アムロがガンダムに乗り込んだ理由とは?作りこまれた世界観と緻密なストーリー展開!~機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!!」感想
※「機動戦士ガンダム」第1話はyoutubeのガンダムチャンネルで視聴できる。ぜひ一度ご覧いただきたい。
冒頭ナレーション
冒頭ナレーションによる状況説明から物語は始まる。
宇宙への移民の理由が人口爆発にあるというところにこの作品の時代性が見て取れる。
ローマクラブが「成長の限界」を発表して人口爆発の警鐘を鳴らしたのが1972年。「機動戦士ガンダム」が放送されていた1979年当時は、人口爆発が切実な問題として人々に意識されていた時代である。
現代でも人口爆発は世界規模で見れば喫緊の課題であることには間違いない。しかし、われわれ日本人にとってもっと切実なのは少子高齢化、および、人口減少である。そうした意味で、人口爆発と言われても現代を生きる我々にはあまりピンとこないかもしれない。
コロニーを地球へ落とす!
スペースコロニーを地球に落とすシーン。これで総人口の半分が死亡したというのであるから、人類史上最悪の非情かつ残虐な作戦である。
ジオン軍がここまでの未曽有の被害を生じる作戦を実行した理由は何か?
戦争はただ相手を痛めつければよいというものではない。敵国を全滅させてもその後の復興が大変になるだけだ。必要最小限度の戦闘で最大の成果を得ることが肝要である。
このあたりは今後描かれていくのであろう。
スペースコロニー
描かれているスペースコロニーはシリンダー型のものである。
コロニーの直径は6.4km。前半、コロニーに侵入したザクが降下するシーンがあるが、この時ザクは2〜3キロメートル落下していたということになる。わかりにくいが。
なお、映画「インターステラー」に登場するコロニーもこのシリンダー型である。
アムロとフラウボウ
フラウボウはアムロの家に勝手に上がり込み自由に動き回る。クローゼットを開けて避難の準備もテキパキこなしていく。
他方、アムロは下着姿のまま自分の作業を行っている。好きなことに対してはすべてに優先して没入するタイプなのだろう。この後、砲撃飛び交う戦場でアムロがガンダムの資料を夢中で読みふけるシーンがあるが、同じ意図の演出である。
お節介焼きのフラウボウとマイペースなアムロという両者の関係がここから見て取れる。
おそらくテーブル上のサンドイッチを用意したのもフラウボウなのだろう。で、それを食べずに放置するアムロ。こいつ最悪である。
少年ゲリラー連邦軍の劣勢
アムロの父親とブライトとの会話で少年ゲリラの話しが出てくる。
戦争が始まってすでに9か月ほど。地球にコロニーを落とされ、人口も激減した地球連邦軍。少年ゲリラまで戦場に駆り出される状況である。
ゲリラ戦は劣勢な側が用いることの多い戦術であり、連邦軍の旗色が悪く、戦力の相当数を失っていることを物語っている。ここまでの戦闘で連邦軍がかなり窮地に追いやられていることが伺える。
コロニー内で戦闘に!
