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ハンドドリップにこだわる
アメリカについたばかりでできた友人宅でお世話になっていたら、ペーパードリップポットでコーヒーを淹れるように言われた。男子厨房に立ち入らずと言って僕を育ててきた母のおかげで、コンロの火の付け方さえろくに知らなかった僕にだ。
グラインドの量もお湯の注ぎ方ももちろんわからない。震える手で淹れてはみたものの到底飲めるものにならなかった。友人はコーヒーをドリップで淹れることの良さと難しさを何も言わずに教えてくれようとしたのだろう。もちろん淹れ直してくれた。
僕の父はいつも寝不足で、胃潰瘍があるのにインスタントコーヒーをがぶ飲みしていた。それがコーヒーだと思っていた僕の目を、ドリップコーヒーは本当に醒まさせてくれた。日本に帰国してからと言うもの、自分もハンドドリップにこだわってみようかと思ったのは、アメリカの文化を直観的に学ばせてくれようとした友人のおかげだ。アメリカ人は基本的にハンドドリップをせずにコーヒーメーカーを使うのだが、彼女は海外で色々な研修を受けていたので、ヨーロッパ人から学んだのだろう。
コーヒーに関する雑誌を見ると、沸騰点より少し低めの温度のお湯を最初の真っ黒なドリップがポタリと落ちるまでゆっくりと足していくのが美味しさのコツだと言う風に書いてあった。
この真っ黒なドリップにコーヒーの奥深さが凝縮されているようだ。
まずは、ケトルでいくら頑張ってもポタポタと注げるはずもなく、ドリップポットに行き着くまで時間がかかった。ドリップポットを使ってもかなり集中して丁寧に注ぐ必要がある。起きたての朝から集中力を使うと疲れる。
つい最近、その問題を解決してくれるガジェットを見つけた。
コーヒー好きになって、ハリオさんには大変お世話になった。湯沸かしから真ん中の小さく丸いところにほんの少しお湯を入れると、シャワーヘッドのように小さな穴からゆっくりとポタポタ落ちる。集中は必要ない。お湯が落ち終わると、しばらく染み込むまで待って、また注ぐ。これを最初の真っ黒なドリップが落ちるまで繰り返せばいい。この時点では主に真ん中にお湯が染み込んでいるので、周りのリングの部分に少しお湯を足せば、グラインド全体が湿るので、ドリップアシスタントを取り除いて、普段通りグラインドを立ち上げるようにお湯をしっかりと注ぎ始める。
マグカップ一杯分だと分かりにくいが、二杯分作ると、嬉しくなるほどドリップが黒い。
この淹れ方は、メーカーの指示とちょっと違ったように覚えているが、淹れるたびに友人のことを思い出し暖かい気持ちになる。
友人とは50年経った今も Facebook Messenger で繋がっている。
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