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♯23 日常で世界を変える(藤枝編)10月3日

 新幹線の車体は、年々変わっているように感じた。前乗った時ってこんなんだっけな?久しぶりに乗った新幹線がとても新鮮だった。目の前にいる大山からしたら、いつでも乗れるのだろうから、そんなことも思わないのだろうけど。東京で一通りのことをした俺は、今から群馬に戻ることになっていた。一人になって、もう一度これからのことを考えてみようと思った。

 大山「これ、車内で食べろよ」

 大山から、紙袋を受け取った。

 俺 「ありがとう。何入ってんの?」
 大山「東京土産だよ」
 俺 「お土産かよ。だったら、車内で食べないだろ」
 大山「お腹減ったら食べたらいいよ」

 大山の説明は、どこかぎこちなかった。本当にお土産がこの中に入っているのか。そもそも、さっき大山がお土産なんて買う時間はなかったはず。じゃあ、この渡したものはなんなのか。これ以上、聞いても仕方ない。俺は、諦めて持ち帰ることにした。

 俺 「じゃあ、そろそろ行くわ」
 大山「いいのか?」

 なにか心配そうにしていた。しかし、心配には及ばない。自分で決めた道だ。たとえ、どんな場所にいったとしても、それを正解とするしかなかった。

 俺 「ああ、十分やりきったよ」
 大山「お前がそう言うならいいけど」
 俺 「悪いな」  

 大手企業にいる大山からしたら、何か心配に思える要素が多いんだろう。それも理解できる。ただ、安心な道なんてこれからもない。

 大山「また、何かあればいつでも言ってくれ」
 俺 「ありがとう。お前は、こっちに戻ってこないのか?」

 大山が地元に戻ってくることは、あまりなさそうだった。

 大山「仕事が忙しいからな」
 俺 「そうか」

 大山「また、帰る時は連絡するよ」
 俺 「俺も就職が決まったら言うよ」
 大山「おう、お互い頑張ろうぜ」

 大山の差し出した拳に、俺も重ね合わせた。

 俺 「じゃあ、行くわ」

 先ほどより小さな声で、手を振った。俺は、ゆっくりと新幹線の中へ飛び込んでいく。まだ、東京から帰るだけで何もなしとげたわけではない。
俺が乗ると、ドアが閉まり、車掌のアナウンスが響き渡る。「もう間もなく出発いたします」ただと告げる。俺は、手にした切符をしっかり握りしながら、座席を探していた。時刻は、18時ということもあり、乗客たちでとても賑わっていた。俺の席のとなりは、サラリーマンのようだった。スーツ姿できっちりときめている。30代後半くらいだろうか?とても仕事ができるような面構えだった。

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