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1139_話半分
頭の中で声がするだろう。脳はおしゃべりや独り言が得意だ。そして、好むと好まざろうとも、そのおしゃべりは全自動で止まらない。
「ここはこうした方がいい」
「この前はこうだったから、こうなるだろう」
「こういう奴は大抵、こんな感じだ。だから付き合わないほうがいい」
左脳は大抵は何か新しいことをしようとする時とか、挑戦しようとする時、ある種無謀な策にでも打って出ようとするとき、自分のストッパーとして働いてくれるので、理性的な役割を果たしてくれたりする。事実、理屈っぽくて、常に自己正当化するための理由(言い訳)も欠かさない。
しかし、ここにおいて、こいつは小利口で小うるさいなのが玉に傷である。心配性で極めて悲観的で、しかも、いつも言ってることが正しいとは限らない。たまには、コイツのお喋りスイッチを切ってしまいたい時も出てくるだろう。
なにしろ、同じことしか言わない。でもそれも仕組み上仕方ないことだ。なぜなら、あなたがこれまで経験したことや感じたことに基づき、頭の中である種固定化されたストーリーが形作られる。左脳はそれを、壊れたラジオのように繰り返すことしかできないからだ。
それは脳の仕組み上仕方ない。左脳に突飛なアイデアやイノベーションの助言を求めようとすることは酷なのだ。それは右脳の役目である。左脳は左脳にできること、求められることをやっているだけなのだから。
左脳の喋ることを書き換えたり、更新するためには、一旦左脳の言うことを無視して、新しいことに挑戦してみるしかない。
そうすると、左脳は「そうそう。それ、こうした方がいいって、私も知ってるんですよ」としたり顔でまたおしゃべりしてくるようになるだろう。
まるで自分がそうしろ、と言ったかのような顔をして。仕方ない、こういう奴なんだ、左脳って。許してやってほしい、彼も君の役に立とうと思って必死なんだ。だから、左脳の言うことはせいぜいいつも話半分で聞いておけばいい。