シャアの陰謀に散る!ガルマは「おぼっちゃん」だったのか?~機動戦士ガンダム 第10話「ガルマ散る」感想
上流階級の社交の場
男「時に、お父上のデギン公王には地球においでになるご予定は?」
ガルマ「聞いてはおりません」
男「おいでの節は是非なにとぞよしなに」
会場にはジオンの威勢を誇示するようにデギンの肖像画も掲げられている。
戦争後は荒廃した地球をどう復興するかがジオンの中心的なお仕事になる。そのためには地球の上流階級のお金持ちとのつながりも欠かせない。こうした地球の上流階級からの協力とお金を引き出すこともガルマのお仕事のようだ。
しかし、ガルマ自身はあまりこの仕事に気が乗らないようだ。
ガルマ「連中はむしが好かん」
前市長のエッシェンバッハはジオンのことをよく思っていない。この度の戦争で街は荒廃してしまったし、なによりコロニー落としの非人道性は際立っている。反ジオンの勢力が地球にあっても全く不思議ではない。
ミライ「そうね。ガルマ・ザビに占領されたといっても、まだ大陸には連邦軍の地下組織が抵抗を続けているはずよ」(第6話)
他方で、開戦直後のジオンの快進撃を見てジオンに取り入ろうとする勢力もあるはずだ。冒頭の2人の男がまさにそれである。
ジオンを捨てる!?
ガルマ「大丈夫。今、連邦軍の機密を手に入れるチャンスなのです。それに成功すれば、父とて私の無理を聞き入れてくれます」
イセリナ「ガルマ様」
ガルマ「それで聞き届けてもらえねば、私もジオンを捨てよう」
ガルマが「ジオンを捨てる」と言っているところはいかにも若い。後先考えず、衝動的に行動している感じだ。
ガルマはザビ家の人間で、地球方面軍司令を拝命している。戦後の地球統治にも影響力のある人物だ。そういった人物が自分で自由に結婚相手を決められるとは考えがたい。
シャアが「(前線でラブロマンスか。ガルマらしいよ、おぼっちゃん)」と揶揄するように、自分の背負っているものの大きさを理解できていないのだ。
ガルマが何か政略目的でイセリナに近づいているという可能性もないだろう。
冒頭でガルマの姿を見て黄色い声を上げる女達がいるが、ガルマは一顧だにしない。他方、イセリナが登場したらすぐに近寄っていっている。
ここから窺えるのはガルマ一途さ、純粋さだ。ガルマは純粋にイセリナのことを思っているのだろう。
ホワイトベースとガルマの最後の戦い
ジオン兵「木馬がS3ポイントに紛れ込みました」
ガルマ「なに?」
ジオン兵「ここの最後の防衛線を突破されれば連邦軍の制空圏内に入られてしまいますが」
ガルマ「予定通りだよ、あそこに防衛ラインもある。私も機動一個中隊で現地へ向かう。シャア少佐にも伝えろ、出動だ」
ホワイトベースは連邦軍の制空圏内まであと一歩のところまで来ている。しかし、そこにはジオンの最後の防衛線があり、ガルマもそこでホワイトベースとの戦闘を想定している。ガルマとホワイトベースとの戦いはついに最終段階に入った。
無視されるアムロの進言
アムロ「ブライトさん、僕が先頭に立っておとりになりましょうか?」
ブライト「いや、それはまずい。ちょっと遅いようだ」
この回ではアムロの陽動作戦の進言はほぼほぼ無視されている。ブライトとアムロの確執が毎回のように描かれているが、おそらくこうした積み重ねが後々効いてくるのだろう。
雨天野球場!?
