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金融のコアの世界とDeFi (#web3)

ここ2か月ほどweb3, メタバース、DAOなどについてのnoteを書いてきたが(以下のnoteマガジンにまとまっています)

こちら自称金融マーケットインフラ・オタクである。たとえweb3の話であっても、金融やDeFi(Decentralized Finance - 分散型金融)の世界などが本丸であり、そちらについて触らずにオタクの名を語り続けることはできないと思うので早速飛び込んでみることに。ただ今回の分析については一般論ではなくあくまでも僕の持論なので賛成意見、反対意見出ると思われる。ただ反対意見を恐れて自分の意見が言えなくなったら、これからの個が強い世界で生きていけないので勇気をもって書くことにする。

またweb1, web2, web3などの用語も出てくるので必要な人はこちら(「で、Web3って何よ?(金融マーケットインフラ・オタクの観点から)」)で復習できます✌。

web1/2/3概念図:mimi-channel (https://mimi-channel.com/web3/)より

今の金融のコアはweb1?

さて金融の話をすると言ったがあくまでも僕の専門は金融マーケットインフラなので、金融市場、コーポレートバンキング、トランザクションバンキングなどのエリアに近い。この金融のコアとも呼べる世界の現状というのがJPX(日本取引所グループ)のブロックチェーンの実証実験の時の書類に良く描かれている。

その中の「約定照合業務におけるブロックチェーン(DLT)適用検討」の資料の中にこのような図がある

約定照合業務におけるブロックチェーン(DLT)適用検討(JPXワーキングペーパー)

こちらは例えば証券会社(上の図では「セルサイド」)と資産運用会社(上の図では「バイサイド」)が取引を約定した後に取引の照合というプロセスがあり、そこの問題は

・各社がバラバラのデータベースを持ち
・そのデータベースは共有されておらず
・システム同士の互換性もない

そしてその情報の照合(マッチング)のプロセスがあまりにも複雑なのでこのようなブロックチェーンの実証実験が2017年~2020年(とても最近)まで行われていたのである。

個々のデータをどこかからread-onlyで発信している姿(そして金融なのでその情報に対して「照合」というプロセスが走る)というのはまさにweb1の世界である。この取引照合のプロセスが特別このような姿、というわけではなく、現存の大半の金融のコアのフローではまだこの実証実験されたブロックチェーンや他の共有情報データベースのようなものは稼働しておらず、まだまだ個社が取引・トランザクション情報を持っている状態なので大半のフローはまだまだweb1状態であるといえる。

今の状態を図にするとこんな感じで、

金融のフロー、上原流世界観の図①

web1に主にある金融の世界が、クラウドやブロックチェーンの技術を活用して1つの正のデータを見られるweb2の世界観に行けるのである。

ここで「あれ?ブロックチェーンってweb3の技術じゃなかった?」というのは良い質問。

・分散されて
・中央集権がない

なんていう世界になればweb3に近いが、現在の金融でのブロックチェーンの使い方にはガバナンスやコンプライアンスの理由で中央集権(たいていの場合はオペレーター、そのプラットフォームを運用する会社)が存在するのでそれはブロックチェーンの技術を使っていたとしてもweb2の世界である。

さらなるweb2化

あれ?金融ってほとんどがweb1?それでは将来的に厳しくない?なんていうのももっともな質問である。ただ、そこにも答えがあり「既存のフローがほとんどweb1」なのであり、そしてそのフローをweb2へ持っていくのはかなりの労力を要するのであるが、それであればクラウドやブロックチェーンを活用してゼロからデジタルなフローを作ってしまえば良いという取り組みもあり、それこそがSTO(セキュリティトークン)のエリアやデジタルエクスチェンジの設立などで起こっていることである。

・既存のデジタルでなかったフローのデジタル化ではなく
・金融商品の発行からデジタル・クラウドネイティブな形でスタートすれば、発行、流通、決済までデジタルで完結できる
・その新しい商品のフローは最初からweb2の双方向性を持たせることができる

