森と人とビジネスと(6):機械化がすすむ林業 by 長坂健司(GEN事務局)
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日本の林業でも欧州の林業のような機械化が徐々に進んでいます。先日、本当に久しぶりに岡山県北部の伐採現場を見学しましたので、そこで見聞きしたことを紹介します。
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皆さんの持つ林業の現場のイメージはどのようなものでしょうか。木を切るのには力が必要、男性の職場じゃないの、と思われるかもしれませんが、今はそんなことはありません。女性もバリバリ働いています。そうなった理由の一つは、伐採現場の機械化です。
4月下旬、久々に林業の現場を見てきました。場所は岡山県の北部。今回はある企業が経営する山林での伐採の様子の見学です。道路から林道を歩いてしばらく行くと、ショベルカーの先端に特殊なアタッチメントを付けたマシンが待っていました。
(写真1)
このアタッチメントは伐採用です。アタッチメント付きのマシンを「ハーベスター」と言います。ショベルカーの中の人がアタッチメントを操作して、立木をつかみ、つかんだまま根元近くで木を伐ります。それだけではなくて、伐った後に、その後の工程で使いやすいようにいくつかの長さに分割する作業も現場で行います。今回は4m弱の長さでしたが、どの長さで伐るのかによって、木1本のまるごとの値段が代わってくるので重要です。木材は柱などの建材で販売できれば一番単価が高く、製紙用や燃料用だと単価が安くなります。カスケード利用について書いた以前のエッセイを参照していただければ幸いです。
参考:森と人とビジネスと(2):木材のカスケード利用https://note.com/genmerumaga/n/n58796c2ef1f2
ハーベスターによる実際の伐採の様子を動画でご紹介します。(動画)
https://youtu.be/7BLglvl87-w
伐採作業のすべてをハーベスターで行うのは、山がちな日本では難しいです。ハーベスターのような重機が入っていける林道や作業道が整備されていない箇所では、チェーンソーを用いた伐採が一般的です。
どんなビジネスでもコストの検討が重要です。林業は伐採がすべてではないですが、伐採時のコストを考える上では、どのような伐採方法を選択するかだけではなく、伐採したものをどのように市場や工場まで材を運ぶトラックまで運搬するのかも重要です。この現場では、道が整備されていましたので、フォワーダーと呼ばれるキャタピラで動く輸送機器で運搬します。道が整備されているとはいえ、ジムニーのような特殊な車でないと移動は難しいとのことでした。
(写真2)
ハーベスターの導入には、実は、労災の発生を少なくするという意味もあります。日本ではチェーンソーによる伐採が主流ですが、その際に、木の下敷きになったりする事故が多発しています。令和3年の統計ですが、林業では1000人当たり24.7件の労災が発生しています。これは、全産業の平均2.7件と比べるとはるかに高い値です。労働環境の観点からみたハーベスターの利点は、安全が確保されている運転席で作業ができる点です。ハーベスターの導入には大きな初期投資が必要ですが、労災を減らす観点からも機械化が望まれています。
(参照:林野庁ウェブサイト)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/anzen/iti.html
今回はヒノキとスギの種苗、伐採した木材の製材工場も見学しました。これらについても、後日紹介したいと思います。