デニムとジーンが運搬されていく連邦軍のモビルスーツを偵察するシーン。
功を焦ったジーンの奇襲によって一気に戦闘状態に。といってもほとんどジオン側の一方的な攻勢である。
第1話からこれでもかというくらいたくさんの爆発シーン。よく見ると爆風でふっとぶ人影がはっきりと描かれている。
地面に倒れるたくさんの人々。血飛沫こそ描かれていないが、この物語が描くのは戦争であり人の死であるということがはっきりと示されている。
アムロと父親
アムロの父親はガンダムのことしか考えてない。アムロの問いにも意図的に答えないようにしている。「早く逃げろ」というだけで戦場で右往左往する息子に対する気遣いは微塵も感じられない。
前半のアムロとフラウボウとの会話でも
と親子の会話はほとんどないようだ。
父親が軍人で極秘任務を遂行している立場とはいえ、かなり淡白な親子関係である。
なぜアムロはガンダムに乗り込んだのか。
「ロボットアニメのお約束だから」という説明では私は納得しない。天才・富野由悠季もそんな理由で満足するような人物ではないはずだ。
アムロは「人間よりモビルスーツの方が大切なんですか?」と父に問う。この問を発するの直前、アムロの目の前で連邦兵が爆死し、フラウボウの母親も祖父も死んでしまった。泣き叫ぶフラウボウに対し気丈に振舞うアムロだが、心中は恐怖や絶望が渦巻いているはずだ。もうこんな思いはしたくない。アムロの答えは「人間の方が大事だ」に決まっている。
一方、アムロの父親は「避難民よりガンダムが先だ」といってガンダムの搬送を急がせる。
このセリフからは、血も涙もない冷徹な人物を想像するかもしれない。
しかし、父親がガンダムを優先させるのはガンダムをホワイトベースにあげて戦闘準備をさせるためであり、それはつまるところ人を守るためである。決して人の命をないがしろにしていわけではない。ここはアムロと変わらない。
もっとも、軍人である父親はあくまで軍事行動としてガンダムを運用しようとしていた。ただ、そうするとガンダムをホワイトベースにあげ正規のパイロットが搭乗し出撃するまでには時間を要してしまう。その間にもっと多くの民間人の命が失われてしまうだろう。
多くの命が一瞬で失われる光景を目の当たりにしたアムロにはそんな悠長なことは言ってられない。悲しみ、怒り、恐怖などなど様々な感情がないまぜになったまま、アムロは人を守るために即座にガンダムに乗り込んだのだ。
そこには人よりもモビルスーツを優先させる(ように見える)父親への反発という子供じみた理由もあったことは想像に難くない。
父親の考えも十分理解できる。むしろ中期的、長期的にみればそちらの方が正しい。しかし、子供にはそんな理屈は通用しない。子供にとって大事なのは「今、ここ」なのである。
ここで描かれるのは「大人の論理」と「子供の感情」のすれ違いである。
結局この親子のすれ違いは解消されないまま父親は宇宙へと消えていった。
ガンダム大地に立つ!?
これ、アムロのセリフだったのか...。初めて知った。
タイトルは「大地に立つ」となっているが、立っているのはコロニーの内側なので「大地」と言ってしまうと多少違和感がある。まぁいいか。
動き出したガンダムを見てジーンとデニムが驚いている。ここでモビルスーツ同士の戦闘になるとは予想していなかったようだ。
ライフルを撃ってもビクともしないガンダム。装甲の厚さにジオン兵がビビる。
装甲が厚いだけではない。ザクの口元(?)を鷲掴みにしてぶっ壊す怪力のガンダム。
ビームサーベルでザクを一突きして撃退。
何の訓練も受けていないド素人のパイロットが、説明書を読みながら敵のモビルスーツ2体をあっという間に撃退してしまった。
圧倒的な性能差を見せつけるガンダム。
ここでジオン軍がガンダムを破壊できていれば歴史は確実に違ったものになっていただろう。
「若さゆえの過ち」とは何だったのか?
シャアの「若さゆえの過ち」とはなんだろう。
ジーンが「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」「手柄を立てちまえばこっちのもんよ」と奇襲を掛け、戦闘状態に陥ってしまった。
その結果ジオン軍はザク2体を失っている。
こうした部下の行動を予測できなかったことを言っているのだろうか。
その辺りを考えてみたのが以下の記事である。こちらも是非読んでみてほしい。
第1話の感想
ホワイトベースが連邦軍のモビルスーツを受領するために地球からサイド7へ入港。
しかしシャア率いるジオン軍の戦艦に追跡され、さらに連邦軍が密かにモビルスーツを開発していたことも知られてしまう。
ここで偵察目的でサイド7内に侵入したシャアの部下が功を焦って奇襲を仕掛け戦闘状態に。
偶然居合わせただけの民間人アムロがガンダムに乗り込み、ザク2体を撃破。
ガンダムとジオンとの戦いが始まった!!
正味20分程度の本編で、冒頭ナレーションや登場人物の会話・行動により状況説明を無駄なく行っており、非常に作り込まれたストーリーである。
ジオンが戦争を始めた理由やこれまでの戦況、より細かな設定などは今後あきらかになっていくのだろう。
何気ないセリフからこれまでの戦況や細かい設定をうかがい知ることができる。深読みがはかどる作品である。
第1話こぼれ話もどうぞ。
この記事が参加している募集
よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは動画配信サービスの利用料金、他のクリエイターへの投げ銭にあてさせていただきます!