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♯27 日常で世界を変える(藤枝編)10月7日

 気がつけば近藤ともう10時間ぐらい一緒にいる。あの後、近藤はバイトを早く切り上げ、俺と飲み歩きをし始めた。挙げ句の果て、近藤の家に連れて行かれたのだ。たしかに、横で眠る近藤だったが、俺はとてもじゃないけど寝れる状態じゃない。近藤の家には、いろんな物が飾られている。小学校や中学校で獲得したであろうトロフィーや友だちや彼女たちと撮った写真などが飾られた。近藤は、高校時代モテてたし、大学時代も彼女がいたんだろうと思った。
 まだ、静かな朝。これから太陽が見えてくるんだろうなとカーテン越しの外を見つめた。ベットで眠る近藤は爆睡の様だった。俺は、ソファに腰を下ろし、さっきの写真に目を向けた。額縁に収められた近藤の写真はとても眩しくカッコよかった。最初に目に入った写真は、聖徳高校の野球部たちだった。メンバーの中心だった近藤は、満面の笑みだった。そして、その横にある写真は、青い海に映った大学時代だった。波の音が聞こえるような映える写真だ。その横にあるのが、近藤と彼女の写真だった。近藤の彼女は、聖徳高校の間永という子で俺と同じクラスにもなったような人だった。
 この写真は、東京で撮った写真だろうか?東京の大きなビルが後ろに写っている。俺は、間永の優しそうな笑顔に目を引かれる。近藤と間永はともにピースをしている。年齢的にも結婚してもおかしくないのだろうけど。どうしてしないのかは疑問だった。俺は、爆睡している近藤を一瞬チラリと覗くかし、近藤は、まったく起きる様子はない。もう時刻は、朝の5時。近藤が起きる前にこっそり帰った方がいいだろうか?俺は、さっきまで座っていたソファに戻りスマホを確認する。
 いつものように数件連絡がたまっている。こんなことになるなら、あそこのカレー屋さんにいくんじゃなかったな。いつの間にか後悔してしまっていた。近藤は嫌いじゃないけど、これだけペースを乱されるとな。この前会った大山や伊東のような優しさや空気をよむことはできない奴だった。そう考えると、アイツらはとても俺に合っているのかもしれないな。近藤にも一つ一つの写真があるように、俺にもたくさんの思い出がある。そんなことを思い出させてくれる10時間だった。俺は、静かにカバンをとり、近藤を起こさないようにゆっくり歩いていく。この感じだとこのまま気づかないだろう。目を閉じて寝ている近藤をうしろに俺はドアを静かに開けたのだった。

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