「雨天野球場」とはようするにドーム球場のことのようだ。
「機動戦士ガンダム」放送時(1979年)にドーム球場ってあったのかなと思って、今回ドーム球場の歴史を軽く調べてみた。
すると1965年に建設されたアストロドーム(@ヒューストン)が最初のドーム球場らしい。意外と歴史があってびっくりした。
絨毯爆撃
ガルマ「パトロールルッグン、木馬が見つからんだと?まだ街から出てはおらん、よく捜せ」
シャア「フフフ、穴に逃げ込んだネズミを燻りだすのは絨毯爆撃に限るな」
ガルマ「うん、よし、全機ローラーシフトを敷き、ただちに爆撃を開始しろ」
ガルマの絨毯爆撃にじっと待つだけのホワイトベース。第二次大戦で空襲がやむのを防空壕でただただじっと待つ民間人を想起させるシーンである。
アムロvsシャア(6戦目)
ブライト「よし、アムロ、聞こえるか?ザクが来る。ガンダムをホワイトベースの外に出せ」
アムロ「了解!」
ブライト「そしてさっきの君の戦術でいく。君がおとりになってザクと、できたら敵の本体もだが、ホワイトベースの前に来るようになんとかおびき出してくれないか?アムロ。そして、そこをホワイトベースで一気に叩く」
アムロ「了解」
シャアがザクで出撃。ホワイトベースも対抗してガンダムを出す。
結局アムロ発案の陽動作戦でいくこととなった。ガンダムとシャアザクの対決も今回で6回目である。
今回は荒廃した市街地での白兵戦である。こういう場所での戦闘はシャアに有利であろう。ガンダムとの性能差があるとしても、操縦技能ではシャアが圧倒的に上だ。数的にもザク3機に対しガンダムは1機である。
もっともアムロはホワイトベースの前にザクやガウを誘導すればいい。殲滅することまでは求められていない。
はたして?
シャア「モビルスーツめ。やるようになった」
シャアの戦い方とアムロの戦い方は全く同じでお互いに地形を利用した不意打ちを仕掛けあう展開になっている。
ガンダムの戦い方をみて「やるようになった」とほめるシャアは余裕があるのか。
仇討ち!?
シャア「やるな、モビルスーツめ。我々をおびき出すつもりか。ということは木馬はうしろだな。(なるほどいい作戦だ。仇討ちをさせてもらう)」
ガルマ「待っていた、シャア」
シャア「モビルスーツが逃げるぞ。その先に木馬がいるはずだ、追えるか?」
ガルマ「追うさ」
ザクをおびき寄せるように逃げるガンダム。しかし、シャアはホワイトベースの作戦をすべて見抜いているし、ホワイトベースの位置も正確に把握している。
状況的にシャアがホワイトベースの位置をガウに伝えればホワイトベースは撃沈間違いなしである。
しかし、シャアは「仇討ちをさせてもらう」といって逃げるガンダムを追うようにガルマに伝達。ガウはガンダムを追ってホワイトベースに背中を見せる形になった。ガルマピンチ!
ホワイトベースが一斉射撃!
ブライト「ガンタンク、ガンキャノン、ホワイトベースの各砲座、銃撃手はおのおの照準合わせ。10秒後に一斉射撃!10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、撃てっ!」
ジオン兵「うしろから攻撃を受けました」
ガルマ「うしろだと!」
ジオン兵「も、木馬です、木馬がうしろから!」
ガルマ「上昇だ、上昇しろ!」
ジオン兵「無理です!」
ガルマ「180度回頭だ!ガ、ガウを木馬にぶつけてやる!」
全く想定していない後ろからの急襲を受けて大混乱のガルマの編隊。途中でガンダムのバズーカでザクもやられている。シャアはどこ行った?
