生薬百選 98 黄連(オウレン)
今回は、中国最古の薬物学に関する専門書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品(じょうほん)に収載され、古来から消炎、止血、瀉下などの要薬として繁用されてきた「黄連」について紹介します。
基原植物として第16改正日本薬局方にはキンポウゲ科のオウレンCoptis japonica Makino、Coptis chinensis Franchet、Coptis deltoidea C.Y.Cheng et Hsiao又はCoptis teeta Wallich(Ranunculaceae)と記載されており、産地は日本(兵庫県、島根県、福井県など)、中国(四川省、湖北省、貴州省、雲南省など)、ミャンマーなどです。
生薬としてはこれら植物の根をほとんど除いた根茎を乾燥したものを用い、成分はアルカロイド(ベルベリン、パルマツン)、フェルラ酸などで、苦味健胃薬、整腸薬として用いられます。
試しに、刻んだものを30%エタノールに15分ほど浸漬してみました。鮮やかな黄色い液体が得られ(写真2)、ちょっと味見をしてみましたが苦味健胃薬と言われる通りかなり苦いものでした。
この苦味の基はベルベリンなどアルカロイドのようです。
なお、黄連は医薬用として用いられるものです。使用に関しては医薬品としての取り扱いや注意事項を守る必要がありますのでご注意ください。
日本産オウレンはキクバオウレン、セリバオウレン、コセリバオウレンの3変種に分けられ、キクバオウレンは主として日本海側及び北海道に、セリバオウレンは太平洋側の関東以西、中国地方に多く、コセリバオウレンは中部地方に多く分布しており、山地の樹林内でわりに日の当たる所に見られる多年草で、早春の2〜4月頃に白い雪のような花(雄性花と両性花があります)を付けます(写真3)。
先日弊所の近辺を散策してみたのですが、オウレンの花を見つけることができませんでした。今年は開花が遅れているのではないかと思い、東京都薬用植物園に出かけたのですが、時すでに遅く花は終わっており、結実していました(写真4)。 しかし、天は我に味方し、弊所駐車場横のアカマツ林の中で今年の花を撮影することができました(写真5)。
これから気候もよくなり、トレッキングなどに適した季節となります。フィールドに飛び出して身近な植物観察などしてみてはいかがでしょうか。
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黄連(オウレン)