セキュリティトークンそしてデジタル・クラウドネイティブな金融のフローの構築については三菱UFJ信託銀行のprogmatの取り組みが分かりやすい。

こちらにコンセプトペーパーも存在する。そしてこのようなプラットフォームが乱立するのが、まさに「プラットフォーマーの世界」でありweb2の世界である。

先ほど「既存の金融のフロー」の図に「デジタル・クラウドネイティブな金融のフロー」を足して拡張すると、以下のような図になる。

金融のフロー、上原流世界観の図②

既存の金融のフローのweb2化が進むなか、並行してデジタル・クラウドネイティブな金融のフローの構築が進むといった絵である。

いよいよDeFi登場

さて、ではいよいよDeFiの話であるが定義としては

DeFi (Decentralized Finance - 分散型金融)
暗号資産関連の取引を
スマートコントラクトを活用し
・中央集権的仲介者なしで(「トラストレス」とも呼ばれる)
・自動的に行う金融サービスやアプリケーション

以下がDeFiと現存の中央集権型金融(CeFiとここでは呼んでいます)を比較した概念図です。

現在DeFiで動いている金融サービスで多いものは以下のカテゴリーである。

借入、貸付(レンディング)Compoundなどが有名なサービス
交換(トレーディング)、DEX(Decentralized Exchange)Uniswapなどが有名なサービス

各DeFiのプラットフォームの構造などに関してはここで説明すると長くなってしまうので、このあたりのレポートを見るとかなり理解できる。

(👆の日本総研の資料は13ページとコンパクトでDeFiの特徴などについて学べます。)

(こちら株式会社クニエの報告書でフルバージョンは160ページと膨大であるがDeFi のサービスとそのコンポーネントについてとてもよく理解できる。)

既存の金融のフローとDeFiの関連性

では新しく出てきたDeFiですが、良く出てくる話が「DeFiが現在の金融のすべてのフローを置き換えるの?」。そこはそうは思わない。「自由度が低い vs. 自由度が高い」などの作られている世界観の差で良く語られ、それが将来的に融合するか、などの話になるがその世界観の差というのは大元の哲学の差なのでそれが完全に埋まる絵というのは現時点では見えない。

現在の金融 vs. DeFiの世界

では融合しない新しい世界と現在の世界の関連性とは?ということだがそれはパラレルワールドで
・行き来もできるが
・どちらかの世界がどちらかの世界を飲み込むことも融合することもない

という世界観。今まで書いてきた「既存の金融のフロー」「デジタル・クラウドネイティブな金融のフロー」にさらに「分散し、トラストレスな金融のフロー」を書き足すとこのようなイメージになる。

金融のフロー、上原流世界観の図③

「あれ?では現在の金融の世界は待ってもweb3に行かないの?」などという質問も出てきそうである。どうだろう?このパラレルワールドが存在して

・ヒトがどちらの世界にも行くことができて
・その世界は直接干渉していることもあるけど独立していることもあり
・お互いの世界でのアイデンティティは共有することは必須ではない

などというのは実はまさにメタバースの一つの外見、一つの性格、一つのコミュニティにヒトが縛られない世界感であるので、そういう意味では金融の将来の答えはすべての取引がDeFiになることでは全くなく、今でも既にweb3の世界観になっているのかもしれない。

さて、その融合することがないパラレルワールドの中で「ステーブルコインが果たす役割」なども面白いトピックであるがそこもカバーするととても長くなってしまうので次にとっておこうと思う。

自分達の活動:金融の情報の工場

せっかく自分の専門エリアにも関わるところの話だったので自分の仕事にも繋いでみようと思う。自分達はweb1 / web2 / web3などという定義が始まる前より「分散される世界観や金融のシステム」「分散した情報をヒトにわかりやすく届け行動を促す手法」などを意識しながらSymphonyのプラットフォームを作り、展開をしている

・エンドツーエンドの暗号化で安心してデータを扱い共有できる仕組み
・オープンのAPIを持ちどのようなシステム、プラットフォームでも接続可能
・チャットやチャットボットを簡単に作れるフレームワークで、ヒトとヒト、ヒトとアプリ、ヒトとデータを繋げる仕組み

プラットフォーム上でヒトと機械(ロボット)が協業できるあたかも「金融の情報の工場」のようなイメージである。

金融のフロー、上原流世界観の図④

web1の世界のマニュアルの作業が多い世界を機械(チャットボット)などが自動化しているユースケースも存在するし、web2の世界でも各プラットフォームとヒトを繋ぐことも可能だし、パラレルワールドのDeFiの世界との橋わたしにもなれると思っています。どう?楽しそうな仕事でしょ??

そんな「金融の情報の工場」コンセプトももっとお話ししたい人がいればご連絡ください。既に発表されている日本でのケーススタディなども共有しておきます。

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