自分らしく普通に生きられない「おかしさ」を共有し、社会が変わる
日々読書‐教育実践に深く測り合えるために
中塚幹也『封じ込められた子ども、その心を聴く 性同一性障害の生徒に向き合う』ふくろう出版、2017年。”
性的マイノリティは、約13人に1人の割合になり、その割合は、左利きの人と同じくらいであり、AB型の人と同じくらいとも言われています。本書では、性別違和を持つ子どもは、学校でも担任の先生や養護教諭には「絶対に知られたくない」と思っている場合が多く、教師も子どもの悩みに気づかないまま過ごしていることもよくあることが指摘されています。性同一性障害当事者は、子どもの頃の悩みを「絶対に伝えまいと思った」「迷ったが伝えられなかった」場合が多く、自身の気持ちを封じ込める体験をしてきました。性別違和を告白できない、むしろ隠している子どもを支援するためには、教師が子どもの発するサインをいかに察知するかが必要になります。
と同時に、性同一性障害をはじめ性的マイノリティの子どもは、自身の気持ちをカミングアウトできないまま、リストカット、不登校、引きこもり、うつといった形で普通のクラスからはじき飛ばされています。性同一性障害当事者が、自分らしく普通に生きるためには、学校そのものが変わる必要もあります。
たとえば、性同一性障害当事者は、「生まれつき自分の身体が間違っている」と感じており、趣味や好みで「身体を変えたい」というのではなく、「本当の身体を取り戻したい」と思っています。周りの誤った認識が当事者の気持ちを封じ込めているのです。当事者が自分らしく普通に生きられない「おかしさ」を共有し、社会が変わることで性同一性障害の子どもたちの将来も変わってくるのではないか。本書には、穏やかだけれども、確かな憤りが感じられました。