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映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記 番外編~韓国NEWSTOF 監督ロングインタビュー(日本語版)
韓国・全州国際映画祭正式招待の際に受けたインタビューが、韓国メディアNEWSTOFで紹介されました。本掲載はもちろんハングル語ですが、僕がもともとお答えした日本語の原稿があるので、それをそのまま監督日記に載せさせて頂きます。少々長い記事ですが、お読み頂けると嬉しいです。
全州国際映画祭招待作品
『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』
岩間玄監督インタビュー
インタビュア
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」特別寄稿~演出家・小山和行
「精度の高い地図」としての映画。
映画の序盤、こんなシーンがあって
試写室の席で思わず前のめりになった。
…都内を走る一台の乗用車。
映画のカメラがそれを並走しながら追う。
助手席に大道さんが乗っている。
どこかに撮影に向かう途中らしい。
大道さんがカメラを構える。
手のひらサイズの小さなカメラだ。
それなのに、
まるで街並みを切り裂いてゆくような殺気が走る。
車窓に映った景色が流れ、
都庁が
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉘ ~最終回「写真とは、想い出です」
撮影が終わる、ということ2018年の正月から始まった撮影は
2019年の正月に終わりました。
ドキュメンタリーの撮影とは不思議なもので
ある時、「よし、これで撮影終了だ」と思う時が訪れるのです。
それは何も特別なイベントや出来事を撮り終えた瞬間ではなく、
ある時、何の脈絡もなく監督(撮影者)の頭の中で
「はい、カット、OK!」と声が響くのです。
それは、例えば画家が絵を描き上げるとき
「よし、これ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉗ ~森山大道と中平卓馬、特別な時間
ここが森山大道と中平卓馬の聖地だ灰色の厚い雲に覆われた
寒い寒い冬の一日でした。
「大道さん、
思い切って長者ケ崎に
行ってみませんか?」
中平卓馬さんと過ごした聖地のような場所に、
僕らは向かっていました。
行きの車の中で
僕は大道さんの言葉を反芻していました。
「岩間さんが撮る葉山の海の向こう側にさ、
中平を”感じさせる”ことができたら、
映画の勝ちだよね」
東京から車で二時間。
長者ケ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉖ ~長者ケ崎に行ってみませんか?
一卵性双生児…大道さんと中平さん中平卓馬。大道さんの”魂の聖域”。
大道さんと中平さんは
「一卵性双生児」とからかわれるほど
いつも一緒でした。
しかし中平さんはある時病に倒れ、
それまでの記憶と言葉をすべて失ってしまいました。
記憶を失ってからの中平さんは
大道さんのいる場所に出没しては
アポロキャップを前後逆にかぶり、
首からカメラをぶら下げて
ニコニコとしていたそうです。
森山大道さんと過ご
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉕ ~大道さんの魂の聖域”中平卓馬”
"中平卓馬"という聖域大道さんとの会話に
その人の名を軽々に持ち出すのはためらわれました。
なぜならそれは大道さんの
魂に関わることかもしれないと思ったからです。
2015年に亡くなったその人の名を、
中平卓馬さんといいます。
中平卓馬さん。
大道さんと同い年、1938年生まれ。
25歳で知り合った無名の二人は、
互いに強く魅かれ合うものがあり、
青春を共に過ごしました。
そしてその後共に写真家
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉔ ~「今現在の森山大道」を描くこと
ドキュメンタリーの定石からの逸脱「にっぽん劇場写真帖」の一点一点を
照合検証し、再構築していく。
そんないわば”森山大道解体計画”は、
大道さんの深い深いところに
立ち入っていくことになりました。
そしてついには大道さんの”魂の聖域”にまで
足を踏み入れるようになっていきました。
僕は興奮していました。
この映画は「写真家の記録映画」ではなく
「写真家の魂の物語」になるに違いない。
僕はそう確
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉓ ~それは息詰まる攻防戦だった
森山大道を未来に伝えていく日本写真史に燦然と輝く名作
「にっぽん劇場写真帖」が
いつ、どこで、どのように撮られたのか。
その聞き取り調査は、
森山大道という存在を未来にきちんと
伝えていくためにどうしても必要な作業なのだ。
そう編集者の神林さんは言いました。
膨大な写真を撮ってきた大道さん。
しかしそのネガフィルムや
オリジナルプリントは相当数散逸しています。
撮影データを含めたアーカイブ作業は
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉒ ~グラグラの映像でそれは始まった!
