【こぼれ話002】カイだからこそ見えたものとは?~機動戦士ガンダム 第7話「コアファイター脱出せよ」感想
全方位に顰蹙を買うカイ
こちらの記事でも書いたように、第7話のカイはとにかく全方位に顰蹙を買う発言をし、しまいにはブライトの鉄拳制裁を食らっている。第2話でセイラに殴られてから、5話ぶり2回目である。
上記の記事では「カイのこうした言動があることで、かえってホワイトベース内の団結や連帯、仲間意識を強く印象付けている」とか「居場所がなくなると感じたカイの焦りや未熟さを表現している」と分析した。
これはこれで正しいと今でも考えているが、もう少し深堀りしてみたい。
チームワークが芽生えつつあるホワイトベース
この回はブライト、セイラ、ミライなどのクルーがアムロの作戦を実行しようと団結・協力する回である。その意味で前回第6話のぎすぎすした関係から一歩前進している。
こうした中にあって、カイの発言は「チームワークを乱す」・「士気を下げる」発言として問題があることは間違いない。
協力関係ができることで見えなくなるもの
他方、こうした協力関係が芽生えつつあるチームで起こりがちなのが、決定事項に対して誰も反対の意見をいうことができなくなるという事態である。場の雰囲気を壊してしまうことを恐れて、欠点や実現可能性について指摘しにくくなってしまうのだ。
その結果、チーム全体があさっての方向に行ってしまい、うまくいかないことも世上よく見られる現象である。
ホワイトベースとて例外ではない。今回のアムロの作戦だが、その実現可能性はどれくらいあったのだろうか。
ホワイトベースにはルッグンの監視が張り付いている。孤立状態のホワイトベースから戦闘機が射出されればシャアが見逃すわけがない。追撃されれば多勢に無勢でコアファイターは危機的状況に陥る。こうしたことは当然想定しておくべきことだ。
にもかかわらずクルーは誰もそれを指摘しない。気づいていないのか、それとも気づいているけどあえて口にしないようにしているのか。いずれにせよ誰一人この点を指摘する者はいなかった。
カイだけに見えていたもの
ジオン軍の追撃の可能性を指摘していたのはカイだけだった。
カイ「ホワイトベースから出たら奴らの攻撃を覚悟しといた方がいいぜ」
この発言にアムロは腹を立てて行ってしまった。他のクルーもこれ以上深く考えることはなかった。
他にも避難民を降ろすか否かを議論しているブライトとリードに対し、
カイ「でもよ、食料はどうするんだい?戦闘できない人達が100人もいるんだぜ」
と、きわめてまっとうな指摘をしている。
カイには状況がきちんと見えている。その上で的確な指摘をしている。
カイがこうした事情を指摘できるのはカイが孤立し、集団から浮いているからなのではないか。クルーたちの団結や協力といった「暑苦しい関係」から少し離れた位置にいるからこそ見える景色があるということだろう。
指摘の仕方が未熟
とはいっても、カイのような冷笑的な発言をされたのでは現場の士気がダダ下がりだし、状況が好転するわけでもない。
カイの指摘自体はまっとうだが、問題はその指摘の仕方にある。どう伝えれば角が立たないのか、みんなが受け入れてくれるのかを考えなければならない。
カイはこれができていないのだ。だから指摘の内容は的確でも無用なあつれきを生んでしまうのである。
カイが何歳なのかはわからないが、人間関係についてはまだまだ成長途上のガキに過ぎないということだ。
今後、こうしたカイの未熟さがどのように克服されていくのか注目したい。
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