アレルギージャーナルレビュー Feb 2022
最近の報告を中心に総合アレルギー診療関連の論文要旨をお届けします。
<一般誌(NEJM、Lancet、JAMA、BMJ)とその関連誌>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35213105/
中等症・重症喘息を有する黒人およびラテン系成人において,通常のケアに加え,吸入ステロイドとその使用に関する1回限りの指導を行うことで重度の喘息増悪が減少した。
N Engl J Med. 2022 Feb 26
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34861180/
学齢期の喘息児で,過去に最近の入院歴があるか,経口副腎皮質ホルモンの投与が2コース以上ある場合は,COVID-19の入院リスクが著しく高く,ワクチン接種の優先順位が高い
Lancet Respir Med. 2022 Feb
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35189074/
超・中等度早産によりFEV1/FVC比が低下し、喫煙者でのみ関連が有意であった(Tasmanian Longitudinal Health Studyデータ)
Lancet Respir Med. 2022 Feb 18
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35101183/
喘息増悪を起こしやすい小児において、症状指導による喘息治療にFeNOを参考指標に加えても、増悪の抑制にはつながらないLancet Respir Med. 2022 Jan 28
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35123664/
プロバイオティクスの添加は経口免疫療法の有効性を改善しなかったが、特に就学前児童において 経口免疫療法単独と比較して安全性の面で利点がある可能性がある。
Lancet Child Adolesc Health. 2022 Feb 3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34902004/
%FEV1が85%以下の未熟児関連肺疾患において、吸入コルチコステロイド(ICS)と長時間作用型β2アゴニスト(LABA)との併用による12週間の治療は%FEV1 や運動後の気管支拡張反応を改善したが,運動能力は改善させなかった。
JAMA Pediatr. 2022 Feb 1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34870710/
社会的リスクへの介入は、小児の喘息関連の救急外来受診および入院の減少と関連した(メタ解析)
JAMA Pediatr. 2022 Feb 1
<アレルギー・免疫関連誌:JACI, JACI in Practice, Allergy, PAI, JI, CEA, AI, AAAI>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34718211/
GINA2021からの主要な推奨事項と、最近の変更の根拠となるエビデンスの要約:
・成人喘息は短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)のみで治療すべきではない
・軽症喘息において、必要に応じてICS-ホルモテロールを併用することで、SABA単独投与と比較して重度の増悪が60%以上減少し、増悪、症状、肺機能、炎症のアウトカムは、毎日のICSと必要に応じてSABAを併用する場合と同様である
・成人喘息の治療を2つのトラックに分割
トラック1(推奨療法):すべてのステップで低用量ICS-ホルモテロールをリリーバーとして使用し、ステップ1-2(軽度の喘息)では必要に応じてのみ、ステップ3-5では維持用ICS-ホルモテロールを毎日使用する(維持・リリーバー療法、「MART」)。
トラック2(代替療法):すべてのステップで必要に応じてSABAを使用し、通常のICS(ステップ2)またはICS-長時間作用型β2-アゴニスト(ステップ3~5)を併用する。
・中等度から重度の喘息を持つ成人に対しては、GINAはステップ5で長時間作用型ムスカリン拮抗薬とアジスロマイシンの追加投与を、重度の喘息に対しては生物学的製剤の追加投与を推奨。
・6〜11歳の小児については、ステップ3〜4で新たな治療オプションが追加されている。
J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Jan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35147230/
アレルゲン免疫療法(AIT)または生物学的製剤の投与を受けている患者でのCOVID-19ワクチン接種時の推奨事項:現段階の研究結果からは、ワクチン、AIT、生物学的製剤の相互作用よりも、それぞれの安全性や有効性が支持される。
推奨1:アレルゲン免疫療法とコロナワクチン投与の間隔について
皮下免疫療法ではコロナワクチンとの相互作用の潜在的可能性を断ち切るために投与間隔を7日間以上あける。
舌下免疫療法はワクチン投与の3日前に中止し、7日後に再開する。
推奨2:2型炎症を標的とした生物学的製剤とコロナワクチン投与の間隔について
相互作用の潜在的可能性を断ち切るために投与間隔を7日間以上あける。
推奨3:非2型炎症を標的とした生物学的製剤とコロナワクチン投与の間隔について
相互作用の潜在的可能性を断ち切るために投与間隔を7日間以上あける。
Allergy. 2022 Feb 11
ttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35102560/
大麻アレルギーのレビュー:1型および4型のアレルギー反応を引き起こす可能性がある。PR-10やプロフィリンおよびLTPが含まれ、植物性食品に対するアレルギー性交差反応を誘発する可能性もある。大麻は多くの国で違法薬物であるため、研究が妨げられ、検査用の市販の抽出物がないため、診断が難しい。
Allergy. 2022 Jan 31
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35150722/
幼少期にネコやイヌを飼うことで学齢期の喘息のリスクが増加するわけではないが、飼育によりネコやイヌへの感作リスクは上昇する。
J Allergy Clin Immunol. 2022 Feb 9
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35143808/
重症喘息患者の気道平滑筋細胞はライノウイルス感染気道上皮細胞に向かい特異的に遊走したが、非喘息患者の気道平滑筋細胞は遊走しなかった。この遊走はCXCL10/CXCR3-Aに依存した
J Allergy Clin Immunol. 2022 Feb 7
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35149044/
