オタクの子はオタク
「まんがばっかり読んでいないで勉強しなさい!」
子どもの頃、家族に言われた方も結構いるのではないだろうか?
その意味は様々だと思うが、私の親、特に母の場合は、「まんがを読むなとは言わないから早く勉強を終わらせれば続きを読めるでしょ?」と諭す。
決してまんがを読んだりアニメを観ることを否定しなかった。なぜなら母もまた、まんがやアニメが大好きないわゆるオタクなのだ。
母が子どもの頃は、鉄人28号やエイトマン、リボンの騎士、アタックNo.1、エースをねらえ!などたくさんの作品を観ていたそうだ。
社会人になってからもキャンディ・キャンディ、はいからさんが通る、銀河鉄道999、サイボーグ009など観ていて、私や弟が生まれてからも一緒にアニメを観ていた。
私が保育園児の頃、テレビで魔法使いサリーちゃんを放送していた。サリーちゃんがほうきに乗っていたり魔法を使っているところが大好きで、「大きくなったらサリーちゃんになりたい!」と言ったのを聞いて両親におもちゃの魔法のほうきを買ってくれた。私はほうきにまたがって部屋中を走り回り、時折ジャンプをして、これで空を飛べると思っていた。
私がアニメを好きになるきっかけはきっとサリーちゃんだったと思う。おかげで学習机はマットにサリーちゃんの絵があるもので、とても喜んだのを覚えている。
小学生になり、サリーちゃんの放送が終わって観たいアニメを模索していた頃、しばらくしてテレビで美少女戦士セーラームーンの放送がはじまり、可愛い女の子が戦っていてカッコいい!とテレビにかじりついて観ていた。作品の中に登場する変身ブローチやムーンスティックを母にねだり、誕生日プレゼントに買ってもらった。アニメを観つつ、だんだん原作のまんがが読みたくなった私はまたまた母にねだり、少女漫画雑誌なかよしを買い始めるのだった。
そして、読み終わったら母に「読み終わったからお母さんも読んで良いよー」と渡し、母が家事が一段落した頃合いに読むといった流れが生まれる。母もまた買ったまんがを読み終えたら私の机などに読んで良いよと置いていく。ちなみにそのルーティンは今現在も続いている。
中学生の時も色んなアニメを観ていた。特に新世紀エヴァンゲリオンは14歳の少年少女の葛藤しながら生きていく様に思春期真っ只中の自分を重ねたりもした。ある日、友達からBL漫画を教えてもらったがシーンによっては「これはまだ刺激が強いかも」と謎に気遣われてしまった。その時の友達に打ち明けられなかった事がある。実はBLのある程度のシーンは母が集めていたまんがで履修済だったのだ。友達はそんな事もつゆ知らず気を遣い、私も気を遣っているのに水を差したくなくて黙っていた。今や時効もいいところだ。
高校受験の日のこと。私は数日前から風邪を引きなかなか治らず、前日に点滴を打つことになった。翌日は友達と電車で試験会場まで行く予定だったが、熱もあり頭がぼーっとしていて乗り物酔いしやすい私は電車は到底無理そうとなり電話で友達に事情を話し、母に試験会場まで車で送ってもらうことになった。
友達は心配してくれて嬉しかったけど、このタイミングでまさか病院のベッドで点滴をするなんて。「ついてないなー。せっかくみんなと一緒に行けると思ったのになー。」と、約束したのに行けない自分を情けなく感じた。
試験当日、母に送ってもらい私は会場に向った。午前の試験科目が終わり、昼食の時にお弁当を食べながらふと、母の事が気になった。試験の間、時間を潰すのが大変ではないかと心配していたが、試験終了後、車に乗った時そんな心配は要らなかったんだと気づく。
何と母は待ち時間に古本屋で大量のまんがを買い、それを読んで待っていたと言うではないか。「あなたが好きだって言ってた漫画家さんのコミックがあったから全部買って来た」と。我が母ながら恐るべし。
高校生になり、新たな友達が出来たのだが、その友達の中には自分が集めたいBL小説があるけど、その子の母親がまんがも小説も興味がないため集めようとするのを許してくれないと相談してきた。しかもBL小説、バレたら大変な事になると。一体どんな作品なのかと訪ねたら、運良く私の母が集めているものだったので「母が集めているからうちに借りに来る?」と誘ってみたら「えっ!?お母さんが集めているの!?是非遊びに行きたい!」とかなり驚きもあったが、即決で返事をしてくれた。学校が終わった後に私の家に寄り、友達が母と嬉々と話しながら借りていくBL小説を見繕っていた。帰る頃にはリュックサックはもちろん、手提げ袋を自転車の両ハンドルにさげる程の量になり、「帰りが大変じゃない?」心配だったが「気合いで帰る!」と力強くペダルを漕ぎながら帰っていった。
あの後友達から母親にバレたと聞いていないのでコソコソ読んでいたに違いない。
大学生になってから出来た友達もまた遊びに来て、まんがやアニメの話をして、帰りに私の持っているまんがと母の持っているまんがを大量に持って帰りたいと言うではないか。「そんなにいっぺんに借りなくてもまた来たらいいじゃない?重たいよ?」と言うと、友達は、「その時はまた借りに来るけど今日はこれだけ持って帰りたい!大丈夫、車だから!」と気分抑揚と車に積み込み帰って行った。
我が家はTSUTAYAのレンタルまんが並に頻繁に友達が出入りしていた。
社会人になってからも変わらずまんが小説やアニメにハマっている。同僚との会話で母もまんがとアニメが好きで良く話していると言うと結構羨ましがられることもある。そう言えば、昔のアニメは放送決定されても一部地域ではじかれて田舎って不便と思っていたが、今やサブスクの普及でアニメは見放題で逆に今度は忙しく過ごしている。まさに嬉しい悲鳴だ。
そんな中、数年前突然母に病気が見つかり、思うように外出ができない時もある。そんな時はサブスクを上手く使い分け、色んなアニメを観ているそうだ。
「夏目友人帳の最新話はまだ?」や、「SPY×FAMILYと薬屋のひとりごとの次のシーズンはいつから始まるの?」や、「来年のコナンの映画は絶対観ないと!」や、「魔法科高校の劣等生は観た方がいい」などなどアニメが母の生きがいになっているようで、それはそれでありなのではないかと思う。
私がもし家族を築くなら趣味を否定しないか同じアニメやまんが好きな人が安心する気がする。子どもが出来たら私も母と同じくするだろうか。いやきっとするだろう。
“カエルの子はカエル”ならぬ“オタクの子はオタク”なのだからこのDNAには抗えないだろう。