Mr.children「SOUND TRACKS」
カウンターパンチ
Mr.Childrenの最新作「SOUND TRACKS」。
音の数が絞られ、一つ一つの楽器の比重が重くなっているが、全ての楽器が力強く繊細に鳴り、素晴らしい広がりを見せている。それは櫻井和寿のボーカルを含めて。
味わい深い、大人な音楽。
傑作というに相応しい作品で、齢40の私には、非常に心地よく沁みる音楽であったが、その反面、若い世代にどこまでピンとくるかな、とは思った。
自分が心地よく聞ければそれでいいのかもしれないが、ポップザウルスとしてのミスチルの看板を降ろし、大人向けの音楽を奏でていく道をミスチルが歩むのであれば、一抹の寂しさを覚える。
しかし、今でも貪欲に若いミュージシャンと時には張り合い、時にはコラボレーションをしている櫻井和寿が、このまま「詫びた」世界観でやっていくとは思えない。
前作「重力と呼吸」で若いミュージシャンを挑発するような、若々しい音楽を奏でた自信からくる、今作は今作で、音楽の振れ幅を世に示す挑戦的な作品なのではないだろうか。
思えばMr.Childrenは、常にリスナーの予想をいい意味で裏切るアルバムをリリースしてきた。
爽やかで甘いラブソングを歌うポップバンドのイメージでブレイクしたMr.Childrenは、「Atomic Heart」でそのイメージを裏切り、それが空前の大ヒットとなった。
次作「深海」では、大ヒットシングル連発の中で内省的なアルバムを作り、その音楽性の深みを示した。
その後も、「HOME」で温かみあるサウンドを届けた後は、「I♡U」で衝動的な音楽を奏でるなど、常にMr.Children、櫻井和寿は、リスナーのイメージに対しカウンターパンチを打ってきた。
今作もカウンターパンチならば、また次作も、決して大人向けだけではないカウンターパンチを食らわせてくれるであろう。
ポップモンスターは永遠に不滅だと示してくれると期待している。
まあでも、「SOUND TRACKS」は間違いなく素晴らしい作品なので、若い世代にも聞いて欲しいと思う。