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フリー台本小説「僕のささみ猫缶」
2009/4/1にFC2小説でお題小説「猫 決戦 朝日」というテーマで小説を書こうというのをやっていて、参加したものです。
せっかくだからフリー台本にしてお題で書いたものをさらにお題にしようと思いますので是非読んでみてください。
難しくて厳しいようであれば1章だけとかでもOKです。
正直これ、朗読と言っていいものかよくわかりません。
朗読風ボイスドラマって感じもします。
どちらかといえば女性用な感じがしますので、語尾にニャって言うのが恥ずかしい場合は、普通の言葉に直してもいいですよ。
★あらすじ★
楽しみにしていた「ささみ猫缶」がでかい野良猫に全部食べられてしまった!猫缶の恨みを晴らすために子猫は自分より明らかにでかい猫に決闘を申し込むのであった…
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
第1章「僕のささみ猫缶」
「あああああーーーーーー!!」
僕はその時自分の目を疑った。
楽しみにしていた、楽しみにしていた猫缶が…
見た事もないでっかいすっげー不細工な猫に食べられたのニャ!!
酷いニャ!!酷いニャ!!ムカツクニャ!!!!
でかい猫は舌をぺろっと出し、満足げな顔をしながら僕を見る。
「いやー、飼い猫がいる家はいいエサがあるから盗み食いはやめられねーな。」
「…僕の…僕の猫缶が…」
楽しみにしていたのに!!
ご主人に新しく買って貰ったおもちゃでちょっと遊んでて夢中になっちゃったから、その後食べようと思ってたのに!!
僕の大好きな…ささみの猫缶が!!
「このーー!僕の家に勝手に入っておいて盗み食いしてんじゃねー!バカアホマヌケなのニャ!!」
僕はシャーとでかい猫に威嚇した。
でもでかい猫は僕の威嚇に動じずその満足げな顔を維持していた。
あのでかい猫は大人だから僕みたいな子猫の猫の威嚇なんて全然怖くないんだろうニャ…
「恨むんなら窓の警備が甘い飼い主に恨むんだな。俺たち野良猫は毎日エサを探すのに必死なんだ。人の家に入り込んでエサを探すのも野良猫にとっては当たり前だ。」
「むむむむむっ!!」
でも言われてみればでかい猫の言うとおりかもしれないニャ。
人間は猫の言葉を完璧に聞く事ができないし、猫は人間の事なんてよくわからない。だから人間…ご主人がしっかり警備しないと野良猫は勝手に入っちゃうのニャ。
それに僕みたいな飼い猫は人間がいるからエサを持ってきてくれるから楽だけど、野良猫は自分でエサを探さないと死んじゃうのニャ。
でも!
僕の猫缶がコイツに食べられたのは事実だニャ。
「食べ物の恨みは怖いのニャ!!こうなったら…」
僕は決意した、猫缶の恨みを晴らそうと。
「こうなったらお前に決闘を申し込むニャ!!」
僕はまたシャーっと威嚇をし、でかい猫を必死でいっぱい睨みつけた。
「おう、受けて立つぜ。逃げるんじゃねえぞ。」
「自分で決闘を申し込んだのに逃げるわけないニャ!決戦場はこの近くの空き地でするニャ!」
でかい猫は僕の決闘にすんなりと受けた。
今に見てろよニャ!僕は負けないニャ!!
「ガキにしてはいい度胸だな。俺は町内ではボス猫って呼ばれていて結構有名なもんでさ。ケンカなら一度も負けた事がないぜ。まあ、適当にがんばれや。」
でかい猫はニャアと低い声で後ろを振り返り、開いてる窓から出て行った。
…どうしよう…
…ちょっと怖くなっちゃったニャ…
第2章「空腹の決戦前夜」
自分で決闘を申し込んだ上に、よりによって町内のボス猫に決闘を申し込んじゃったなんて!!
あー…もう!どうしよう…どうしようにゃ…
こんな事なら決闘するなんて言うんじゃなかったニャ…
…僕のお馬鹿!!
「ただいま~」
そんな静けさの中で自分の心の中と戦っている途中に…
あ!ご主人が帰ってきたのニャ。
僕はニャーと一度鳴いてご主人に挨拶をする。
「あれ?もう猫缶全部食べちゃったの?いつもなら少し食べて残しておいて時間置いてからまた食べるのに…よっぽどお腹が空いてたのかしら。」
?!
