【現代文の地図】第1講 読解の「読」①抽象&具体
「現代文が苦手」をこの世からなくす!を目標にYouTubeやこのnoteで情報発信をしているヤマモト健太です。
YouTubeで発信している情報を、noteで文字としても残して置くことで、ウェブで勉強法を調べている受験生の子やその親御さんなどの目にも触れられるかと思いますので、書いていきたいと思います。
私がこのような活動を行うに至った経緯や考えはこちらの記事をご覧ください。
今回から具体的な内容へ
第0講を読んでない方はまずそちらへ!
今回から具体的に内容に入っていきます。
もし前回の第0講をご覧になっていない方は必ずそちらの記事を読んでから今回の記事を読むようにしてください。
読解の「読」①抽象&具体
今回扱うのは読解の「読」の「読むための道具」の一つ目、「抽象&具体」です。
5つある読むための道具の中でも、毎回必ず意識するものです。
5つの「読むための道具」の中には、文章によっては中には使わないものもありますが「抽象&具体」を使わないことはありません。
ちなみに今回の内容の動画はコチラになりますので動画再生が可能な環境にいる方は、ぜひ動画をご覧いただけますと幸いです。
そもそも抽象&具体とは?
抽象&具体の定義
そもそも抽象&具体とは何なのでしょうか?
その定義について見ていきたいと思います。
抽象…事物や表象をある性質・共通性・本質に着目し、それを抽(ひ)き出して把握すること
具体…形や内容を備えていること
「果物は甘い。」
「りんごは甘い。」
「みかんは甘い。」
「ぶどうは甘い。」
この場合「果物は甘い」という文が「抽象」で、それ以外の文が「具体」になります。
簡単に言うと、「例えば」などの言葉の前にくるような内容が「抽象」で後にくるのが「具体」になります。
それぞれ抽象から具体への流れを具体化、具体から抽象への流れを抽象化と呼びます。
このような簡単な文であれば、誰しも理解はできると思います。
しかし入試問題ではもっと難しい内容になります。
「私たちは今、不安の時代を生きている。」→抽象
「原発事故や大規模な地震や大雨による災害がいつどこで起きるかもしれないという不安、大気、あるいは…。」→具体
これは実際に同志社大学で過去に出題された文章の冒頭ですが、これらも抽象と具体の関係になっています。
具体部分で「不安」の内容が挙げられているわけです。
簡単に言うと
抽象…まとまっているもの
具体…細かく説明しているもの
このように考えておけば十分です。
なぜ抽象&具体が大切なのか
ではなぜ抽象と具体が現代文の読解において大切なのでしょうか。
大切な理由①筆者の主張は抽象部にある
現代文において筆者の主張を掴むことが大切であるということは、第0講でもお伝えしました。
その筆者の主張は抽象部にしかありません。
具体の部分は筆者の主張にならないわけです。
現代文で本文に線を引くかどうかというのはよくある質問ですが、基本的には抽象部分に線を引いていくことになります。
文章の大事な部分(=筆者の主張)である抽象部分に線を引いておくことで、設問と本文を行き来する際に目印となり、無駄な時間が省けます。
抽象部分に着目できるようになれば、筆者の主張にそれだけ近づくことになるため、抽象と具体を学んでおくことは大切になります。
大切な理由②文章は抽象→具体で展開していく
文章というものは1文目よりは2文目、2文目よりは3文目というふうに、抽象→具体に展開していきます。
それは文章単位だけでなく、段落単位や文章全体でも同じです。
これを知っておくことによって、どういった形で役に立つのかというと、分かりにくい部分があっても、「後ろで説明されるはずだ」と思って読み進めることができるのです。
このような「分かりにくい部分と出会ったときにどうするか」という引き出しを一つでも多く持っておくことは現代文においてとても大切です。
現代文の得点が安定しない人が陥っているのは、「読める文章の時は点数が取れて、読めない文章の時に点数が取れないという状態」です。
現代文の得点を安定させるために必要な要素こそが、読めない文章への対策をいかに多く持つか、ということになるのです。
今回の「抽象&具体」だけでなく、これからも何度もこのような形で難しい内容に出会った際にどう使えるかといった着眼点で説明することがありますが、是非意識しておいてください。
大切な理由③予測・推測ができるようになる
抽象部が理解できた場合、具体部は予測することができます。
例えば、先ほどの「果物は甘い」という文であれば、誰でも理解できると思います。
するとその後に「りんごは…」ときた場合、「どうせ甘いんだろうな」というふうに内容を予測することができます。