小児における喘息増悪のリスクを有意に増加させる特定の細菌-宿主相互作用についての研究
J Allergy Clin Immunol. 2022 Feb 8
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34763123/
成人重症喘息の治療に影響する因子の解析:バイオマーカー値(血中好酸球数、呼気一酸化窒素分画濃度[FeNO])、臨床的特徴(経口コルチコステロイド[OCS]依存性、重症2型喘息に関連する特定の併存疾患)、および安全性に関する検討が重要。
J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Feb
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35093483/
アレルゲン免疫療法の総説:皮下免疫療法SCITや舌下免疫療法SLITには自然リンパ系細胞の新規制御サブセットの誘導、炎症性Th2・Th2AおよびT濾胞ヘルパー細胞の抑制、アレルゲン特異的Th2細胞の消耗促進などの機序がある
J Allergy Clin Immunol. 2022 Jan 27
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35196534/
特定の腸内細菌群の特徴が喘息児の喘鳴頻度と関連しており、小児喘息の罹患率に腸内細菌群が影響していることが示唆された。
J Allergy Clin Immunol. 2022 Feb 20
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35108605/
SABA の過剰使用は,喘息患者における敗血症および敗血症性ショックのリスク上昇と関連する可能性がある.
J Allergy Clin Immunol. 2022 Jan 30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35181547/
ダニ舌下免疫療法(SLIT)の無作為化比較試験(RCT)の系統的検索結果:7件のRCTの結果をまとめると、ダニSLITの安全性は良好であり、軽度から中等度の思春期・成人のアレルギー性喘息患者の吸入ステロイド使用量減少効果がある
J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Feb 15
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34785389/
喘息患者は喘息でない方よりもCOVID-19に関する懸念や不安が増加しており、特に女性やコントロール不良患者でその傾向が強まった。
J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Jan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35094848/
鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎に対するプロスタグランジンD2受容体拮抗薬fevipiprantの第3b相試験:投与16週目の鼻ポリープスコアのベースラインからの変化量の平均値に介入群と対照群で差はなかった
J Allergy Clin Immunol. 2022 Jan 27
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26619922/
コリン性じんま疹に随伴したアナフィラキシー19例の後方視的解析:79%が女性、平均年齢は27.5歳。100%が高温、89.5%が運動、78.9%がストレスと関連。アナフィラキシー重症度は軽度:11.1%,中等度:44.4%,重度:44.4%
J Allergy Clin Immunol Pract. Mar-Apr 2016
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35092762/
ピーナッツアレルギーモデルマウスにおいて PD-1/PD-L1経路の遮断は、Tfh細胞とB細胞の直接的な相互作用を介してアレルギー反応に対して保護的に働く。
J Allergy Clin Immunol. 2022 Jan 26
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33721370/
小児のアトピー性皮膚炎患者のコホートにおいて、ピーナッツ、卵、猫または犬へのアレルギー感作は、より重篤な疾患および皮膚バリア機能の障害と関連していたが、皮膚炎症のマーカーとは関連がなかった。
Clin Exp Allergy. 2021 May
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35172181/
魚介類によるアナフィラキシーでは病院到着前のエピネフリン使用が不十分
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Feb 13
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35172180/
喘息症状に基づいてステップアップ、ステップダウンするアプローチではなく、治療可能な特性(Treatable traits)へのアプローチをコントロール不十分な喘息の評価と管理にもっと幅広く適用すべき。
このアプローチでは、まず第一に、Th2炎症と気流閉塞という2つの治療可能な肺特性、および禁煙に焦点を当てるべきである。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Feb 13
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35123076/
ペニシリンの皮膚プリックテストおよび皮内テストは妊婦に安全に実施することができる。低リスクと評価された場合,大半の女性は安全に皮内テストができ、や妊娠経過に悪影響を及ぼすことなく分娩中にペニシリンを投与することが可能である.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Feb 2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34543766/
ゴマアレルギーの診断では、ゴマだけでなくタヒーニの皮膚プリックテストや経口食物負荷試験(OFC)をゴマ特異的IgEと組み合わせることによって、より正確に病態を評価できる。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Jan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35093555/
抗喘息生物学的製剤の選択:抗IgE薬、抗IL-5/IL-5受容体薬、抗IL-4受容体薬の直接比較データはまだ少ないが、レトロスペクティブで間接的な比較データや主要な臨床的特徴、バイオマーカー、併存疾患を考慮して生物学的製剤を選択する
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Jan 27
