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植物を育てる(23)by立花吉茂

発芽促進処理
 野生植物の種子の発芽は遅く、不揃いで、発芽率が大変低いことはよく知られている。樹木を育成している造林家のあいだでは、種子の熱湯処理がお
こなわれている。造林につかわれるアカシアやネムなどのマメ科植物の多く
は、種子が硬実であり発芽率がきわめて低い。そこで、種子に傷をつけたり、硫酸処理や熱湯処理がおこなわれる。熱湯処理は簡単であるため実用的である。ここでは熱湯処理の方法について述べよう。

熱湯処理
 少量の種子なら、コップに種子を入れ、沸騰した熱湯を注ぎ込み、冷め 
てから蒔く。このときのコップ内の熱湯の温度の移り変わりを図1に示す。

図1

湯を注ぎ込んで1分後には65℃前後に下がっている。そして7分後までほぼ
同じ温度がつづいている。10分以後は徐々に低下して2 時間後には室温
(20℃)にいたる。このことから70℃前後の温度が効果をもたらすのではな
いかと考え、次の実験に移った。

ネムノキの場合
 45℃、55℃、65℃、70℃の温度を保った湯の中にネムの種子を浸し、5
分間、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間おいてから発芽
させた(図2)。30分~2時間おくとどの温度も100%近くの発芽率を示した。

図2

ニセアカシアの場合
 ネムノキと異なりどの温度もあまり促進効果はなく、70℃で15分処理し
た場合だけが効果があり60%発芽した(図3)。

図3

考察
 この実験の結果、湯の温度は最初の予測どおり6 0 ~70℃がよいことが
わかった。発芽に熱(温)湯処理は効果があったが、種類によってその効果が非常に異なることがわかった。ネムノキはどの温度にも幅広く反応したがニセアカシアは70℃にだけ反応した。マメ科以外の種類についての実験結
果は次回に紹介したい。
(『緑の地球』92号 2003年7月掲載)


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