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植物種が豊富なのは陽坡~陰坡と陽坡(2) by 高見邦雄(GEN副代表)

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生物多様性の面からも重要な南天門自然植物園では、植生が急速に回復しました。陰坡(日陰斜面)では自生樹種を中心に森林が再生し、陽坡(日向斜面)は遅れていたのですが、やがて…。
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 陰坡と陽坡の関係を、私たちの重要プロジェクト南天門自然植物園(86ha)を例に考察したいと思います。

 南天門は天宮に至る門だそうで、有名なのは中華五岳の一、東岳泰山にある南天門です。私たちの南天門も自分たちで勝手に呼んでいるのではなく、大同市の地図にちゃんと載っています、「南天門(1316.8m)」と。そこに地元スタッフの李向東さんが「南天門」と刻んだ大理石の大きな板を運んで記念碑を建てました。有名な書家で中華全国総工会副主席の徐錫澄さんがここを訪れたとき、筆を揮ってくれました。

 地元霊丘県でこの一帯は南山区と呼ばれ、太行山のまっただなかで山ばかり、平地の少ないところです。前回取り上げた恒山山脈がちょっと北にあり、そこを境に北は寒温帯、南は中温帯に区分される境い目です。そのためもあってか、植物種が多い地域として山西省の植物専門家のなかでは知られているそう。
 自然植物園の着工は1999年ですけど、当座はそんなことは想像もできない荒れ山でした。近くの村の人たちがタキギ取りに通い、ヒツジやヤギなどの放牧をしていたんですね。稜線の南天門のあたりは家畜の糞がたまり、きついアンモニア臭がありました。

 いちばん低いところは海抜900m、高いところは1320mほどで高低差が400mあり、4本ずつの尾根筋と谷筋を有し、地形は複雑です。多種類の植物を育てるのに都合がいいという立花吉茂先生の意見に従ってこの場所を選びました。
 数多くの植物を集めたいんですけど、すぐにそんなことはできないので、まずはハギのなかまを植え、土を肥やすのが立花先生の計画でした。トゲのあるもの、毒のあるものだけが、家畜の口を逃れて残っていたのです。

 地元の村と協議して、燃料伐採と家畜の放牧をしないことを約束してもらい、念のために敷地の境界にトゲのある灌木を植えました。そうするとまたたくまにイネ科やマメ科などの植物が増え、ハギも植えるまでもなく育ってきました。放牧の圧力がどれほど重かったか思い知りました。

南天門陰坡


 ここでもまず北向きの陰坡で森林の再生が始まりました。シラカンバ、オノオレカンバなどのカバノキ、マンシュウボダイジュなどのシナノキ、リョウトウナラ、モンゴリナラ、カシワなどのナラなど、落葉広葉樹が中心で、アブラマツ、カラマツなどの針葉樹が混じります。
 燃料にするため地上部は伐採されても根株は残っていて、そこからの再生なので速かったのです。10年もすると、同じ場所とは思えないくらい繁ってきて、乾燥地の樹木の強靱さに驚かされました。その反面、そのなかに新しい種類が入り込むのは難しく、樹種は限られていて20~30種くらいのものでしょうか。

南天門陽坡


 南向きの日向斜面(陽坡)は遅かったんですね。植被がないために雨で表土が流され、岩盤がむき出しになっているところが多く、そのために草も生えない。それでも10年もたつと、少しずつ草が繁り始め、トネリコ、ニンジンボクなどの灌木が生えてきます。とくに6月ごろはシャクナゲ、バイカウツギの仲間などが咲き誇ります。灌木や草が伸びると、そこに自然に陰ができ、つぎの代の植物が育つ条件ができるわけです。再生の速度がだんだん速まってきます。
 植物の種類数からいったら、圧倒的に陽坡が多いのです。南天門自然植物園の全体では、地元のスタッフの調査で82科523種が確認されているんですけど、その多くは陽坡のものです。陰坡、陽坡、どちらも大事なんですね。


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