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1210_介護と仕事
「入ります」
「では、はい。こちらへ、どうぞ。よろしく。今日の面談で、色々話を聞きたいと思っていまして」
「わかりました。端的にお伝えすると、私の部署替えをお願いしたいんです」
「今の部署での勤務が難しい事情があるんですか。不満だとか、あったりとか」
「不満があるわけではないです。親のことで懸念事項がありまして。地元に今母親1人で住んでまして、一昨年くらい、目が悪くなり出したんです」
「目ですか」
「加齢性黄斑変性という病気で歳を取ることによって視力が落ちていくんです。毎回レーザーをあてて手術をするので、私もたびたび帰省して、手術に付き添うのですが」
「それはまた」
「加齢が原因なので、根治ができないんですね。対処療法をし続けなければどうしようもない、っていう。言ってみれば、このままいけばどのみち目が見えなくなってしまう」
「目は怖いですね、なにかあったら」
「そうなんです。やはり、目が悪くなると転んだりして怪我するとまずいので。あと、目が悪くなると、認知能力もどんどん下がっていってしまう。今はまだ、車の運転だとかもできますが、いずれ目が見えなくなると、身の回りのことは何もできなくなって介護が必要になります」
「介護かあ、そうなりますねえ」
「よく、今後は仕事と介護の両立支援を積極的に行っていくって、言ってくださってるじゃないですか。正直、母親はいつそうなってもおかしくないとみています。それをなんとか遅らそうとして、しょっちゅう様子を見に月一で帰省したりしていますが、正直東京から岐阜への往復はなかなか体力的にも経済的にしんどいものがあります」
「それで負担の少ない部署に替えて欲しいと」
「仕事に迷惑をかけるわけにもいかないので。なんとかなりませんか」
「事情が事情ですからね。人事に話してみましょう」
「よろしくお願いします」