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35093554/
遺伝性血管性浮腫(HAE)における腸内細菌叢の変化:Firmicutesの減少とProteobacteriaの増加が見られる。ダナゾールやトラネキサム酸によりDysbiosisが回復した。疾患の経過予測、臨床治療、治療評価の手がかりになるか。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2022 Jan 27
<その他の雑誌、症例報告など>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35180044/
バイオ製剤を投与されている重症喘息またはアトピー性皮膚炎の患者は、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体レベルが低く、より早い時期またはより頻繁なブースターワクチン接種を検討するべき。(PSL 10 mg/日以上の投与患者さんは除外しています)
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Feb 18
(←それでもバイオを回避する理由にはならないかと個人的には考えます)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35110334/
EGPAの改訂版分類基準(米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会):91の候補項目から回帰分析により11項目が特定され、以下の7項目を利用した。
・最大好酸球数≧1×109/L(+5)
・閉塞性気道疾患(+3)
・鼻ポリープ(+3)
・ANCAまたはPR3-ANCA陽性(-3)
・血管外の好酸球優位炎症(+2)
・多発単神経炎/運動神経障害(+1)
・血尿(-1)
6点以上でEGPAと診断した場合、
検証用のEGPA患者群に適用すると感度85%、特異度99%
データベースからランダム選択したEGPA患者群に適用すると感度75%、特異度99%
Ann Rheum Dis. 2022 Feb 2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35144987/
学童における喘息、鼻結膜炎、湿疹の有病率および重症度に関する世界標準の調査:小児では,喘息と鼻結膜炎の症状の有病率は男性で高く,思春期以降では逆転した。湿疹については、思春期の女性では男性の2倍の有病率であったが、小児では性差はなかった。
Eur Respir J. 2022 Feb 10
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35202621/
コントロール不良の小児喘息患者にアジスロマイシンを使用することで,喘息コントロールの改善と増悪の抑制が得られた.
Chest. 2022 Feb 21
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34543667/
軽症喘息の病態生理的特徴と管理に関するレビュー:軽症喘息は喘息の罹患率と死亡率に大きく寄与しており、今後の研究の焦点となるべき
Chest. 2022 Jan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35218742/
集中治療室への入院が必要な喘息重積増悪時の治療戦略:吸入β2アゴニスト、ムスカリン拮抗薬、硫酸マグネシウムによる気管支拡張と全身性ステロイドによる炎症抑制が重要。ケタミンまたはプロポフォールによる鎮静は、気管支拡張作用が期待できる。
Chest. 2022 Feb 23
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35217003/
重症喘息に対するデュピルマブは経口ステロイド減量効果を維持し、かつ増悪率を低下させ、肺機能を改善した。
Chest. 2022 Feb 22
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35000711/
21歳の男子大学生。α-1アンチトリプシン(AAT)値が低く,喘鳴と咳を伴う息切れを主訴に受診した.喫煙歴はなく,幼児期に気道感染症が頻発し,ダニ,ピーナッツ,卵にアレルギーがあった.AAT遺伝子型はPI∗SZでありヒト血漿由来プールAAT加療が推奨された
Chest. 2022 Jan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35131893/
pMDIベースの維持療法からDPIベースの維持療法に切り替えた患者は、喘息コントロールを失うことなく吸入器の二酸化炭素排出量を半分以上減らすことができた。喘息コントロールは両群で改善され、FF/VI DPIを開始した群ではより大きなコントロールが示された。
Thorax. 2022 Feb 7
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34915496/
メポリズマブを投与した重症喘息患者の後ろ向き評価:12カ月後のsuper-responder率は44.7%。メポリズマブ投与前の経口ステロイド薬定期使用の状況が治療反応性に影響を与えた
Int Arch Allergy Immunol. 2021 Dec 14
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34718799/
COVID-19ワクチン接種後にEGPAによる神経症状が発症した症例報告:COVID-19ワクチンとの因果関係は不明だが、接種後に感覚運動症状や平衡感覚不良を呈する喘息患者では、自己免疫関連多発性神経炎を疑う必要がある。
QJM. 2022 Jan 5
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35135910/
74歳の男性は,4カ月前に喘息と診断された.好酸球増加の主因としてクロピドグレルが疑われ、同薬の中止後,高カルシウム血症を伴う好酸球増加,肺結節,縦隔リンパ節腫脹は改善した.
Intern Med. 2022 Feb 8
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35095536/
粘液栓に好酸球を含む好酸性細気管支炎を呈した31歳男性の症例:粘液栓の中に豊富な好酸球とシャルコーライデン結晶、細胞溶解性好酸球が観察され、EETosisの発生が示唆された。ベンラリズマブによりステロイドが減量できた
Front Pharmacol. 2022 Jan 13
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35106445/
EGPAの初発症状として非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)を呈した1例
Eur Heart J Case Rep. 2022 Jan 19