【こぼれ話005】シャアの「若さゆえの過ち」とは何か?〜機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!!」
「機動戦士ガンダム」に登場する有名なセリフの一つに、シャアの「若さゆえの過ち」というセリフがある。今回はこのセリフの意味について考えていきたい。
このセリフは「機動戦士ガンダム」第1話のラストに登場する。
連邦軍の新造戦艦を追ってサイド7に侵入したジーン、デニム、スレンダーのザク。
彼らの任務は偵察であるにもかかわらず、功を焦ったジーンが奇襲を仕掛けサイド7内でガンダムvsザクのモビルスーツ同士の戦闘が始まってしまう。
報告を受けたシャアは想定外の展開に「デニムに新兵が抑えられんとはな」とつぶやく。
そしてラスト、例の有名なセリフの登場となる。
シャア「認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを」
はたして、シャアの犯した過ちとはいったい何だろうか。
功を焦ったのはシャアも同じ!?
ジーンは手柄を立てたいと考えるあまり、命令違反を犯して攻撃を仕掛けてしまう。
ここでよくよく考えてみると、手柄を挙げてやろうと考えていたのはシャアも同じだったということに気が付く。
シャアはゲリラ掃討作戦を終えドズルの下に帰還する途中、連邦軍の新造戦艦ホワイトベースを発見し、追跡していた。
ガルマ「君はゲリラ掃討作戦から引き続きだったんだろ?休みたまえ」(第6話)
作戦終了後であり武器弾薬も尽きているのにドズルに報告もしていない。
連邦軍極秘のV作戦をキャッチしたのであるから、本来であればホワイトベースを発見した時点で即座にドズルに報告し、応援と補給を要請すべきである。
しかし、シャアがドズルに報告したのはサイド7でザク2機を失ってしまった後。事後報告だ。
シャアがドズルに報告せず単独でホワイトベースを追跡した理由は一つしかない。シャア自身も上司に黙って手柄を立ててやろうと考えていたのだ。
つまり、ジーンもシャアも全く同じことをやっていたということである。
ジーンが命令違反を犯した理由
ジーン「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」
デニム「おいジーン、貴様命令違反を犯すのか?やめろ、ジーン!」
ジーン「フン、手柄を立てちまえばこっちのもんよ!」
「上司への報告は後でいい、とにかく手柄を!」というシャアの行動を見て、部下も「そういう行動原理でいいんだ」といつの間にか誤った学習をしてしまっていた。
そして、連邦軍モビルスーツの破壊という大きな手柄を立てるチャンスを目の前にして、ジーンは「ここで手柄を立てればシャア少佐のように出世できる!」と考え、奇襲に出てしまった。
すべてはシャアから学んだ行動原理に則ったものである。
シャアの「過ち」とは?
こう考えると、シャアの「過ち」とは、部下の暴走を予想できなかったことではないということがわかる。
「過ち」とは、シャアがこれまでとってきた「とにかく手柄を立てさえすればいい」という行動そのものであり、こうした行動をとることで部下に誤った学習をさせてしまったことである。
「若さゆえの過ち」とは何か?
シャアはこれまで自分専用の赤ザクを巧みに操り、数々の戦果を挙げてきた。
ルウム戦役では戦艦5隻を一人で撃破するという功績を挙げ、少佐にまで上り詰めている。「赤い彗星」の異名は連邦軍にもとどろいている。
新米兵士にとってシャアは大きな目標となっていたであろうことは想像に難くない。
しかし、シャアの「とにかく手柄、戦果を!」という行動が他の兵士に対して及ぼしていた影響はシャアに見えていなかった。
それこそがシャアの経験不足からくる未熟さであり、「若さゆえの過ち」である。
シャアはシャア
シャアはこうした自らの「過ち」を認識するに至ったわけだが、、自嘲気味に「認めたくないものだな」というだけで、反省している様子は見られない。
今後もシャアはシャアであり続けるのだろう。