ち、違うニャ!!
僕が食べたんじゃないニャ!
でかい猫が来てそいつが全部食べちゃったんだニャ!!
僕は必死で自分は食べてないとニャーニャー泣いた…じゃない、鳴いた。
てゆうか、猫缶食べられなかったなんて泣きたくもなっちゃうけどね。
「これだけ食べたんだから今日のご飯はもうあげないほうがいいわね。また明日にしましょうね。」
…え…
ちょ…ちょっと待ってよ!!
僕は食べてないんだよ!
僕は再び同じように鳴いた。
「まだ欲しいの?ダメよ。そんなに沢山食べたらお腹壊すでしょう!」
そ、そんなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
ご主人にとっては僕の必死の訴えは「もっとちょーだい」って聞こえたんだろうニャ…
さっきも言ったように人間は猫の言葉なんて聞く事が出来ないし、伝える事が出来ない。
こんな時、お互い話しが通じたらいいのにって何度思った事があっただろうか。
アイツと決闘を申し込んだのに…
こんな空腹の状態で挑むなんてしかもあんなにでかい猫に挑むなんて僕は圧倒的に不利だ。
腹が減っては戦は出来ないんだニャ!!
…もう今日はご飯食べられないのニャ…
こうなったのも全部あのでかい猫のせいニャ!
アイツさえ…アイツさえ僕のささみ猫缶を食べなければ…!!
そして僕は怒りがこみ上げてくる。
アイツの不細工な顔を思い出すたびに、なんかイライラしてきたのニャ。
「許さないニャ…絶対許さないニャ…」
そうだ、だから僕はアイツに決闘を申し込んだのだから!!
ここで逃げたらダメなのニャ!
「アイツなんか、ギッタギタのボッコボコのバッキバキのガッシガシの…
えっと…えっと…
とにかく酷い目にあわせてやるニャ!」
そして僕は必死で爪をバリバリ研ぎ、決戦前夜を迎えたのだ。
…でも…お腹空いたニャ…
とっても綺麗な満月の夜、ご主人が寝静まった時間に、僕は窓から外へ飛び出した。
全く、ご主人は本当に窓の警備が甘いようだ。
なんか最近ご主人窓ちゃんと閉めないんだよね。網戸だけにしとくし。これなら網戸に爪を入れれば僕だって出入り出来ちゃう。
でも寒くなるとちゃんと窓閉めてるみたいニャ。何でだろうニャ?
きっと人間も気まぐれなんだニャ。変なの。
僕は空き地に向かってひたすら走った。
なんか走れば走るほどお腹が空いてくるニャ…
第3章「満月の決闘と朝日の終焉」
そして空き地に着くとそこにはあの憎きでかい猫がガラクタの上に乗って目を光らせていたのだ…
「来たか。」
でかい猫は飛び降りると低い声でニャアと鳴く。
「この日のためにいっぱい爪を研いで鋭くしてきたのニャ!覚悟するニャーー!!」
僕はでかい猫の姿を見るとすぐに走り攻撃態勢に入った。
これは先制攻撃だニャ!!
「甘いな」
そう言いながらでかい猫は猫パンチで僕の攻撃をいとも簡単にかわした。
「うにゃーーー!!」
僕はその衝動で一気に吹っ飛ばされた。
うーん本当にコイツ、強いニャ…
でも、負けないニャ!!
「まだまだやれるニャーー!!」
僕はまた走る。
でもまた猫パンチで簡単にかわされてしまう。
それでも僕は何度も挑戦する。
でもずっと同じ事の繰り返し。
でかい猫にまだ攻撃を与えてないのに。
コイツの猫パンチ…ただ者じゃないニャ。
それにお腹が空いて、全然…力が出ないニャ…
猫缶さえちゃんと食べておけばもっと力が湧いてきたと思うのに。
決闘は満月が沈むまで続いた。
「ま…まだまだやれるニャ…」
でも僕は体力の限界がきても諦めたくなかった。
「もうやめとけって。明らかに決着は付いただろ。」
ん?その言葉を言ったって事はそろそろ観念したか?