現代文において予測という要素は速読するために必要不可欠です。
現代文の悩みとして多いのが「制限時間内に間に合わない」ということです。
それを解決するためには「速読」は避けては通れません。
では「速読」とはどういった読み方のことを言うのでしょう。
「速読」には2種類あります。
1つが物理的な処理速度を上げた速読。
もう1つがメリハリをつけながら読む速読。
物理的な処理速度に関しては、一朝一夕で身につけられるものではありませんし、受験勉強を続けているうちに自然と身についていくため意識する必要はありません。
しかし、もう一つのメリハリをつけるという速読に関しては、意識しないと全くできませんが、逆に意識さえできれば今日からでもできるようになります。
現実的に「速読」を考える場合、このメリハリをつけた読み方というのが基本になってきます。
メリハリつけた読み方、とは言い換えれば、集中してしっかり読む「強」の部分、さっと読み流す「弱」の部分に分けて呼んでいくことです。
文章のすべてを同じ圧力で隅から隅まで読んでいると、とても時間がかかってしまいます。
しかし、読み流す部分があれば大幅に時間を短縮できます。
先の例で言えば、「果物は甘い」という内容が「強」の部分になり、それ以下の「りんごは甘い」、「ぶどうは甘い」、などの部分が「弱」の部分になります。
「弱」の部分である具体部分は読み流すことが可能になります。
抽象と具体における「予測」というのはこの「速読」に直結する大切な能力になるわけです。
しかし「予測」することができるのは抽象部分が理解できた場合だけです。抽象部分が理解できなかった場合はどうするべきでしょうか。
その場合は、具体をしっかり読んで具体内容から抽象内容を逆算すれば良いのです。
これが「大切な理由③予測・推測」でいう「推測」です。
実際の入試問題では抽象部分の内容は難解なことが多く、すぐに理解できない場合の方が多いです。
そのため、具体例をしっかり読んで、抽象部を推測するという方法は頻繁に用いることになります。
わからない部分をどれだけ読んでも分かりません。
そこで立ち止まるのではなく、分かる部分から推測する癖をつけましょう。
抽象と部隊の使い分け
それではより細かく「抽象」と「具体」の使い分けについて見ていきましょう。
以下の2つのパターンで考えます。
①抽象が難しい場合
②抽象が分かった場合
①抽象が難しい場合
抽象部分が難しい場合は、具体から抽象の内容を逆算します。
先にも述べたよう、に抽象部分は難しい場合がほとんどです。
その場合、具体部分を使って逆算していくことが基本的な戦略となります。
具体部分は「例えば」などで分かりやすく例が挙げられている場合だけではありません。
文章は「抽象→具体」に流れていくのだという点を利用して、次の文、そしてすぐまた次の文という風に、どんどん具体化されていく内容をもとに抽象部分を推測するようにしましょう。
1つ例を見てみましょう。
(抽象)言語は恣意性を持っている。
(具体)例えば、「りんご」は「りんぎ」でも「りんぐ」でも良かった。実際、英語ではappleだ。
この抽象部分は「恣意性」という言葉がわからなければ全く理解できない文です。
※「恣意性」というのは受験生にとっては覚えておくべき単語ですが、今回はわからないという設定で進めます。
このような場合、後に続く具体部分を見て、内容を予測してみるわけです。
抽象部分は「恣意性」という言葉が分からなくても、「言語」について述べられている文であることは分かります。
もっと言うと、「言語」というものが「ある性質を持っている」、そのような内容であるはずです。
そう考えながら、次の文を見ると、「りんご」という言葉について説明されています。
この内容から推測できるのは「りんご」という言葉はそれが刺す物体(赤くて甘いあの果物)を指すが、その呼び方に絶対的な理由はない、というようなことを言ってそうです。
確かに英語では「り」、も「ん」も「ご」も使わずに、全く違った表現で同じものを指しています。
このような具体例の内容から「恣意性」という言葉を予測することができるわけです。
実際の「恣意性」という言葉の意味は「言語記号の音声面と意味内容との間には自然な結びつきが存在しないこと」という意味です。
完全に一致はしていませんが、かなりいい線まで行っていることが分かります。
このように不明な部分を分かる部分から予測することができるというのが抽象と具体の現実的な使い方です。
②抽象が分かった場合
もう一つのパターンは抽象が分かった場合です
この場合は具体は読み流してもOKです。
(抽象)日本人は優柔不断だ。
