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(金融)AWS re:Invent ② JPモルガン:リスク管理システムの近代化
AWS re:Invent (リンク) のカバレッジ第二弾はJPモルガン。オンデマンドで見れるセッションは「How JPMC modernized its core risk management platform」。Michael Elliott (JPモルガン)、Ionna Nistoreanu (JPモルガン)、Oli Leach (AWS)がステージに上がり、JPモルガンがとてもクリティカルなリスク管理システムのAthenaをどの様にクラウドに移行しているか、という壮大な話。
やはり徹底なエンジニアの内製化
以下のスライド、ほーやっぱりJPモルガンすごいスケールねー、なんて見ていると
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/67573995/picture_pc_bcf392e3a6c8d3fda75ba3cdb626a653.png?width=1200)
中にさらっと出ている数字の一つが
・50K+ Technologists
えーと、Kは千なので50K+が、、、、5万人以上!!エンジニア(「Technologists」とだいたい同意義とらしていただいて)5万人以上ですよ!!!日本の金融IT最大手の一つNRI(野村総合研究所 - リンク)のグループの社員数がおよそ1万3千人なのでおよそその4倍!!このシリーズ①のゴールドマン・サックスでもこの話から出ましたがやはり徹底的な内製化でそこからスタート。
リスク管理システムとは?
さて、ここの話題のリスク管理システムのAthenaであるが、金融に関わっていない人はもちろんのこと関わっている人でもリスク管理システムはあまり触ったことがないかもしれない。
ただ金融の役割を考えてみると「お金を動かしている」と見えがちだが、それは表面的な見え方で実際には色々なリスクに対して価格付けをして、自社もしくは顧客がリスクを取ることによる(もしくはリスクを回避することによる)対価を提供しているのである。なので金融でのすべての取引(またはトランザクション)前には常にリスクの評価がされることであり、それをつかさどるリスク管理システムというのは金融の最も大事な「脳」であると考えられる。
JPモルガンのAthenaも巨大なシステムでJPモルガンでの市場でのすべてのトランザクションが記録されており
・Trade processing
・Pricing
・Structuring
・Signal generation
・Idea generation
などの機能があるとのこと(図②参照)。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/67635975/picture_pc_cb6fa90bf58a10727f021b16965c91da.png?width=1200)
そして150人のエンジニアがこのプラットフォームのコアフレームワークを構築しており、4,000人の開発者たちがこのプラットフォームを活用してビジネスのアプリを開発している。まさに「脳」を活用して、その上に手足や体を作っているイメージである。このnoteの最後にもAthenaまた金融のリスク管理システムについて読める記事のリンクを張っておいたが、まさにこのリスク管理システムにより金融機関全体のリスクなどがリアルタイムで見え、これが秘伝のタレ(”secret sauce for trading”)なのであるという表現がされている。
また「JPモルガンでの市場でのすべてのトランザクションが記録」というところがとても大事なことで、こちらのセッションでもアメリカの国債とブラジルの国債の価格付け(pricing)の共通点などの話もしているが、世界中の取引のデータやマーケット情報を理解することで巨大なデータで「脳」はトレーニングらされ、ヒトの金融の決断をサポートすることができる。Athenaも15年以上前に構築されたプラットフォームだとこのセッションでも話しているが、このような「脳」がリーマンショック、Brexitその他の市場の大きなイベントなどを当社が舵取りをするのをサポートして事は間違いないと考えられる
それと比較して、日本の金融機関では銀・証・信で別のシステムを使っている、であったり海外法人とも共通のプラットフォームを使っていないというようにデータやシステムが分断化されており(以前書いた「金融組織の分散と集約(6月の金融庁からの資料より」参照)、もしリスクシステム(「脳」)が一部の取引しか見えていないのであればファイナンシャルグループ全体のリスク分析・把握をすることは構成上難しい、という事になる。色々な市場部門でデータレイクなどの構築の話は聞くが、やはりファイナンシャルグループ全体の取引をリスク管理システム(「脳」)が理解をしていて、色々な取引や決断のアプリというのがその「脳」の上に作られる仕組みというのはとても重要であるとこのセッションで再認識させられる。
分散スケジュールシステム
さてこのセッションの後半は分散スケジュールシステム(”Distributed Risk Scheduler”)のクラウド化についてIonna Nistoreanuがかなりの熱を持って語るわけだが、これもひょっとしたら何故スケジューラー?と思うかもしれない。自分としては金融機関で分散スケジュールシステムを担当していたこともあり、とても胸アツのトピックなのだがあまり一般的なトピックでないかもしれないので少々ご説明。
「リスク管理システム」のする大きな役割の一つがリスク計算であり色々なシナリオやモデルに従って膨大な数の計算・分析を行わないといけない。そのリスクの全容が市場が開く前に終わらないといけない、ただし世界中で常にどこかの市場が開いている状態なので、計算の量は増える一方で計算に使える時間というのはかなり限られている。下の図③にあるが
・マーケットデータ
・リスク・モデル
・金融商品
等の情報をもとにリスクスケジューラー(スケジュールシステム)が管理して膨大な数の計算を進めるわけである。その毎日の計算の数というのは「5BN」(5 billion)。えーーーと
5,000,000,000 !!
の計算である。24時間を秒にしたとしても24時間 x 60分 x 60秒で 86,400秒である。1秒で数万の計算が常に進んでいないといけない計算になる。
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このような恐ろしいスケールなので、このスケジュールシステムの最適化がとても大事で、どの様な科学的分析をしてなどの話がセッションではされていてとても興味深い。さらにバッチのスケジューラーがオンプレにありそれをクラウドの仕事のキューに出してCPUのサイクルをアサインされるみたいな、オンプレとクラウド間で脳が橋渡しされており、それによってもクラウドのリソースの柔軟性を活用している。
またその中で彼女たちがデザインの決断の一つが、上流から計算を「プッシュ」するモデルではなく下流から「プル」するモデルにしたこと。実はこれこそトヨタの生産方式の「ジャスト、インタイム」モデル(リンク)と同じであり、やはりリスク計算の最適化も、車の清算の工場と同じ結論というのがまた胸アツである。
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そして図④にもあるが、クラウドの活用により計算のジョブが40%早くなったと結論付けている。上でも述べた通り5,000,000,000もの膨大のリスク計算を厳しいデッドラインがある環境でしている環境で40%の時間をセーブできることは永遠の時間に等しい程のインパクトである。
もちろんこちらのセッションも動画を見るともっともっと深い内容なので興味を持った人は是非直接見て欲しい。
(金融)AWS re:Inventシリーズとその他参考文献
またJPモルガンのリスクシステムAthenaについてはこちらなどでもっと読めます。
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