♯32 日常で世界を変える(藤枝編)10月12日
明日から、いよいよ俺の旅が始まる。勝手に第二章と位置付けていいと思う。その第二章の準備をしていた。何を持っていけばいいのか迷っていた。そもそも自転車で持っていけるものなんて限られている。何を入れて、何を捨てるか。俺の心の中は、わくわくとした期待をどうなるかわからない不安の方が大きかった。まぁ、そこで死ぬならそれも人生かな。俺は、そんなことすら思っていた。明日から始まる冒険で、俺のこれからの人生が決まる。そう思えば、ヒリヒリできる自分がいた。
俺は、いつもは使わない大きめのリュックを押時入れから引きずり出した。このリュックは、大学の時によく使っていたものだった。このリュックを持って、日本の様々なところへ行ったことを思い出していた。リュックを開けると、そこには昔使っていたであろう筆箱が入っていた。ここ何年か使っていなかったこともあり随分年季が入っているように感じた。そして、筆箱の下には、観光地をめぐるマップのようなものもあった。よく見ると、そこは大阪の下町だった。そういえば、大阪もよく行ったな。懐かしさともに、気分も上がっていた。
さぁ、何をつめていこうか。最悪、スマホとお金さえあれば何も困ることはない。ただ、服は持っていった方がいいだろうな。そうだ、カメラを持っていこう。俺は、カメラがどこにあるか部屋を見渡した。カメラは、あそこにある。思い出した。引き出しの一番下で眠っていることはわかっていた。カメラは、プチプチに包まれており、新品同様だった。たしか、入社2年目の頃に買ったけど、あの頃はカメラなんか使う暇がなかった。休みがあれば、遊ぶんじゃなくてずっとゴロゴロしていた記憶しかない。それがあの頃の最高の至福だった。俺は、包まれていたカメラを取り出し、カメラの穴を覗き込んだ。懐かしいな。たしからこんな感じだった。
重たいけどとりあえず持っていくか。俺は大事にリュックの中に入れる。次は、服だな。自転車で行くならオシャレさよりも動きやすい格好だな。だったら、パーカーは必要だな。あとは、下着や靴下かな?タンスの中にある衣類を入れこむ。準備が進むにつれて、時間はあっという間に過ぎ去っていく。俺は、最後にお気に入りの香水を入れることにした。これは、社会人になった時、誕生日プレゼントで彩音からもらったものだった。小さなアイテムではあったが、旅をより特別なものにしてくれると思っていた。