(具体)例えば、レストランでメニューを決める時も…
この場合の抽象部分は理解しやすいため、その後に続く「例えば」以降の具体内容は「どうせレストランでなかなかメニューが決められないんだな、優柔不断なんだな」というふうに予測することができます。
内容が予測できる以上、この具体部分を深く読む必要はなく、読み流せばよいのです。
ただし、この「読み流す」という部分に関しては、注意をしておいてほしいことがあります。
それは、決して「読み飛ばす」というわけではないということです。
では「読み流す」ことはOKで、「読み飛ばす」ことはNGなのでしょう。
設問では具体部分に関して問われる場合があります。
その場合、読み飛ばしてしまうとどこで出てきた内容なのかが分かりません。
読み流しであれば、駆け足で駆け抜けながらも目には触れています。
一度目に入れておけば、「あの辺りにあったな」という形で場所にあたりをつけることができます。
細かい部分まで見る必要はありませんが、完全には読み飛ばさないようにしておいてください。
抽象を深堀りしよう
ここではもう少し抽象について見ていきましょう。
筆者の主張は繰り返される
筆者の主張が抽象部分にあることは上でもお話ししましたが、筆者の主張は文章全体を通して一貫して変わりません。
そのため、結果としてその表現に違いはあれど同じ内容を繰り返して述べます。
つまり、筆者の主張を掴むことができればその文章は読めたも同然です。
ただし、筆者の主張が「一つの文」ですべて示されるとは限りません。
受験生の中には「筆者の主張はどの文だ?」と必死で主張を表す「1文」を探す人がいますが、内容を読みつないでいった結果、はじめて主張を導き出すことができる場合も多々あります。
あくまで意味内容としての「筆者の主張」を考えるようにしましょう。
難しい抽象部は言葉の関係性を掴む
先ほど、抽象が難しい場合は具体から逆算しましょうという話をしましたが、具体からも逆算できない場合はざらにあります。
その場合はどうすればいいのでしょうか。
そのように具体からも内容が推測できない場合は、言葉同士の関係性を掴むだけでOKです。
◯◯◯とは△△△△だ。
という文があったとして◯◯◯も△△△△もよく分からないとします。
そして、後に続く文を読んで、内容を逆算しようと思いましたが、さっぱり分からない。
そういう場合は最終手段として、とりあえず関係性を掴んでおくだけでOKです。
この場合であれば、「◯◯◯」と「△△△△」はイコールなんだ、とその関係性だけを掴んでおくわけです。
問題で「◯◯◯について正しいものを選べ」という問題があった場合、この関係性がつかめていれば問題に正解することができます。
意味が分からなくても△△△△について説明されているように見えるものを選べばよいのです。
もちろん、内容が正確につかめることが理想です。
しかし、難解な文ではそう簡単にはいきません。
関係性を掴んで、そのままゴリ押しして進んでいきましょう。
具体を深堀りしよう
最後に具体を深掘りします。
ここでは具体の仲間を2つ紹介します。
具体の仲間①比喩
「比喩」とは別の物事で例えて説明することです。
比喩の中にもたくさん種類があるのですが、ここでは直喩と隠喩だけ見ておきます。
直喩(ちょくゆ)…「たとえば」「ごとし」「ような」など、はっきりとした比喩であることを示した言い方。
隠喩(いんゆ)…言葉の上ではたとえの形式をとらない比喩。(例「彼の笑顔は太陽だ」)
大切なのは比喩の種類ではなく、比喩見つけたら何の例えなのか必ず考えながら読むということです。
例えているということには、何らかの理由があるはずです。
何を例えているのか考えるようにしましょう。
具体の仲間②引用
引用とは、個人の言葉や他人の言葉文章説や事例などを自分の文章の中に引いて説明に用いることです。
引用というのはほとんどの場合が、筆者が自分と同じ考えだから引用するのですが、自分とは異なる意見として引用される場合もあるので注意しましょう。
この引用を発見したときには、筆者の考えと同じなのかどうかを確認し、具体例として処理しましょう。
具体例として処理するというのは、抽象部がわからなければ逆算するために使い、抽象部が分かれば読み流すという意味です。
まとめ
最後にまとめの画像を貼っておきます。
現代文で文章を読む際に、抽象と具体を意識しないことはありません。
必ず常に意識し続ける必要があります。
抽象と具体を自由自在に使いこなせるようになると、文章を読むのが一気に楽になります。
必ず理解しておくようにしてください。
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