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消去法を活用したキャリア選択のすすめ
「消去法」という言葉は、通常ネガティブなニュアンスを帯びています。嫌なものや、絶対にNGなものを寄り分けていき、積極的に選ぶわけではないが仕方なしに残ってしまったものを消極的に選択する。こんなイメージが消去法という言葉には含まれていると思います。
しかし消去法は弱者生存戦略上、非常に強力なツールであり、前向きに活用していくべきものです。
積極的に何かを選ぶという方法はとてもハードルが高い。たまたま、学生時代やキャリアの初期に自分の一生を捧げたいと思う活動を見つけたり、天職を探し当てたりできた人は、はっきり言って運が良い。そういう人は、何も気にせずその道を突き進んでいくべきです。しかし、多くの人(多分95%以上の人)はそんなものはおいそれと見つかりません。
多くの人は「積極的に選び取るような活動や職業」を見つけることが難しいにもかかわらず、なぜかそのように選び取ることがモデルケースのように語られています。モデルケースは、多くの人に当てはまるモデルを取り上げるべきです。そしてそれは、「運命的に自分にぴったりの活動や職業が見つかる」というものではないはずです。
では多くの人に当てはまるモデルとは何かというと、それが「消去法」です。
人は、「積極的に選び取る」ことは苦手でも、「どうしても嫌なもの、やりたくないもの」を嗅ぎ分けることは得意です。「こんな仕事をしたい」と強く願っている人は少なくても、毎日「この仕事は最悪だ」「こんな人と働きたくない」と愚痴を漏らしている人はどの職場にもごまんといます。
これはおそらく人間の生存本能に根差しています。生物は「嫌なもの」を嗅ぎ分けて回避することができなければ生き残れません。嫌悪や不安といった感覚は、生存本能に根差しているが故に非常に強く認知に影響を及ぼします。
故に、「嫌なものを避ける」方が、「積極的に選び取る」よりも容易です。そして、生物として忌避したいものを避けられているわけなので、心理的にも安心感が増し、日々の満足度が高まります。
そして、この「消去法」を繰り返していると、「積極的に選び取ったわけではないが、取り組んでいても特に不満はない」ものが残ります。こういったものは続けていてもストレスも少なく、抵抗感も少ないので、自然と経験や知見が積みあがっていくようになります。つまり、自分のキャリアと専門性が自然と構築されていくのです。
このように、消去法でキャリア構築を進めた方が、変に思い悩まなくて済みますし、自分の本能的な感覚に従って自然と選択していくことが可能です。「何かを選び取らなくては」という強迫観念にとらわれている人は、ぜひ「消去法」を積極導入することをおすすめします。