♯25 日常で世界を変える(藤枝編)10月5日
俺 「遅くなったけど、誕生日おめでとう」
彩音「ありがとう」
彩音の誕生日を祝えなかったから、日程を遅らせて祝うことにしたのだった。しかし、彩音は、想像したような笑顔を見せていなかった。
俺 「どうした?」
彩音「何が?」
あんまり話を聞いていなかったのかすぐさま質問をしてきた。気持ちは理解できるけど、今日は違ったのかな?俺はそう感じてしまった。
俺 「あんまり嬉しそうじゃないけど」
彩音「やめてよ、そんなこと言うの。まるで、私がダメみたいじゃない」
いつもは、こんなことで腹をたてる彩音じゃないのにな。しかし、今日は彩音を攻める時じゃない。前職時代の営業の時、いつもそんなことを考えながら話をしていた記憶がある。
俺 「なんか思うことあれば言っていいのに」
彩音「宏人にはないよ」
優しい声で話をしてくれた。
俺 「じゃあ、誰にあるの?」
彩音「そんな大したことないよ」
どうしても話をしたくないようだ。俺は、諦めて違う話題にすることにした。
俺 「言わなかったら余計心配なるよ」
彩音「大丈夫。仕事のことだから」
俺 「余計、心配だよ」
粘りながら、次の話題を考えることにした。
彩音「いいよ、気にしなくて。それより、宏人の仕事はどうなったの?」
俺が考えつく前に、すでに彩音が思いついた様だった。
俺 「この前、東京に行ってきたよ」
彩音「前、言ってくれてたやつだよね?」
俺 「そうそう」
これまで会った人とは、何もかも違う。そんなひとときだった。けど、これを言ってしまうと違和感をもたれそうだったので言うことはやめた。
彩音「どうだった?」
俺 「なかなか大変だよ」
あの日のことを簡単に語れない。社長の河野も凄いけど、それ以上に古屋の方が凄い。俺は、そう思った。高校生とは言えども、発想が何もかも俺とは違う。
彩音「何言われたの?」
俺 「会社つくれって」
彩音「会社?」
かなり驚いたようだ。目が大きくなり、俺の方を見つめる。でも、驚いても無理はない。俺でも驚いたんだから。
俺 「凄い不思議だったよ」
彩音「会社つくりたいの?」
俺 「ううん。そういうことじゃないよ」
俺が何を言うか、かなり気にしている様だった。
彩音「社長に会ったんだよね」
俺 「うん。二人社長がいて。どちらも若いのに凄いなって」
彩音「社長なんてなろうと思う人が少ないよね」
彩音の言う通り。雇われる方が絶対楽だろうと思っていた。