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潜在意識をコントロールする、もう一つの意識

人の意識状態は、次のように、大きく3つに分かれています。
 
<顕在意識>
表層的な意識が顕在意識です。顕在意識は、日常の理性的な思考で使われる意識です。通常の社会生活で、社会的人格が「見つめる自分」として、外側の世界の動向や「見つめられる自分」を認識します。
 
<潜在意識>
その下層にある潜在意識は、私たちが知覚することのできない領域です。睡眠中、没頭時に活性化される意識で、顕在意識の知覚・認識に影響を与えているのが、習慣的人格・気性・気質です。
 
<変性意識>
日常の覚醒状態と異なり、情報空間に臨場感を持っている状態。変性意識は、顕在意識と潜在意識の間にある、瞑想状態、催眠状態、ゾーンなどを指す意識です。たとえば、「昨日、どこに出掛けた?」と思い出そうと瞬間、これも変性意識状態になっています。
 
私は、意識について探求するにようになって、潜在意識が書き換わっても、現実を変化させられる人と、また元に戻ってしまう人がいることに、長年、疑問を感じていました。以来、既存の概念では説明しきれてない、別の意識があるのではと思うようになりました。
 
そこで、私の恩師の梯谷幸司先生が書かれた『すごい無意識』に出会ったことで、私の意識の探求が進展し出しました。
 
梯谷先生は、潜在意識を入れる器をメタ無意識と名付け、メタ無意識にある意識のパターンをメタプログラムと呼んでいます。このメタ無意識が、人生の現実を作り出す思考や意思決定の前提になります。
 
そこで、私は、メタ無意識の概念をヒントに、太極陰陽図を利用して、下の図のように意識の構造をモデル化しました。

外の枠線が、意識全体を包括する『場』『器』がメタ無意識、陰陽を隔てる境界の変性意識状態に相当します。
 
境界は、たとえば、性別では男と女、教育では先生と生徒のように陰陽関係を分ける際の認識・視点です。そして、認識・視点は、国家では法律、組織では規律、音楽では音律・調律というように、何かの基準を示す『律』が内包されています。
 
これと同様に、人には、その人なりの価値・判断基準としての『自律』が備わっています。

陰陽、そして境界の律、これら3つは元々一つであることを「三を以て一と為す」と表現します。
 
さて、脳には、外部情報を処理する際に、過剰なエネルギー消費をセーブする器官があります。それが、脳幹の網様体賦活系(RAS)です。RASには、重要度の高い情報を活性化して、優先的に取り入れるフィルター機能があります。

このRASが情報を取捨選択するフィルター機能は、価値・判断基準としての自律意識が大きく関わっています。

つまり、自律意識が、潜在意識の門番として、どの情報が重要か、取捨選択しているのです。
 
また、自律意識は、調光ライトの「つまみ」のようなものです。つまみの絞り次第で、光量によって明暗が変化するように、対象にどのような基準を設定しているかで、ものの見え方や感じ方が変化します。
 
たとえば、会議や商談などの話し合いの場で、自分と他者の意見が違っている状況に置かれているとします。
 
自律意識が他者基準に設定されていると、他者からの承認や態度を気にし過ぎて、自分の意見がダメだしされると、自分の人格と重ね合わせてしまって、落ち込みやすくなります。
 
その反対に自律意識が自分基準に設定されていると、自分の存在と意見は別物としているので、他者からダメだしをされたとしても、さほどダメージは受けません。
 
また、相手方の意見を聞き入れずに、自分のルールを意見として主張し過ぎてしまうと、相手と衝突し、交渉決裂してしまう要因にもなりかねません。なので、調光ライトのつまみで光量を調整するように、メタ無意識を調整して、自分と他者の意見の折り合いをつけて、寛容型の態度を取ることが求められる場面があります。
 
この辺りの意識の調整は極めて繊細で、騎手が馬を操作するようなものです。顕在意識と潜在意識の関係は、ときに、騎手と馬の関係にたとえられます。このたとえに、メタ無意識と自律意識の概念を組み込んでみると、下の図のように、意識の構造を捉えることができます。

騎手が前進しようと馬を操作する際、馬が左側に見える餌に気を取られれば、人馬は息が合わず、スムーズに前進しないでしょう。人馬一体となって前進するために、騎手は、終始、手綱・ハミを介して馬の状態を把握しています。
 
それと同様に、何かを実現する際に自律意識内の各メタ無意識の強度の調整をして、自分の表の潜在意識と裏の潜在意識が協力し合えるようにすることが重要です。
 
無自覚に、馬が脇道へ反れるように、義務型・他者基準といったメタ無意識によって、本心からズレた行動をしてしまうことがあります。そんなとき、本心へと戻すメタ無意識の調整が必要です。

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