日々読書‐教育実践に深く測りあえるために
木村素子・髙山恵子『「みんなの学校」から社会を変える-障害のある子を排除しない教育への道』小学館新書、2019年。
本書は、木村さんと髙山さんの対談を書籍化したものである。
教員養成課程では、「自分がどんな先生になりたいか?」ばかりを勉強させられ、教員になることが目的となり、子どもが目的を達成する手段となっている。「どんな教員になりたいか?」ではなく、「どんな子どもを育てたいか」を考える必要があると、木村さんが指摘しています。
「目的」と「手段」の主従関係が入れ替わっている問題として、「宿題」が本書では話題になっていた。
木村さんは、「宿題をやってきたのか?」と子どもに言う権利があるのは、その子その子の能力に合った宿題を出した先生だけだと指摘する。35人学級ならば、35通りの宿題を出すべきだというのである。子どもたち全員が授業中に理解していると思えていないのに、全員の子どもに同じ宿題を出しているのはどうなのだろうか。授業中に子どもがわかっていない責任は、授業者である教員にあるというのだ。
木村さんは、「その子その子の能力に合った、35通りの宿題を、先生は出せない。どうしたらいいのだろう。みんなで考えよう」と、子どもたちに聴いてみたという。子どもから出てきたアイデアは、「①番から⑩番までが今日の宿題。で、この中からいくつやるかは、自分たちで決められる」というものだったそうだ。目的は、できないところをできるようにすることであり、子どもたちには「自分で宿題の数を決めてよい」という同じ条件が与えられている。宿題を選択式にして、自分で選ぶということを子どもたちと考えて、深めていくのである。
先生が何をするかではなく、子どもが何をするか。「校長が、こう言うから」「主任が、こう言うから」ではなく、「自分がこの子だったら、どうしてほしい?」「今、自分がやっていることは、この子にとってどうなんだろう?」教師一人ひとりが、決まりごとに従うのではなく、常に自分に問いかけて、子どもを主語にして考え始めることが第一歩なのだと指摘するのである。