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森と人とビジネスと(8):南の国の木造建築 by 長坂健司(GEN事務局)

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木材が腐るのには理由があります。それをしっかり管理すれば、高温多湿な東南アジアでも木造建築は建てられます。今回は、筆者がベトナムで感じたことを書きました。
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 7月下旬、ベトナム北部のハノイに居ました。少し時間があったので、現地の民族学博物館に行きました。

 ベトナムには8割以上を占めるキン族を含む54の民族が住んでいます。これら民族を切り口に展示を行っているこの博物館は、屋外展示も充実していて、いくつかの民族が暮らしていた住居が移築され、展示されていました。写真はモン族(Hmong)の住居。40年ほど前に建てられたもののようです。構造も屋根もしっかりしています。40年では長いとは言えないかもしれませんが、木造建築が長持ちする、というのは、日本に住む私たちにとっては、法隆寺や薬師寺の建築物を頭に浮かべれば納得できるのではないでしょうか。

 今回、ベトナムの方に、木造住宅についてのイメージを聞きましたが、「すぐダメになる」という意見がほとんどでした。木は腐りやすいというイメージを多くの市民が持っています。これは、日本でもベトナムでも同じです。ハノイの街中で、木造住宅はまったくみかけませんでした。ペンシルハウスと呼ばれる鉄骨、レンガ、コンクリートで作られたノッポな店舗兼住宅が一般的です。興味のある方は、Google Streetviewで確認してみてください。

 木材が腐るのは菌の影響ですが、この木材を腐らせる菌が活動するには、「酸素」が十分に存在する、「水分」が十分に存在する、「温度」が菌のすべての条件が整っている必要があります。逆にいうと、これらの条件のうち1つをはずせば木材は腐らない状態で保たれます。「温度」を人為的に調整するのはほとんど不可能ですので、「酸素」または「水分」の条件をコントロールするのが、木材の防腐対策の大前提です。酸素がない状態で木材が長持ちするのは、土壌改良のために地面に打ち込んだ木の杭が事例です。ベネチアや東京駅で膨大な数の木杭が杭基礎として用いられていた話が有名です。

出典 https://www.ntu.edu.sg/news/detail/gaia-the-largest-wooden-building-in-asia-launched

 住宅以外の建物も、最近では木造で建てられることが多くなりました。日本では木造マンションがちょっとしたブームになりつつあります。三井ホームの「モクシオン」シリーズが有名です。実は、高温多湿な東南アジアでも、このような動きが具体的になってきています。今年、シンガポールにある南洋理工大学のビジネススクールの新校舎が竣工しましたが、同大学のプレスリリースによると、これは、現時点でアジア最大級の中高層木造建築物なのだそうです。写真のように、木材を用いていることを積極的に見せるデザインになっています。シンガポールでこのようなシンボリックな中高層木造ビルが建ったことで、今後、ベトナムをはじめとする東南アジアでも木造建築が急速に普及するかもしれません。

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