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経営に活かしたい先人の知恵…その39

◆「継続学習」のススメ◆


 中国の古典・『礼記』に、「玉も磨いて光沢を出さなければ、宝玉として通用しないように、人は、学んで物事の道理を心得ぬことには、才能を発揮することができない」との言葉があり、『論語』には「学ぶに勝るものはない」と記されている。

 学習で得られる成果とは、一体どのようなものなのか?

 まず挙げたいのは、何が正しくて、何が間違いなのかを、判断する力が身につくということだ。人は年を重ねるとともに、自ら判断しなければならないことが増えてくるが、知識が増えれば増えるほど、その力に磨きがかかると言われている。

 次に挙げたいのは、知恵が出るようになるということだ。なぜ学習する程に、知恵が出るのか。私は、山本七平(『日本人とユダヤ人』『帝王学』等々の著者)氏の以下の考えに共感している。

 「質のよい記憶の量(知識)が増えれば増えるほど、その人間の発想の総量は増える。天才というのは、普通の人が結びつかないと思っているいくつかの概念を結びつける人だが、天才といえども、結びつけうるべき概念が頭になければ、新しい発想は生まれない」。

 脳力開発を提唱した城野宏氏も同様の考えを持っていたようで、「新しいアイデアとは、多くの人の古い経験の新しい組み合わせにすぎない」と語っている。

 アイデアの源泉となる知識には、学校で学ぶような「論理的な知識」と、体験から学ぶ「実践的知識」があるが、ビジネスマンは、体験から学ぶことを心掛けて欲しい。ただし、自分ひとりの実践的知識には限りがある。そこで重視したいのは、他の人の体験からも学ぶということだ。先人の本を読むのもいいし、話を聞くのもいい。論理的知識と実践的知識の組み合わせが、オリジナルの知恵を生み出していく。

 また、学習について付記しておきたいのが、荀子(中国戦国時代の儒学者)の次の言葉だ。「学ぶことは、途中で止めてはいけない。青色は藍の草から取り出すのであるが、藍よりも青く、氷は水からできるのであるが、水よりも冷たい」。学び続けることによって、弟子は師匠を超えることができる、との意味であり、これが『出藍の誉れ』の語源だ。

 最近は、新しいスキルを身につけるリスキング、所謂学び直しの必要性が叫ばれている。しかし、リスキングだけでは、不十分だ。リスキング以上に大事なのが継続学習で、常に新しい知識を頭に入れておかなければ、取り残されてしまう。 

 過去の知識だけでも一定の知恵は出てくるが、限界がある。その限界を打破するのが、新しい知識なのだ。それだけに、ビジネスマンは継続学習を通じて、常に新しい知識を補充していく必要がある。それがなければ、時代に適応する斬新な知恵は出てこない。


※本稿その4でも学習について書いています。

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