ガルマは上昇を指示するも、エンジンがすでにやられているのであろう、上昇はかなわない。
すると即座に180度回頭を指示。ガウで特攻をかけることを決断した。
「状況的にガウは沈んでしまう、それなら最期にホワイトベースに一矢報いてやる」ということだろう。この決断の早さはなかなかのものだ。
シャアの企み
シャア「フフフフ、ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
ガルマ「なに?不幸だと?」
シャア「そう、不幸だ」
ガルマ「シャ、シャア、お前は?」
シャア「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ。フフフフ、ハハハハハ」
ガルマ「シャア、謀ったな。シャア!!」
「仇討ち」、「君の父上がいけないのだよ」というセリフから、シャアはザビ家への復讐を企んでいるようだ。どういう経緯かはまだわからないが、ザビ家への恨みがあるのだろう。
これまでシャアはガルマと士官学校時代の同期として、普通の友人として付き合っていた。
しかし、第9話でシャアはホワイトベースとの戦闘でガルマが戦死するかもしれないのに、それを助けようともしなかった。
目的のためには手段を選ばない冷徹な人間なのかと思っていたが、もちろんそういった要素もあることはあるのだろうが、中心的な要素としてはザビ家への復讐にあったようだ。
第6話のラスト、シャアの片目がきらりと光るシーンがあった。この時からシャアはホワイトベースとの戦闘でチャンスがあればガルマを死に追いやることを考えていたのだろう。
ガルマを利用するだけ利用して、いつか亡き者にすることを虎視眈々と狙っていたわけだ。
ガルマ散る
ガルマ「私とてザビ家の男だ、無駄死にはしない!」
マーカー「敵機1機、本艦に向かってきます」
ブライト「なんだと?ま、まさか、特攻か?ミライ、上昇だ、上昇しろ。緊急上昇だ!」
ガルマ「だあーっ・・・」
ブライト「全員、伏せろーっ!!」
ガルマ「ジオン公国に栄光あれーっ!!!」
死の瀬戸際、ガルマはイセリナのことを思いながらホワイトベースに特攻を仕掛ける。
ホワイトベースを撃墜しイセリナと結婚する、それが叶わなければジオンを捨てると甘っちょろいことを言っていたが、イセリナのことは本気で好きだったようだ。
こうしたガルマのまっすぐさ・純粋さは一方では幼稚さ・未熟さといった短所とも評価しうる。ガルマのおぼっちゃん的な言動はここからくるものである。
他方で、それは人を惹きつける魅力にもつながる。
ガルマはシャアからの無線を受けるまでシャアのことを完全に信じていた。一切疑うことはなかった。こうした人を純粋に信じることができる性格はガルマの特筆すべき性質である。
また、ガルマは本当に純粋にジオンのことを思い行動していた。それは最期の言葉が「ジオン公国に栄光あれーっ!」であるところにも表れている。シャアのような腹黒さ、狡猾さとは無縁の人間なのである。
そうしたガルマの純粋で真摯な態度は「ガルマ大佐は我々を信用してくれている」、「決して我々を裏切らない」という絶対的な安心感を部下に与えていたことだろう。
周囲の兵はその言動のおぼっちゃんぶりにヒヤヒヤしつつも「ガルマ大佐はまだ若い、われわれが盛り立てていかねば」と応援していたのではないだろうか。
しかし、シャアにはこうしたガルマの純粋さが「おぼっちゃん」に思えてしまう。それはシャアが本音を内に秘め、常に何かを企み、人を出し抜こうとしているからである。
ガルマとシャアは真逆の性格といってもよいだろう。
シャアには到底到達しえない境地にガルマは立っている。シャアにはガルマの人を惹きつける魅力が見えないのだ。
危機一髪だったホワイトベース
ガルマの特攻は結局失敗に終わった。
しかし、よくよく見てみるとガウがホワイトベースに激突しなかったのはその直前でガウの翼が折れ、急降下したからである。
ブライトは接近するガウを見てクルーに「全員伏せろー!」と指示を出す。この時点でブライトはガウとホワイトベースとの接触を覚悟していたのだろう。
ところが、次のシーンでガウの翼が折れ、ガウは空中で爆散する。
この偶然がなければホワイトベースはガウの特攻を受け撃沈していただろう。まさに危機一髪の状況だったのだ。
第10話の感想
今回はホワイトベースよりもジオン(ガルマ)がお話の中心であった。
シャアはガルマのことを繰り返し「おぼっちゃん」と言っていたが、ガルマはただのおぼっちゃんではない。ガルマがただのおぼっちゃんなら「姉上ぇー」とか「助けてー!」とか言ったりしながら無駄死にしたに違いない。
ガルマの散り際はそれなりにかっこよかった。死を悟ったガルマは「私とてザビ家の男だ、無駄死にはしない!」と自ら操縦桿を握りガウでホワイトベースに特攻を仕掛ける。
「ジオン公国に栄光あれーっ!!!」といって散っていく様は一人の軍人として実に立派である。
第5話で、シャアに助けを求めて叫ぶ無様な最期を見せるジオン兵がいたが、それと比べても立派な最期だ。
今回、ガルマという人間について私なりにかなり考えてみたがいかがだったろうか。ガルマの評価については意見の分かれるところだろう。ぜひ読者の方々のご意見も伺いたい。
さて、ホワイトベースはガルマの追撃を逃げ切りジオンの勢力圏内を抜けた。とりあえずは一安心といったところだろう。
このまま無事連邦軍参謀本部にたどり着くことはできるのか!
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