降らない地域のブナ林は5〜7年に一度は豊作を経験する日本海側に比べ、種子が動物に餌として食べられたり、露出によって乾燥したりする為、発芽できないことが多いそうです。その中で、天然記念物の森林を守ることは非常に難しいことであり、現在も新芽が育っていないという中長期的な課題に熱心に取り組んでいるということをお聞きしました。インターネットで調べればすぐに確認できる「天然記念物」という言葉も、実際に目で見て、歴史を知ることで保護すべきものとしての認識が生まれ、全くもって異なる感情が生まれました。
―浜寺公園のエピソードで印象に残った内容も教えて下さい。
長い歴史の中で、人々によって守られ続けた場所だということが印象的でした。江戸時代に起こった旅行ブームに乗じて様々な芸術家がこの地を訪れ、十返舎一九の東海道中膝栗毛、歌川広重の東海道五拾三次之内などでマツ林が取り上げられました。百人一首の中の一つである裕子内親王紀伊の「音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ」という和歌に用いられた浜もこの公園だったそうです。明治維新後は、士族授産の為に大規模なマツの伐採が計画されましたが、当時、初代内務卿であった大久保利通が「音に聞く高師の浜の浜松も世のあだ波はのがれざりけり」という上記和歌の本歌取りで伐採を嘆いて中止させ、白砂青松の景観を守ったと言われています。翌日に観察予定だったため、浜寺公園はどれほどの魅力があるのかと公園を回るのがとても楽しみになったことを覚えています。
◾️2日目、浜寺公園へ
―2日目はマツを中心に観察して回りましたね。
浜寺公園は本当に広くて、1日で全部見て回るのは本当に大変でした。沢山の種類のマツを観察しましたが、その中でも長寿のアカマツを見ることができて嬉しかったです。現在も多くの人々で賑わっている公園で、遊具などの施設も多数建設されている様子が伺えたので、人々の営みの真ん中に悠然と広がっているマツの存在は、自然との共生の素晴らしさを心から感じれた瞬間でした。
また、マツの根っこは通常少し地面に表れていますが、浜寺公園については進駐軍に接収され、住宅を建てたので平らにするために土が盛られました。そんな一風変わった木々を見ることができたのも、感慨深い思い出です。ちなみに、マツの根っこが地面に出ているとよくないのではと思って土を盛ってしまう方がいますが、呼吸をするためにはこの生え方が正解のようです。
◾️自然と親しむ会に参加してみて考えたこと
―若い世代が自然と親しむ会に参加する意義は何だと思いますか?
日常生活の中でどんどん自然と触れ合う機会が減っている現代の若者にとって、フィールドワークのような学びと自然体験が同時にできる場はとても貴重だと感じています。普段の学校の授業で環境問題や自然保護といった言葉を学習しても、客観的な視点から世界の現状を把握したに過ぎません。歴史を紡いでいるブナやマツ、その他の植生を五感で感じて初めて、環境や自然に関する課題は私たちが向き合うべきものであると思います。
これから、私たちのような学生には、自分から自然の観察会などに赴いてほしいと感じるとともに、自然と触れ合える機会を提供している団体が今後も活動を続けていくことができるよう願っています。
私たちもインターン生として、またこれからも環境問題の解決に携わっていく若者として、できることを精一杯取り組んでいきたいです。
―GENのインターン生として、今後への意気込みを教えてください。
今年度よりインターンとしてGENの活動に関わらせていただいてから、環境問題に対する見方が変わり、自分にできることは何なのか、真剣に考える時間を過ごしています。それでも、緑化活動や現在の森林環境の実態などを正しく把握するには、知識も経験値も乏しく、無力感を感じることも少なからずありました。
自然と親しむ会への参加を経て、環境保全との向き合い方について詳しく学び、具体的にどんな行動が求められているのかという現状を知ることができました。私たちにできることはまだ多くはありませんが、今回の経験を活かした取り組みにこれからも尽力していきたいと思います。