「逃げる気か?僕はまだ負けてないニャ!!」
「お前みたいな小さいのに勝ってもあんまり嬉しくないし。どう考えたって圧倒的に俺の方が有利だろう。」
なんかムカツクニャコイツ。僕、完全になめられているニャ…
「じゃあ何で決闘を受けたニャ?」
「逃げる理由もないからな、それにお前に渡したいモノがあってな。」
?
渡したいモノ?なんだそれは。大事な決闘なのになんで僕に渡したいモノがあるんだ?
でかい猫はそう言うとさっき座っていたガラクタの下からあるモノを加える。
「これは…サンマじゃないかニャ!!」
「ちょっと魚屋からこっそり持ってきた。」
「それ、持ってきたじゃなくて盗んできたんだろニャ!」
「お前にコレを食わせてから決闘を始めようかと思ったけど、いきなり攻撃したから渡せなかったんだ。おかげで時間が経ったからだいぶ痛んできたんじゃないか?腐らないうちに早く食え。」
僕は空腹に我慢出来ず、思わず言うとおりにサンマを口にしてしまった。
まさかその間にトドメを刺す気なんじゃないかとも思ったけど、アイツは特に攻撃したりはしなかった。
ある程度食べ終わったとき思わず我に返って、僕はでかい猫に問いかける。
「敵に情けをかけるなんて、どういうつもりニャ?まさか今頃になって勝手に猫缶食べた事を反省したのか?」
だって僕は決闘しに来たんだ。こんな事をしてもらう為に空き地に向かったワケじゃないんだから。
「別にお詫びしたくてサンマ持ってきたワケじゃないさ。腹が減っては戦は出来ないだろ。お前はただでさえ小さいのに空腹の子猫と戦っても全然面白くないだろ。」
…アイツにもアイツなりのブライドってのがあるんだろう。
いくら自分が強くとも、自分より弱いヤツと戦ってもあんまり嬉しくないんだろう。
それなら自分より強いヤツと戦って勝った方がよっぽど嬉しいんだと思う。
なんてったって町内で有名なボス猫なのだから。
僕はサンマを全部食べ終えるとお腹が満腹になり、口に付いた汚れを洗うかのように顔を舐める。
「お、太陽が昇ってきたぞ。」
「うにゃ?」
でかい猫が見ている方向をみると、そこにはもの凄く大きな丸いモノが雲から顔を出していたのだ。
「わわ、なんだこれー?」
「これは朝日って言うんだ。飼い猫のお前は見た事ないだろうけど、野良猫の俺たちははたまにこうやって朝日を眺めているんだ。」
でかい猫は朝日について何故か教えてくれた。
「太陽って昇ってくるんだ!これだけ大きい猫缶が食べられたら幸せだニャ!」
僕はその丸い太陽を見て猫缶と同じ形だったので猫缶を想像しながら太陽を眺めた。
「朝か…もう帰らないとご主人が心配するニャ…」
そうだ、すっかり忘れてた。あんまり帰りが遅いとご主人に怒られるのニャ。
「逃げるのか?」
「に、逃げないのニャ!!野良猫は自由だけど飼い猫はそうはいかないのニャ。
でも決着は終わってないニャ。
僕がいつか猫缶いっぱい食べて大人になってお前より強くなったらまた決闘するニャ!」
「ああ、楽しみにしてるぞ。」
「約束だからニャ!」
僕はでかい猫と決闘の続きの約束をし、その後空き地から離れ家まで走った。
絶対いつか勝ってやるのニャ!
おまけ。
あれから数日後だった。
「ああああああーーーーーっ!!」
見覚えのある顔、大きな体、あの時のでかい猫が僕の前にまた現れて、またささみ猫缶を勝手に食べられていた。
「またお前か!!いい加減にするニャ!!」
「いやー、あれから色んな所を回ってきたけど、どうやら俺もハマってしまったらしいぜ、ささみ猫缶。」
「帰れ!さっさと帰れニャ!」
僕はまたシャーっと威嚇をする。
「今日は半分残してやったから後でゆっくり食っとけよ。全部食ったらいつまでたっても小さいまんまだしな。」
でかい猫はそう言いながらジャンプしまた開いてる窓から出て行った。
絶対アイツには負けたくないニャ!!!
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