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おとなになるって、たのしいですか?

 7月29日の宮崎日日新聞に掲載した「げん先生の悩む前に質問しよう」の原稿です。

 宮崎市フェニックス自然動物園に行ったことがありますか?チンパンジー舎の前に遊具が置かれた広場があります。そこに、「ヒト(こども)」という看板が立っています。見たことはありますか?

 立て看板には、ヒト(こども)は、霊長類ヒト科、英名はhuman(ヒューマン)、学名は、Homo sapience(ホモサピエンス)とあり、すんでいる所は、地球上のいたるところといった案内があります。5つの「みどころ」も、書かれています。「笑顔が天使。とても好奇心がつよく、活発で、夢中になると、時間をわすれ遊ぶ。親、兄弟、友達とけんかすることもあるが、仲直りも早い。これから、いろんな経験をし、立派な大人になっていく。個性が様々で、おなじ者はいない。」と、子どもが持っている価値が指摘されています。

 おとなになると、ていねいに仕事をしたり、誰かとゆっくり話したりすることがうまくできなくなります。時間の大切さを忘れ、日々にあそびがなくなっていきます。けんかをしてしまうと、仲直りはなかなかできません。出る杭は打たれ、同じであることを強制されることもあります。せかせかと生き、息が切れて動けなくなり、笑顔が消えてしまうこともあります。

 大学1年生と大学4年生に、「あなたは、おとなですか?子どもですか?」「あなたは、まだ若いですか?もう若くないですか?」と聞くと、大学1年生は「まだ若い子ども」と答え、大学4年生は「もう若くない子ども」と答えます。おとなになる前に、老け始めているのです。

 でも、いろいろな経験と学びを大切にし、違いをおもしろがり、違いの中に同じところを見つけることができるようになると、日々新しくなる自分に出会えるようになります。そうすると、仕事にじっくりと向き合えたり、誰かとゆったりと話すときを過ごせたり、あるいは、孤独を恐れなくなります。おとなになることは、楽ではないのですが、豊かで充実した時間が生まれたり、心地よい関係が生まれたりします。
 
 おとなになってしまうのではなく、常におとなになっていく人生を歩む。ただ年をとるのではなく、好奇心を保ち、夢中になっている「いま」をていねいに積み重ねていくと、大切な人とも過ごせるようになり、幸せを実感します。おとなになるって、ゆかいなことです。子どものときに備わっている価値を大事に、ゆっくり、のんびり、じっくりと、おとなになっていってほしいと思います。

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