私の環境研究ことはじめ #4 環境のあり方は、みんな違ってみんないい(インターン生 平田乃愛)2/2
インターン生によるインタビュー「私の環境研究ことはじめ」。第4回目は、前中久行さん(GEN代表)にお伺いします。
前中さんは2011年からGENの代表を務めています。これまで兵庫県や大阪府の大学などで研究を続けてこられました。GENのnoteでは、前中代表の執筆されたメールマガジンのアーカイブを読むことができます。
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■ “良い環境”とは何か
―緑を増やすことだけが、本来の姿に戻すことにつながるわけではないんですね。
場所によって、自然のあり方はそれぞれ多様です。すべての場所に木があればいいのかといえば、それは違います。木があるといい場所もあれば、ない方がいい場所もあります。
環境というと、気候や温度などといった問題ばかりを考えてしまいがちです。しかし、生物がいてはじめて「環境」という概念が成り立つんです。つまり生物にとって、安全安心や快適性を含め、まわりの状態が総合化されたものこそ「環境」だと言えます。
なので極端に言えば、人によって”良い環境”というのは異なります。また同一人であっても、ときと場合によって違うこともあります。山の中にいるのがいいなと思うこともあれば、街中で友人とおしゃべりするのがいいなと思うこともあるわけです。それぞれがひとつの「環境」であり、いろんな「環境」が私たちのまわりにあるということが大切なんです。
GENの活動の一環である、木を植えることも、それぞれの場所に応じた植え方があります。場所によっては、木がまったくない方がいいということも当然ありますね。
―熊本県水俣の照葉樹林の長期継続調査を長年行われていますが、そちらについても教えてください。
私は1982年から参加し始めましたが、調査自体は1966年から続いています。照葉樹林の調査は、私の本来の研究分野とは関係はありません。水俣に調査を行っている友人がいるからであり、手伝っているのは私の趣味です。
森林の生態についてさまざまなことが分かったのが、私なりの成果です。それがGENの緑化活動の参考にもなっています。
■ GENの代表として
―代表として、GENのことをどんな風に見ていますか?
会員の方の思いは、人によってまったく違います。先ほどの話のように、同じ人でも、ときと場合によって意見が変わることもあります。そういういろんな思いが実現できる組織にしたいなと思っています。
もし対立する意見があっても、両方の思いが実現するように話し合います。ただ、だれかの「木を植えたい」という思いがあっても、植えることが困難な場所もあります。そんなときは、「ここでは木が育つのが難しいので、他のところに植えましょう」とアドバイスできればいいなと思います。
―メルマガの記事も執筆していらっしゃいますが、どういったことを工夫して書かれていますか?
できるだけ個人的な思いを書くようにしています。研究の論文を発表するときは、客観的に書く必要がありますが、メルマガでは、あえて私個人のことを紹介しています。
余談ですが、実は、私は禿げ山を見るのが大好きです。私が幼少期に住んでいたところの山も禿げ山だったので、懐かしさもあるのかもしれません。
―GENの魅力を教えてください。
いろんな思いを持っている、いろんな人たちが集まっていることです。その個人的な願いを叶える手伝いができればいいなと、代表として考えています。
また、活動が楽しいことが一番大切です。活動に携わり、自身も何か得られるものがあってはじめて、組織が成り立つと思います。
―今後の活動への思いを教えてください。
GENがこれまであげてきた成果が、今後も続いていってくれれば嬉しいですね。とはいえ、日本ではなく外国のことなので、活動について決めるのは現地の人々です。私たちはそれを手伝い、そこから満足を得られたらいいなと思っています。
■ インタビューを終えて
“良い環境”は一人ひとり、そのときその場所によって異なるというお話が、とても印象的でした。GENのインターン生になるまでは、木のないところに植物を植えることこそ、地球環境を守ることにつながるとばかり考えていました。しかし、その土地によって気候も違えば、人々の生活実態もまた違ってきます。標高、気温、湿度、雨の量、災害の多さ、人間を含めそこに暮らしている生き物など、数々の条件や要素が組み合わさって、そこにしかない環境を形作っているのであり、私たちはまずそれを見極めることが大切なのではないかと思います。
環境という言葉に対して、これまでは地球の未来について悶々と考えてしまっていました。でも、今回前中さんのお話をお聞きして、私たちは、それぞれの場所、それぞれの生き物にとって“良い環境”をつくり、守っていけばいいんだという前向きな気持ちになりました。一人ひとり違う生き物がいて、その数だけ”良い環境”の形が存在し、それが地球を成り立たせているんだなと思います。