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励ますのではなく、切り替える
保育者から聞いた話です。
あかねちゃんが泣いている。あかねちゃんがおしっこした後、あかねちゃんが水を流す前に、こうたろうくんがおしっこをして水を流してしまったと言う。保育者が「トイレットペーパーが少し残っているので、まだ流せるよ」と言っても、あかねちゃんは納得しない。相手の立場に立つように「こうたろうくんは流さなくてもいいの?」とはあかねちゃんにはまだまだ聞けないし、もちろん「いつまで泣いてるの、おしっこぐらい」とキレてはいけない。
保育者は、どうしたか。
「いくら泣いてもおしっこは返ってこない。かなしいときは、かわいいお洋服着よう。一緒に探そうか」と、こういうときのためにお気に入りの着替えを家から持ってこさせていたのである。服を着替えることであかねちゃんの気持ちを切り替えていったという。あかねちゃんのこだわりを方向転換させているが、あかねちゃんのかなしみには寄りそっている。あかねちゃんは泣きながらお洋服を持ってきたという。
保育者のことばには、すてきな子ども理解があります。小学校では、「あかねちゃんの負けずぎらいが好き」というように、否定のなかに肯定を発見し、子どもを励ましていく指導を大切にしてきました。保育にある子どもの存在そのものを認めていくかかわり方に学び、子どもを励ますことは、結局、子どもの過去を否定することでもあることだと突き付けられました