「にっぽん劇場写真帖」いつ、どこで、どのようにその瞬間は、不意に…唐突に訪れました。
いえ、正確に言えばこうです。
編集者・神林豊さんは
まるで世間話の延長のように装いながら、
実は明確にタイミングを狙いすまして
こんな風に切り出したのです。
「…森山さん、例の『にっぽん劇場写真帖』なんですけどね。
【いつ】【どこで】【どのように】撮られたのかを…
一点一点、全部聞いていきたいわけですよ」
そ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉑ ~伝説復活、ついに計画は動き出した
映画の背骨「にっぽん劇場写真帖」復活計画1968年に出版された森山大道さんの
伝説的写真集「にっぽん劇場写真帖」。
実物は手にすることが困難なこの傑作を、
50年ぶりに新たに世に問うプロジェクト。
何と掲載された全149 点の写真、
その一点一点が
【いつ】
【どこで】
【どのように】撮られたのかを
大道さん本人から直接聞き出し、
「にっぽん劇場写真帖~決定版」として
新たに出版するというのです
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑳ ~編集者と造本家、途方もない計画
「にっぽん劇場写真帖」復活計画編集者・神林豊さんの話は衝撃的でした。
森山大道さんのデビュー写真集
「にっぽん劇場写真帖」(1968)。
そこに収められた149点一点一点が
【いつ】【どこで】【どのように】撮られたのか。
それを森山大道さん本人から聞き出して解明し、
すべて明解なデータとして残す。
「にっぽん劇場写真帖」決定版を世に放つ。
気の遠くなるような作業を前に
神林さんは飄々と言うので
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑲ ~「にっぽん劇場写真帖」復活計画
構成なんか作らないぞ!はいいけれど…あえて構成を作らずに、
大道さんをひたすら記録し続ける。
事前に構成台本を作ってしまっては
それ以上の映画にはならない。
作り手の想像を超えるドキュメンタリーにはならない。
だから黙々と淡々と記録していこう。
記録の先に見えてくるものに
じっと目を凝らし、
耳を澄ましてみよう。
これから起こる物語の微かな予兆を
決して見逃さないよう
感覚を研ぎ澄ましておこう。
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑱ ~テーマやコンセプトを捨てること
大都会を徘徊する男二人森山大道さんと僕。
二人だけの映画撮影、
マンツーマンの収録が続きました。淡々と、黙々と。
撮影がスタートした当初、スナップ中の大道さんは
「あの…これ、なんか喋った方がいいですか?」
と僕と映画のことを気遣って言ってくれました。
「いえ、何も喋らなくても大丈夫です」と僕。
すると大道さんはホッとしたように笑うのです。
「そうだよね、スナップ中、普通は喋んないもんね。
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑰ ~録音部がいないということは…
とにかくカメラを止めない!一秒でも長く回せ撮影・編集・監督は僕一人。
丸一日、大道さんの姿を撮り続ける。
美しく端正な映像を撮ることが目的ではない。
それよりも、大事なのは
大道さんの動きをちゃんと記録することだ。
誰にも頼れない。
自分がそのとき、カメラを回していなかったら、
もうその瞬間は永久にどこにも残らないのだ。
現場には僕と大道さんしかいない。
だから回す。撮影する。
徹底的にカメラを回
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑯ ~録画ボタンをいつ押すかという問題
電源は常時ON!しかし大道さんの常時スナップ臨戦態勢に備えるために、
僕のムービーカメラも常時電源ON。
あとは録画ボタンをポンと押しさえすれば
いつでも大道さんのスナップを収録できます。
もう3~4秒かかるカメラの立ち上げに
焦ることもイライラすることありません。
大道さんのスナップワークに
こちらのムービーワークが間に合わない
ということも理論上はなくなりました。
常時スタンバイでどんどんバッ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑮ ~大発見⁉森山大道は何とカメラの…
スナップワークに追いつかない!森山大道さんのスナップに同行させていただき
ムービーカメラを回し始めた僕でしたが…。
早くも壁にぶち当たっていました。
大道さんのスナップワークに
僕のムービーワークが追いつかないのです。
コンパクトカメラをプラプラさせながら
悠然と街を歩く大道さん。
何かに反応し、
そこにスーッと近づいていきます。
「お、きたきた」と
ビデオカメラを起動させる僕。
しかし、僕のカ