♯26 日常で世界を変える(藤枝編)10月6日
いろいろあったここ1週間だったけど、いつの間にかずっと動き回っているのが自分であることがわかった。ずっと家にいると、それはそれで退屈なんだと改めて知った。なんとなく世間で言っていることは理解できる。問題は、ここからどうするか。いろんな人からたくさんのアドバイスをもらい、どう実践にうつすかは簡単なことではない。もし、古谷たちと働くなら、再び東京に行く必要がある。その期限も決めなければならないのだ。
俺 「すいません」
店員は、俺の方に歩いてきて、注文を聞き始めた。今日は、カレーが食べたい気分でこの店に来たのだ。安くて俺の口に合う店。それは、ここ以外考えられなかった。
俺 「このカレーにウインナーと福神漬けトッピングしてください」
タブレットの様な機会に打ち込み、オーダーを取った。
店員「もしかして、藤枝か?」
呼び捨てにされた瞬間、店員の顔を見つめた。誰だ?俺の名前を知ってて、かつ呼び捨てで呼べるやつなんて中学校や高校時代のやつしかいないだろう。
俺 「どなたですか?」
誰かわからなかったから、とりあえず敬語を使うことにした。
店員「見覚えない?」
じっくり顔を見つめるが、わからない。マスクをしているため、顔の全体がイメージしにくい。
俺 「まったくないですね」
なかなか気づいてもらえないことに納得がいかないみたいだ。
店員「俺だよ、高校時代の」
やっぱり高校時代の奴か。もしかしたら、あんま喋ったことのないって可能性もあるのか?
俺 「まったくわからない」
店員「悲しいな」
店員は、ゆっくりマスクを外し俺の方を見つめた。あの顔は。見覚えがあった。名前は、近藤玲央。俺と同じ聖徳高校の生徒だった。しかし、アイツがこんなところでバイトしてるとは。近藤は、野球部で成績も優秀。
俺 「近藤か?」
店員「気づくの遅いよ」
まさか俺より先に近藤が俺のことを気づくなんてな。考えられない。
俺 「こんなところで何してんだよ」
店員「フリーターだよ」
俺 「フリーター?」
近藤は、真面目な顔をしながら頷いた。なんで、こんなに真面目でいられるのだろうか?
店員「この前、会社辞めたんだよ」
俺 「まじ?」
店員「ああ。それでこっちに帰ってバイトしてるんだよ」
知らなかった。近藤がそんな風になっているなんて。
店員「お前は、何してるんだよ?」
俺 「カレー食べに来たんだよ」
近藤に言うか迷った俺は、なんとなくその場をのりきった。