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八月納涼歌舞伎『狐花』レポート     (小説と違う点、京極歌舞伎)

8月6日の火曜日
東京・歌舞伎座で『狐花』を見てきました。
この記事ではその感想を書いていきます。


ミステリ作家 京極夏彦、初の歌舞伎作品

八月納涼歌舞伎の第三部である本演目の脚本は、ミステリ作家の京極夏彦氏が書いています。

作家活動30周年の記念として企画された本演目ですが、同氏が歌舞伎を手掛けるのは初めてらしいです。

30周年記念作品、しかも期間限定。
京極作品が好きな私として、これは見逃すわけにはいきません。
書き下ろし原作『狐花』を事前に読んで、私にとっても人生初となる歌舞伎座に臨みました。


歌舞伎の魅力

人生初の歌舞伎鑑賞。
そこで気づいた歌舞伎を生で見ることの魅力。
最初にそれを語らせてもらいます(;^ω^)

まず迫力がすごいです。本当にすごい。
生の人間が演じることの大切さ。それ見て感じる熱量。
映画とは比べ物にならない臨場感。まさに気迫。
いやぁ、引き込まれました。

そして舞台仕掛け。
大がかりなセットが回転します。動きます。壊れます。
見ているだけでかなり面白いです。
スタッフの努力がうかがい知れます。
個人的には、垂れ幕とライトアップを用いた炎の表現が特にすごかった。

あと会場の高級感。
お金持ちになった気持ちになるね。うん。


小説と違う点(ネタバレ注意!)





ここからは、書き下ろし原作『狐花』と歌舞伎の違いについてです。
些細な人物設定や台詞の差異は無視して、新シーンが挿入されている部分や大幅に変更されている部分を見ていきます。ネタバレ注意です。

【違う点1】新シーン 信田家の焼き討ち
歌舞伎では、原作で描かれなかった信田家の焼き討ちシーンが序盤に挿入されています。
原作で言及されているほど残虐な描写はないものの、このシーンによって上月監物一派を典型的な悪役として印象づけられているように思います。

【違う点2】的場佐平次の最期
原作でも歌舞伎同様、的場佐平次は上月監物に斬り殺されるのですが、その最期に至るまでの流れが少し違います。

 歌舞伎では、的場佐平次は監物第一主義でした。
そのため的場は、萩之介に心酔し監物殺害に協力する雪乃が自分と監物の障害になると思い殺害しました。しかし、それを見た監物は「雪乃を美雪の代わり身として育てる」という本来の目的が果たせなくなったと悟り憤慨。的場をその場で切り殺してしまいます。
 
 一方、原作の的場は監物に忠誠を誓っていません。
兄である監物の凶行に恐れを抱いていました。そして萩之介騒動の解決のため、中禅寺洲濟を味方につけようとしますが、 ”あのこと― 信田家焼き討ち” を告げようととしたところ、監物に斬り殺されてしまいます。
的場と監物。
両者とも頭がキレるキャラクターでありながら、立場と意見の違いによって、最終的には的場が殺される。
これは、近江屋や辰巳屋が殺される場面と同じくらいの名シーンです。
個人的には、ぜひ歌舞伎で見せてほしかったと思ってしまいます。

総評 よかったか?わるかったか?

いくつか小説と違う点はありながらも、物語を通して小説との大差はなく、面白い作品であったと思います。
ただ、やはり京極作品。
普通の作品とは違います。
長広舌が多いです。とにかく多い。
たとえ小説であっても、読んでいると結構な体力を消費する作品です。
なので半ば想像していたことではあるのですが、歌舞伎だとやはり間延びしてる感が否めません。
本作はいつもより文量が少ないとはいえ、役者が動かず語るだけのが場面が目につきます。
それ故に、中善寺洲濟役・松本幸四郎さんが大変そう。
実際、8月6日公演ではセリフが出てこず、少し要領を得ないシーンが幾度かありました。

逆に、絵になるシーンはとことん良いです。
繊細な情景描写は京極作品の醍醐味のひとつなのですが、歌舞伎ではそれを実際に、目で堪能できます。繊細でありながらも、より歌舞伎らしい煌びやかな情景描写に仕上がっています。

全体の総評として、そういう意味では良くも悪くも京極夏彦氏の作品らしい「京極歌舞伎」に仕上がったのではないかと思います。ぜひ二作目もつくってほしいものですね。

以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます(*^-^)

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