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センチメンタルとノスタルジック

10代の頃、マンチェスターに留学していた。

その日は、Flaming Lipsのライブがあった。開場時間より早く着いたため、イヤホンで音楽を聴いて、バス停のベンチに腰掛け時間を潰した。一台のバスが停まった。乗客がいないと判断し直ぐに発車、何気に去りゆくバスを眺めていたら、一番後ろの席に座っていた、自分と同じか年下ぐらいの白人の少年に中指を立てられた。彼が私を睨みつける。碧い眼差しは、純粋に白人がアジア人を嫌悪していると認識できるものであった。

ライブ終了後、夜遅く、いつも乗るバスの路線が無く、一番家に近そうな場所に停まる路線に乗り込んだ。そして、それらしい場所に降りた。初めての土地、地理感覚は心許なく、暗い道。
少し早歩きになって家路を急ぐ。すると、いつの間にか並んで歩いていた黒人男性に突然話しかけられた。

”HEY YO!”

身長は190cmはありそうだ。アフリカ系の黒人とのマンツーマン初体験の私はびっくりして一瞬硬直した。わけもなく、やっぱ田臥勇太すげー、と思ったりもした。
「パブで飲んでてバス無くなって家まで帰るんだけど、一緒にキャブ拾って、費用は割り勘、相乗りしない?」と彼は続けた。
正直かなり警戒した。しかし、好奇心の方が勝り、彼の提案を受け入れた。

キャブを拾い乗り込んだ。

「本当に割り勘してくれるのか?」
「相談もなしに運ちゃんに指示出してる・・・彼の目的地に先に行くってどういうことよ?」
「でけーなー・・・うぁ、貧乏ゆすりしてるよ」

そうこうして10分程走り、彼の目的地に到着した。そして、きっちり割り勘分支払ってくれた。
別れ際、複雑なハンドシェイクが上手くできない私に、おどけて真っ白な歯を全面に出し、彼は去って行った。


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