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トヨタ流開発ノウハウ|設計者のためのテクニカルマガジン

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トヨタの設計には、競争に勝ち残れる考え方やノウハウがあるのです。このコラムではそれらを1つひとつ紐解(ひもと)いていきたいと思います。
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今後の日本の製造業が進むべき道|トヨタ流開発ノウハウ 第34回

◆一年を終える前に 皆さんは、この今年1年間はいかがでしたでしょうか? 今までにない変化があった年であり、さまざまなことを考えさせられる1年になったと感じます。 今年1年を振り返り、今後日本の製造業もしくは設計者が進むべき道を考えていきたいと思います。   今年はさまざまなモノが値上げラッシュとなり、多くの企業が苦労した年であったと同時に日本の製造業が世界に比べ、落ち込んでいるとの報道も多く耳にされたのではないでしょうか? 自動車であれば、EVの推進が遅れており、海外の

開発と設計の役割と責任|トヨタ流開発ノウハウ 第31回

◆それぞれの役割と責任 皆さんは、開発と設計のそれぞれの役割と責任や移行のタイミングなどに悩んでいることはありませんでしょうか? 実はこの2つの機能組織部門の境目を設定するのは、非常に難しく、いつまで経っても開発部門から設計部門に業務が移管できない、また、設計部門がいつまで経っても案件に着手できないなどの問題が発生しているのではないでしょうか。 製造業であれば、必ずこの問題が発生していて、開発者、設計者が業務の進め方や連携について、悩んでいるのです。 この問題を解決す

正しい技術伝承とは?|トヨタ流開発ノウハウ 第16回

皆さんの会社では技術伝承の仕組みはあるでしょうか?   今までの日本の製造業での技術伝承は・・・ 「俺の背中を見て身につけろ!」 「図面の描き方を見て、ノウハウを盗め!」 のように、主に技術伝承される側が技術ノウハウを身につけるために、何かしらの行動をしてきました。   また、技術伝承をする側からOJTを受けるなどして、技術伝承している気になっている会社組織がほとんどです。 もちろん、今までのやり方を否定しているわけではありません。 「技を盗む!」といった考え方

今こそ部品メーカーが身に着けるべき能力とは|トヨタ流開発ノウハウ 第2回

今の時代の様々な製品を見ていくと、単一機能の製品はほとんどなく、多くの機能を有し、さらに複雑な構造をしている製品が多くなっています。さらには、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアが絡むとより一層複雑になっていっています。 その様々な機能を有している製品を1社のみで設計&製造している会社は少なく、製品メーカーと協力会社が一体となり、設計、製造しているのです(読者の皆さんにはすでに分かり切っていることだと思います)。 自動車は最たるものですね。自動車産業が創設された時から、すで

なぜ儲からないのか|トヨタ流開発ノウハウ 第3回

原価企画で利益をつくる受注生産の企業では、顧客から要求された仕様を満足させるために、自社の標準製品(カタログに掲載しているような標準品のこと)をカスタマイズし設計をしていると思います。その時の見積もり金額算出方法の多くは、カスタマイズを考慮した積み上げ原価に利益を上乗せした上で、製品価格としていることが多いのです。 この製品価格の算出方法で、顧客からの減額要求があった場合に、何によって減額を認めているのかというと、多くの場合は利益を削っています。理由は簡単です。減額の要求に

設計戦略と購買戦略|トヨタ流開発ノウハウ 第4回

近年半導体を含め、多くの電子部材の難入が続いています。原因は半導体需要と供給のバランスが崩れていることにありますが、資本力のある会社による買い占め(必要以上の在庫を抱えてしまっている)も原因の1つでしょう。このような状況の中で今後どのように設計を進めていけばいいのでしょうか。 私は設計戦略と購買戦略の連動が最も重要ではないかと考えております。多くの製造業の設計組織と購買組織の連動は、ほぼ出来ていない状況にある思います。設計が選定した部材の情報を受けて、購買が販売計画から在庫

トヨタ自動車最強の秘訣|トヨタ流開発ノウハウ 第5回

トヨタ自動車の強さの秘密を探ってみましょう。 コロナ禍でありながら、第2四半期の決算説明会では、販売台数、売上、利益ともに上方修正を行い、他の自動車メーカーが苦しんでいる中、1人勝ちの様子を呈しています。 なぜこのように他の自動車メーカーとの違いが出ているのでしょうか。約10年間トヨタ自動車に在籍した筆者が内部での業務プロセス、組織風土などを考えながら、強さの秘密を探っていきたいと思います。 1.金太郎飴の人材  先日、トヨタ自動車を退職し、他の会社に転職した方の講演があ