竹福商連携によるコミュニティづくり by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)
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鹿児島県大崎町で行われている「竹福商連携によるコミュニティづくり」を紹介します。この取組は、障害者就労支援施設で働く方、地域の方が一緒になって放置竹林の整備をすることで、放置竹林、そして高齢者や障害者の働く場所がないという問題の同時解決を目指す取り組みで、令和5年度地域づくり表彰(国土交通省)審査会特別賞も受賞しています。
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呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
今回は前回資源リサイクル率日本一の町としてご紹介した鹿児島県大崎町で実施された竹福商連携によるコミュニティづくりのお話を紹介したいと思います。
GENは緑化を主な事業としているNGOですが、日本の森林に目を向けると手入れが出来なくなってしまった竹林が多くあることに気付くと思います。かつて竹は箒やざるなど身近な道具として私たちの生活に欠かせないものでしたが、便利さを追い求める中でプラスチックや金属に置き換えられ、それが海では海洋プラスチックごみ問題を引き起こしたり、山では放置竹林問題を引き起こしたりと、私たちの生活が変わったことで新たな問題が発生するようになってきています。
竹や筍をうまく活用することは、生態系サービスの恩恵を受けていることに他ならないのですが、それを活用しなくなってしまった今、竹林の整備は“コストのかかる作業”となってしまっています。
一方で働きたい、また人と触れ合う機会を持ちたいけれど、なかなかそれが叶わない高齢者や障害者もいます。
今年の3月まで大崎町の地域おこし研究員をしていた田中力さん(慶應義塾大学)は、これらの問題を同時に解決しようと試みました。
地域の方、障害者就労支援施設で働く方が一緒になり、放置竹林の整備をします。その竹を開放型炭化機で炭にし、さつま芋畑に漉き込み、できたさつま芋を干し芋にして販売するという仕組みを考えました。実は、この開放型炭化器、GENが炭焼きで利用し、大同にも持って行った“無煙炭化器”です。
私も大崎町で竹林整備に参加させてもらいましたが、整備をしながら他の参加者と交流するのは楽しく、料理自慢の参加者からの差し入れを囲んでの休憩時間に話さらに話が弾んで、これまで分断されがちであった障害者就労支援施設の方と地域の参加者の交流が深まり新たなコミュニティが出来ていました。
また、田中氏によると、竹林整備は前述の通り“コストのかかる作業”になっていましたが、炭化して干し芋にして販売することで、就労継続支援B型事業所の平均工賃(賃金)が233円/時間(「令和3年度工賃(賃金)の実績について(厚生労働省)」より)という現状において、2.6倍の600円に上昇したそうです。
参加者からは、「就労継続支援B型事業所で働く人がどんな人か分からなかったけど一緒に作業することで、お互いのことが理解できるようになった」という声や「一緒に作業することで、お互いの特性が分かるようになって、自然と助け合う関係性が出来た」「同じ目的に向かって作業する戦友のような感じになった」などの声も聞かれているそうです。
出来た干し芋はとてもおいしくて、すぐ完売してしまうそうです。
うちに届いた干し芋も子どもにほとんど食べられてしまいました。
鹿児島と言えば“焼酎”ですので、焼酎造りも始まったそうです。
この活動は令和5年度地域づくり表彰(国土交通省)で審査会特別賞を受賞されました。
県庁職員になりたての田中氏に出会ったのは、私が大学院生の時でした。環境の部署で長く働いていた田中氏は、聴覚障害を持つ自身の経験から、環境問題と障碍者福祉を何とか解決したいと考え続けてきました。そして考えだしたのがこの活動なのです。
GENのアンズの果樹園の植樹も、「現地の子供たちになんとか就学の機会を!」ということで始まった活動ですが、困りごとは新しい活動の種でもあります。みんなが幸せになる芽吹かせ方を考えることで、たくさんの人を笑顔にすることができるのだと改めて感じることができました。
田中氏の活動は下記のHPでも詳しく紹介されていますので、ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
https://noufuku.jp/news/info-20240307-9/