哀子

哀子の記憶は3歳に始まる。
哀子にとってお母さんは怖い人だった。お母さんはプライドが高くて、わがままで、食いしん坊でヒステリックな人だった。哀子はいつもお母さんを怒らせないように細心の注意を払っていたが、お母さんにとって哀子はどうしたってグズでのろまな「できんぼうず」だった。お母さんは自分が気に入らないと哀子に怒鳴り散らし、憎々しげに睨みつけるのだった。哀子は「お母さんは私のことが嫌いなんだな。」と思った。「そんなに私のことが嫌いなら、なんで私を生んだのだろう?」
「この人は私の本当のお母さんではないんじゃないか?きっと本当のお母さんはどこか別の場所にいるに違いない。私の事を可愛がってくれる優しいお母さんが。」

哀子はお母さんの目が怖かった。
その目はとてもギラギラしていた。

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