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「逃げる」というコマンドを捨てるのは間違い

「逃げる」というコマンドは忌避されやすい。一方で、「退路を断つ」という表現が前向きな表現として使われることが多いように、「逃げる」というコマンドを捨てて全身全霊で何かに挑むという姿勢は称賛されやすい。

しかし、私は仕事でも生活でも、「逃げる」というコマンドを絶対に捨てず、現実的な選択肢として堅持するようにしている。その理由は2つある。

1つ目は、高ストレス・ハイプレッシャーな状況に耐えられるようにするためだ。いざとなればその状況から抜け出せる、別のオプションがあるという事実は、心の拠り所を作り出す。実際に「逃げる」コマンドを発動しなくても、安心材料として働くことで、頭を冷静に保つことに繋がり、その結果として困難な状況を生き抜く確率を上げる。

2つ目は、長期的な生存のためだ。「逃げる」コマンドを発動せず、ギリギリまで戦い続け、結果として自分が潰れてしまったとしよう。そうしたら、その後は前と同じようには働いたり、活動的に行動したりすることは難しくなる可能性が高い。

「逃げる」コマンドは、短期的には「負け」を意味するかもしれない。後ろ指をさされるかもしれない。しかし、短期的な負けを受け入れることで、長期的な勝ちを獲得するということは大いにあり得る。

ドラクエのボス戦は、「逃げる」コマンドが使えない。事前準備が足りていなかろうが、レベルが足りていなかろうが、ボスを倒せる状況になければ容赦なく叩きのめされ、全滅してしまう。

ゲームなら、所持金が減ってしまったりするものの、復活してまたやり直せばよい。現実世界では、復活自体に凄まじい労力が必要だったり、復活後はレベルが下がってしまって、以前のレベルにはなかなか戻れなかったりする
。現実で「逃げる」コマンドを捨てるリスクは大きい。

「逃げる」コマンドが使えたら、街に戻って薬草を買い、装備も揃えて、レベルも上げて、再度挑むことができる。現実世界で「ボス戦」状態を作ることは避け、「たたかう」だけではなく「逃げる」を常にオプションとして持つべきだと考えている。

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